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フジテレビ解説委員の選挙座談会に不正確な情報多数? 確認してみた結果…
フジテレビのニュースメディア「ホウドウキョク」より

フジテレビ解説委員の選挙座談会に不正確な情報多数? 確認してみた結果…

10月22日の衆院選投開票を目前に控え、フジテレビが運営するニュースメディア「ホウドウキョク」のサイトに連日連載されている記事「選挙のなぜ?どうして?を解説委員が解説」。フジテレビの解説委員が座談会形式で、ざっくばらんに選挙について語り合っている。

しかし、Facebookでは、この連載に「不正確な情報が含まれている」と一部専門家からの指摘が相次ぎ、話題になっている。弁護士ドットコムニュース編集部では、選挙制度にくわしい弁護士の協力を得て、10月17日に掲載された記事「なんで選挙ってお金がかかるの? 衆院選投票日まであと5日 」(https://www.houdoukyoku.jp/posts/19804)で語られた内容について、チェックしてみた。

●ウグイス嬢やポスター貼りへの報酬は「買収」?

1「お金を払って良いのは労働に対して、選挙活動に対して払うと買収になる」

→例外規定がある

そもそも公職選挙法上「選挙活動」という言葉は出てこない。「選挙運動」については、選挙運動員に対する報酬は原則支払不可(公選法221条)であり、例外は車上運動員(ウグイス嬢やカラスボーイ)。

なお、「選挙活動」という部分は、掲載当初「政治活動」となっており、明らかな誤りだったが、19日までに告知なく訂正された。

2「供託金はでも当選すれば返ってくるから、当選すれば痛くは無いですよね」

→説明が十分とは言えない

供託金が返ってくる基準は、衆議院小選挙区選出の場合、有効投票の総数の十分の一(公選法93条)なので、落選しても返ってくる場合がある。

3(法定選挙費用(超えることができない限度額)についての話題から)「そしてこれで絶対に収まらないって言われてるわけですよね」

→選挙運動期間中(公示日から投票日の前日まで)だけでなく、それ以外の期間の「政治活動」としての費用まで含めているなら、間違いとまではいえない。

4「そうなんですよ。事務所を夜のうちに移動して、テントを作って、ビラを貼って、移動事務所を作って、そこに候補者が翌朝現れて、そういう移動作業を日夜する学生バイトっていうのをたくさん雇うんですよ」という言葉を受けて、「話を補足しておくと、選挙のバイトっていうのは基本的に駄目なんです」

→移動作業を行う学生バイトを雇うのは、労務者として合法。

5「あるタレントさんが選挙に出て負けたんだけど、1億円の借金を作ったという話が有りますよね。本人が言ってから本当なんでしょうけど。彼は1億円使ったんですよ、一回の選挙で」

→政治活動の費用まで含めると1億円かかることもあるが、選挙運動としては認められない金額。ちなみに法定選挙費用は、衆院選の場合、選挙区ごとに異なり、2500万円前後(総務省の速報資料より)。

6「ポスターを貼るのも選挙活動なんですが、運転手は選挙活動ではありません。労働者として、労働に対する報酬を支払うことは許されているんですが、選挙活動に対してお金を払ったら買収になってしまうんです」

→誤り

ポスター貼りは「選挙運動のために使用する労務者」(公選法197条の2)に該当し、報酬の支給が可能。

7「ある女優が学生時代にウグイス嬢の“バイト”をやったんですがその候補者は落選してしまった上、その候補者が選挙違反で捕まったんです。その時その女優は『私はまだバイト代もらってません!』って言ってましたけど“バイト代”とは言ったらいけないですよね…(笑)」

→誤り

ウグイス嬢は「専ら第百四十一条第一項の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶の上における選挙運動のために使用する者」(公選法197条の2)に該当し、報酬の支給が可能。

このほか、10月19日に掲載された「なんで選挙って20時に当確が出るの? 衆院選投票日まであと3日 」(https://www.houdoukyoku.jp/posts/19807)では、以下の発言を問題視する専門家もいた。

「だけどね、確実じゃないのになぜ8時に出す必要があるんだっていうのにも理由があるんです。それは、例えあやふやでも一秒でも早く知らせないといけない場合もあるからなんです。

要は、例えば、カルト宗教団体が政権を取った場合、国外脱出したい人とかもいるわけじゃないですか。あるいはエキセントリックな党が政権をとるとか。それが嫌だったら、銀行預金おろしに行ったり、船をチャーターするとかしなくてはいけない。

だから国民はたとえ不確かでも間違いがあったとしても一秒でも早く知る権利がある。だから我々は不確かでも出す義務があるんです」

確かに「知る権利」は重要だが、国民が「あやふやな情報」「不確かな情報」を欲しているかは、議論の分かれるところだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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