「お前には任せられない」「失格だ」。首都圏の大学の運動部に所属するMさんは、あるOBの「後輩いびり」に悩んでいる。練習に訪れるOBは、Mさんの細かいミスを見つけて、厳しい言葉をあびせかけてくるそうだ。
周りの部員は「職場のうっぷんを晴らしているとしか思えない」と感じている。Mさんは、ことあるごとに文句をいわれ、今では「精神的にまいっている」そうだ。こんな場合、OBに対して慰謝料を求めることはできるだろうか。大久保誠弁護士に聞いた。
●実際に裁判を起こすのは、ハードルが高いが・・・
「今回のケースでは、OBからの『いびり』で『精神的にまいっている』とあります。
もし、『いびり』によって、精神科などの医師の治療を受けざるをえなくなる程度に『まいっている』のであれば、慰謝料を求めることは可能です。
しかし、そうでないのであれば、慰謝料請求が認められるだけの『精神的苦痛』に至っていないと、裁判所に判断される可能性が高いでしょう」
慰謝料を認めてもらうには、医者の診断書があればよいのだろうか。
「慰謝料請求をするためには、OBによる『いびり』の具体的内容も証明できなくてはなりません。
そのためには、他の選手やOBたちの協力が必要となりますが、Mさんはその協力を得られるのでしょうか。なかなか難しいのではないでしょうか。実際に裁判を起こすとなると、かなりハードルが高いと思います」
Mさんは泣き寝入りするしかないということだろうか。
「まずは、監督や部長、主将に相談するべきです。OBの言動に行き過ぎがあるのならば、彼らからOBに直接注意してもらうのがよいでしょう」
では、OBが部活に参加するのをやめさせることは可能だろうか。
「部活への参加をやめさせる法的手段も、結局のところ、申し立てることができるのは大学であって、Mさんではないと思います。やはり、監督や部長、主将に対応してもらうことが先決だと思います」
大久保弁護士はこのようにアドバイスしていた。