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同性愛を隠して暮らす「レズビアン女性」が会見「今の私に結婚という選択肢はない」
「クローゼット」の女性ケイさん(仮名)

同性愛を隠して暮らす「レズビアン女性」が会見「今の私に結婚という選択肢はない」

同性婚の法制化を求めて、同性愛者ら455人が7月7日、日弁連に人権救済を申し立てた。東京・霞が関の司法記者クラブで開かれた記者会見には、自分が同性愛者だということを隠して暮らす、いわゆる「クローゼット」の女性ケイさん(仮名)が参加していた。

ケイさんは40代の会社員で、同性パートナーと15年間付き合い、うち8年間は一緒に暮らしているが、お互いの親を含めた周囲の人々には、そのことを全く告げていないという。

さらには、同性愛者であることを疑われないように、レズビアン女性とゲイ男性で形の上だけの「結婚」をしている人がたくさんいると、ケイさんは指摘する。同性愛者たちには「そこまでの恐怖感があるのです」と述べた。

そんなケイさんが「顔出しNG」ながらも記者会見に参加した理由は「クローゼットの人がいることを知ってほしかったから」だという。

「ふだん平凡なOL生活をしているのに、今日はここに来ました。マジョリティーに合わせて自分を偽らざるを得ない人たちが沢山いて、その人たちがどうしてクローゼットなのかを考えてもらうきっかけになればいいと思ったからです」

また、ケイさんは記者会見で、自分自身がどんな思いで日々生活をしているのか、なぜ申立人に加わったかを説明する資料を配った。

以下、その全文を転載して、紹介する。

●「結婚はできないの・・・」と答えると「もしかして・・・不倫?」

セクシャリティを隠している40代クローゼットのレズビアンです。

15年という月日を共に過ごし、同居して8年経つ同性のパートナーがいます。

家族であって、もはや恋人というには違和感があります。

平凡な学生生活から”フツウ”の会社員になったいわゆる市井の人です。活動家でもなんでもありません。そんな平凡な社会生活の中では”フツウ”に恋バナが交わされます。なるべくその話題にならないよう避けていますが、それでも聞かれた時に困ります。相手がいないと嘘をつくのは相手にも失礼だし心苦しい。しかたなく20代から付き合っている人がいると話をします。

すると、ほぼ100パーセント同じリアクションが返ってきます。

「え!どうして結婚しないの」「その人大丈夫?」「彼は責任感が無い」「親は何にもいわないの?」色々突っ込まれます。

「結婚はできないの・・・」と答えると「もしかして・・・不倫?」と続きます。

「いない」と言うと良い人を紹介するという展開になってしまいます。

●「結婚のプレッシャーを多く受けてきた」

私が普段生活している社会では”長く付き合っていたら結婚するのが当たり前”のようです。相手が同性であるということ以外は多くの異性愛カップルとなんら変わらない生活を送っているのですが、今の私にはどれだけ長く付き合い同棲してようと「結婚」という選択肢はありません。

最近になり個人の生き方が尊重される時代になりましたが、それでも今なおレズビアンとゲイの間で「友情結婚」をしようとしている、実際している仲間が少なからずいます。

20代から30代にかけて私たちも「結婚」のプレッシャーを多く受けてきました。自分たちの関係を守るために世間でいうところの「伝統的な家族観」に当てはまる形で子供を持とうと試みたほどです。

パートナーの母親は本当に辛い闘病の末、亡くなりました。闘病中は家族以外入室禁止でしたので私は付き添うことも看病することもできませんでしたが、彼女の義兄は家族の一員としてお姉さんを支えていました。私は親友という立場で葬儀の手伝いをすることしか出来なかったことを悔やんでいます。

私の親が意識不明で集中治療室に緊急搬送された時も似た状況になりました。物理的に駆けつけることができなかった私に代わって搬送先に行ってくれたパートナーから入った連絡は「何も教えてくれない。家族が来たら話すからって」ということでした。私が到着するまでの3時間もの間、容態が全く分からず本当に不安で困りました。

今後パートナーか私のどちらかが同じような状況が起こったときにどうなるのか不安を覚えます。

●「不便や不自由に慣れ、麻痺していたことに気づいた」

人生の折り返しの歳になり、LGBTの仲間の間でも親の介護や自身の老後の話がでるようになりました。「伝統的な家族観」に囲まれ、マイノリティであるが故の窮屈さを抱えながら生きてきた世代だと感じます。せめてこれから先残りの人生は、これまで縛られてきた価値観から開放され、今まで築いてきたものを無駄にすることなく自分らしく過ごせたらと願っています。

私が顔や名前を隠して今日この場に来ることを決断したのは、クローゼットの存在を可視化したかったからです。見えないイコール居ないのではなく、マジョリティーに合わせ自分を偽らざるを得ない状況の人が沢山いて、その人たちがどうしてクローゼットなのか考えて貰うきっかけになればと思います。

同性婚なんて遠い世界のことだと思っていましたが、色々隠していることも、様々な不便や不自由にも慣れて麻痺していたことに今回気付き、申立人になりました。

人生の半分以上、大切な人のことを親にも友達にも言えず生きてきましたが、これから恋をする子どもたちには恋愛対象が同性であっても隠すことなく、異性のカップルと代わらず”フツウ”に、祝福される人生を生きて貰いたいと心から願っています。

(弁護士ドットコムニュース)

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