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1500人か1000人か 「司法試験の合格者数」めぐり弁護士たちが白熱議論
東京・霞が関の弁護士会館には多くの弁護士が集まった。

1500人か1000人か 「司法試験の合格者数」めぐり弁護士たちが白熱議論

司法試験の合格者数や予備試験のあり方などについて、日弁連が求める基本方針を決める臨時総会が3月11日、東京・霞が関の弁護士会館で行われた。

会場には800人以上の弁護士が集まり、代理も含め、1万3354人の弁護士が投票した(単位弁護士会の会としての票が52票あり、投票は計1万3406票)。司法試験の合格者を1500人程度にすることなどを求める日弁連執行部案と、1000人まで減らすことなどを求める臨時総会請求者案について議決が行われた。執行部の案が賛成多数で可決され、請求者案は否決された。

●当初は「3000人」が目標とされていた

日弁連によると、この臨時総会は愛知県の有志の弁護士が中心となって招集を求めた。日弁連の規則では、300人以上の弁護士から求めがある場合、臨時総会を開くことが規則で定められている。

議論の対象は(1)司法試験の合格者数、(2)法科大学院制度・予備試験制度のあり方、(3)司法修習生に対する支援のあり方の3点についてで、執行部と請求者が異なる方針を掲げていた。総会で主に議論されたのは、司法試験の合格者数についてだった。

政府は2002年の閣議決定で、当時1000人程度だった司法試験の合格者数を「3000人程度」を目指すことを決めた。しかし、合格者数は、2008年の2209人をピークに緩やかに減少し、2015年は1850人だった。

日弁連執行部の案は「司法試験合格者数を早期に年間1500人とする」というもの。請求者案は、「年間合格者数を直ちに1500人、可及的速やかに1000人以下にする」というものだった。

●「質の低下を問題にするなら、更新制にすべき」

請求者案に賛同するという岐阜県から参加した男性弁護士は「岐阜では、イノシシに罠をしかけることを学ぶ講習を受けた若手弁護士がいた。県から報奨金がもらえるからだ。夢を持って法曹界に入ったのに、仕事がなくてそんな苦しい状況に置かれている弁護士がいる。明らかに供給過剰だ」と訴えた。

一方で、法科大学院を卒業した若手弁護士からは、「若手の就職難は改善している。請求者案は自分の所得の低下のことしか考えていない」「弁護士を1000人にしろと言っている弁護士たちは、自分も受験生だったこと忘れたのか。既得権を守りたいだけだ」といった意見が上がった。

総会では途中、第三の案として、執行部案を修正した「年間1500名以上輩出されるようにし、かつ、現在の年間1800名の水準を十分考慮し、急激な減少をさせない」という案が提出された。この案は最終的には否決されたが、法科大学院出身の若手弁護士を中心に、賛同する声が上がっていた。

社会人経験をした後、法科大学院に入って弁護士になったという男性弁護士は、合格者を減らすことの根拠として、執行部案と請求者案が「法曹の質の低下」という点をあげている点について、次のように疑問を呈した。

「合格者を減らさなければ法曹の質が確保できないというが、(旧司法試験のような)一発試験で、合格者の質を確保できるのか。本当に質を確保すべきというのであれば、弁護士も一定期間で資格の適格を改めて審査する『更新制』にすべきではないか。合格者を減らせと言っている弁護士たちに、その覚悟はあるのか」

(弁護士ドットコムニュース)

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