探偵といえば、ドラマや小説で描かれるように、難事件をスパっと解決してくれる頼れる存在というイメージがある。だが、現実の探偵の仕事は、浮気などの素行調査がほとんどだという。仕事の幅は広いようで、最近ではホームページなどで「詐欺被害救済」をうたう業者も多い。
一方で、消費生活センターに寄せられる探偵業者に関する相談は、ここ数年、増加傾向にあり、昨年度は約2000件にのぼった。なかには、契約金を支払わせておきながら、ろくに仕事をしなかったり、調査前なのに多額の解約金を請求したりする「悪徳探偵」もいるという。
わらにもすがる思いで探偵に相談する可能性は誰にでもあるだろう。そのとき、依頼者の弱みにつけこむような悪徳探偵にだまされないために、「探偵業」についてしっかりと知っておく必要がある。そもそも、探偵業とは何だろうか。そして、依頼する際に気をつけるべき点は何か。中森俊久弁護士に聞いた。
●探偵業を行うための特別な資格や免許はない
――そもそも、探偵業とはなに?
「2007年6月に施行された『探偵業の業務の適正化に関する法律』に、探偵業の定義があります。
『他人の依頼を受けて、特定人の所在又または行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう』(同法2条1項)とされています」
法律の文章なので、なんだか分かりにくい表現だが、要は依頼人の要望を受けて、誰かの所在や行動を調査する仕事だ。
――探偵業をはじめるために資格や免許は必要なのか?
「いえ、実は、探偵業を行うための特別な資格や免許はありません」
――では、探偵業は誰でもなれるということ?
「上記の法律が施行されたことで、たとえば開業時の届出義務や説明書面・契約書面の交付義務など、一定の規制が及ぶようになりましたが、基本的にはそういうことですね」
●「悪徳探偵」との契約は、取り消すことができる可能性も
――業者のなかには、いわゆる『悪徳探偵』もいるようだが、消費者は泣き寝入りしかないのだろうか?
「探偵業者と契約を結んだ消費者が、高額な追加費用を請求されたり、調査内容が不十分であるなど、契約トラブルに発展するケースは存在します。
ですが、消費者と探偵業者との間の契約であれば、消費者利益の保護を目的とした『消費者契約法』が適用されます。
たとえば、重要事項について客観的な事実と異なる説明をうけたり(不実告知)、不確実な事項について断定的な判断を伝えられた(断定的判断の提供)場合などは、それらを理由として、契約を取り消すことができる可能性もあります」
中森弁護士はこのように説明する。そのうえで、「どのような調査を行ってもらうのか、追加費用は発生するのか否か、解約時の違約金の有無およびその金額など、トラブルに巻き込まれないように、自ら結ぶ契約の具体的な内容を事前に把握することが大切です」とアドバイスしている。
探偵業者に依頼するのは、パートナーの不倫疑惑が浮上したときなど、心に余裕がない場合が多いだろう。アドバイスにあるように、契約する際は一呼吸おいて、考えてみてもよいかもしれない。