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2013年08月30日 13時20分

「かつて弁護士はかっこよかった」 ベストセラー著者が描く「最終弁論ストーリー」

「かつて弁護士はかっこよかった」 ベストセラー著者が描く「最終弁論ストーリー」

「突然ですけれども、弁護士はお嫌いですか?」。そんな質問をいきなりふってきたのは、ベストセラー『裁判官の爆笑お言葉集』の著者として知られる法律系ライター・長嶺超輝(ながみね・まさき)さんだ。9月10日に新作の『伝説の弁護士、会心の一撃! ― 炎と涙の法廷弁論集』(中公新書ラクレ)を世に送り出す。「弁護士嫌い」の人に向けて、「弁護士のかっこよさ」を伝える本なのだという。

●「この社会には、弁護士に対する疑念や不信感がこびりついている」

「私は若い頃、弁護士を目指していましたが、司法試験の壁が高すぎて、泣く泣く諦めた身です。しかし、いろんな方から『弁護士になんか、なれなくて正解ですよ』『弁護士なんかロクなもんじゃない』といった主旨のメッセージを受け取るようになりました。著書の感想として、あるいは、知人から直接言われることもありました」

こんなメッセージを「慰めの言葉」として受け取りつつも、「おそらくそれだけではないはず」と長嶺さんは疑念を抱いていた。

「この社会には、弁護士という法律家に対する、敬遠・疑念・不信感・敵視が、うっすらとこびりついているのかもしれません。自分にとっての憧れの職業が、世間のあちこちで嫌われている事実を知るのは、ショックとまではいかなくとも、決して喜ばしいことではありません。

いままさに人生のトラブルに思い悩み、弁護士に相談しようかどうか迷っている人の中にも、『偉そうに振る舞われるんじゃないか』『法律の難しい話で煙に巻かれるんじゃないか』『報酬をぼったくられるんじゃないか』……と、弁護士資格者への期待感と不安が入り混じっている方がいらっしゃるかもしれません」

●「弁護士はいつの間にか、社会の理不尽と戦う職業ではなくなった」

たしかに世間が抱く弁護士のイメージは、案外ネガティブなのかもしれない。「でも、その一方で、世間では今、あるTVドラマが大人気を博していますよね」と長嶺さんは指摘する。『半沢直樹』(TBS系列)のことだ。

「銀行の闇を描くこのドラマには、他人の人生を踏みにじってまで自己保身を図ろうとする上司や取引先が登場します。主人公の半沢自身も、彼らの見苦しい保身のワナに引っかかってしまいます。しかし、反発して激しく吠え、保身の裏でうごめく理不尽な陰謀を打破しようと果敢に戦う姿が、多くの視聴者の胸を打ち、『かっこいい!』と支持されているようです」

ならば、弁護士にも期待が集まってもいいのではないか。弁護士こそ、社会の矛盾や理不尽に立ち向かって戦う「かっこいい」職業のはずなのに……。どうして弁護士は嫌われているのか。

「おそらく、答えはひとつ。弁護士がいつの間にか、社会の理不尽と戦う職業ではなくなった、と考えるのが最も自然です」

日本の弁護士人口はこの10年間ほどで、ほぼ倍増し、3万人を超えた。「急増」と言ってもいい。この変化が、弁護士から余裕を奪ってしまっているのではないかと、長嶺さんは指摘する。

「特に若手弁護士の中には、法科大学院の奨学金や司法修習の貸与制給与などで、最初から数百万円の負債を抱えている人もいます。しかも、法律事務所の数に対して弁護士の供給が多すぎる事情もあって、就職先が見つからずにスタートラインからつまづいてしまうケースもあるのです。

若手だけでなく、職歴10年以上の中堅弁護士までも巻き込み、生き残りの過当競争が起こっているとも伝えられています。いまは、弁護士にとって非常に厳しい時代なのです」

●熱気とユニークさで法廷を激しく震わせた「伝説の弁護士」を描く

自分の身を守るのに精一杯の弁護士たち。正義のために誰かを助ける余裕も失いつつあるのだろうか。「保身に汲々とする『半沢直樹』の上司ほどではありませんが、志を高く持ちたくても、持ちづらくなっているのでしょう」と、多くの弁護士を取材してきた長嶺さんは語る。

「弁護士がかっこいい時代なんて、今となっては遠い過去のものといえるのかもしれません」。そう話す長嶺さんが、世の人々にもう一度、「弁護士のかっこよさ」を思い出してもらうために執筆したのが、冒頭に紹介した新著『伝説の弁護士、会心の一撃! ― 炎と涙の法廷弁論集』だ。

「弁護士がかっこよかった時代を彩る、数々の『伝説の弁護士』たちが、熱気とユニークさで法廷を激しく震わせた最終弁論ストーリー、それを全国の『弁護士嫌い』な人々へ届けるための書です」

そう意気込む長嶺さんだが、この書には、もう一つの狙いがあるのだという。

「伝説の弁護士たちの言霊を通じ、現在の弁護士業界も、陰ながら応援させていただきたいと思っています。司法試験に挫折した人間からの応援なんか、大半の弁護士の心へは届かないことは理解しています。年間2000人近くが新たにデビューするうち、せめて1%の若手弁護士に届けば十分です」

【長嶺 超輝 (ながみね・まさき) プロフィール】

1975年長崎県出身。法や裁判の世界をわかりやすく紹介するライターとして活動。「笑える憲法本」のコンセプトで『超訳日本国憲法 もしあの条文が無かったら?』(KKベストセラーズ)を9月20日に刊行予定。

(弁護士ドットコムニュース)

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