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「民泊」禁止マンションで営業、訴訟に発展するケースも…新法で問題は解決できる?
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「民泊」禁止マンションで営業、訴訟に発展するケースも…新法で問題は解決できる?

8月はじめ、大阪・ミナミの分譲マンションで、管理規約に反して「民泊」を営んでいたとして、マンションの管理組合が所有者らに対し、営業差し止めと損害賠償を求める訴えを起こしたと報じられている。大阪市では市条例により認定を受ければ民泊を営業できるが、マンションの管理規約に違反しない必要がある。このマンションでは民泊営業を禁止していた。

民泊については、営業基準を定めた「住宅宿泊事業法」(民泊新法)が6月に成立し、自治体に届け出た家主は、年間180日を上限に住宅地でも民泊を始めることができるようになる。

今後、民泊はさらに増えていくと予想されるが、近隣住民との軋轢、上限180日という期間の妥当性など、民泊問題に詳しい弁護士はどのような法的課題があると考えるだろうか。民泊問題に詳しい中島宏樹弁護士に聞いた。

●民泊新法、評価できるポイントは?

「外国人旅行者の増加に伴い、宿泊施設が不足している現状において、民泊新法は1つの解決策を提供するものといえます」

中島弁護士はこのように評価する。どのような点が評価できるのだろうか。

「民泊トラブルの原因の1つとして、現場に責任者がいないため、いざ問題が発生しても、対処できる者がいない点があげられました。

民泊新法では、現場に責任者を置き、 騒音防止のための説明、苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付けなどの措置をとることが義務付けられることとなりました。苦情の対応窓口ができることで近隣住民との軋轢が緩和され、宿泊者名簿の整備がされることで犯罪発生の抑止につながると思われます」

●新法に課題はないのか?

新法に課題はないのだろうか。

「日数については、上限180日の計算方法(実泊日か営業日か)、実際のカウントの仕方などについては、詳細は決まっておらず、ガイドラインの制定が待たれるところです。また、民泊新法では、都道府県は条例により、日数の上限を削減することができるとされていることから、各都道府県の今後の動向には注意が必要となります。

他方で、年間180日を超えて営業を行う場合は、『旅館業』に該当するため、従前どおり、旅館業法の対象となります。

また、マンションの管理規約において民泊営業が禁止されている場合などには対象外となることから、今後、管理規約で民泊営業が禁止されるマンションが増えてくると思われます。

外国人旅行者が増加する中、宿泊施設の不足が解消されない場合には、無許可で年間180日以上の民泊営業が行われたり、管理規約で民泊営業が禁止されている物件で民泊営業が行われたりするなど違法な民泊営業が行われる恐れも否定できません。

違法民泊の問題の解決は、民泊新法の運用にかかっていると言えると思います」

中島弁護士は、次のように呼びかけた。

「日本を訪れた外国人旅行者には、日本にやってきてよかった、と感じてもらいたいものです。民泊については、新法の成立で十分と捉えることなく、今後もガイドライン・条例などの整備も含め、宿泊者、事業者、近隣住民が不要なストレスを感じることのない仕組みを構築してゆくことが求められると思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中島 宏樹
中島 宏樹(なかじま ひろき)弁護士 中島宏樹法律事務所
京都弁護士会所属。弁護士法人大江橋法律事務所、法テラス広島法律事務所、弁護士法人京阪藤和法律事務所京都事務所を経て、平成30年7月、中島宏樹法律事務所を開設。民暴・非弁取締委員会(委員長)、弁護士法23条照会審査室、日本弁護士連合会「貧困問題対策本部」委員。

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