日本弁護士連合会の会長選挙が史上稀に見るほどの混戦になっている。
日本国内の弁護士全て(2012年4月1日現在で32,134名)を会員とした弁護士業界の自治組織である日本弁護士連合会の会長選挙(任期2年)が今年2月10日に行なわれ、4名の立候補者のうち現会長の宇都宮健児氏と元同会副会長の山岸憲司氏の2名が得票を伸ばしたが、両名とも当選条件には達しなかった。そのため3月14日に両名での決選投票が行なわれたが、そこでも票が割れてどちらも当選条件に達することなく、ついに史上初の立候補手続きからのやり直し選挙が行なわれることになった。
実は過去の会長選挙においては同会の主流派から擁立された候補が順当に選出されることが多く、波乱になることは少ないと言われてきたが、前回も主流派候補の元同会副会長の山本剛嗣氏と宇都宮氏が僅差の勝負を繰り広げ、決選投票にもつれこんだ末、宇都宮氏が初当選を決めるという波乱の結果であった。
なぜ、近年の会長選挙は混戦になるのか。その背景には、司法制度改革による弁護士の増員やそれに伴う競争の激化など、弁護士業界を取り巻く環境の大きな変化がある。特に弁護士の増員については弁護士の中で反対意見も根強く、各候補者の立場や掲げる公約がより吟味され、票が割れるようになった。
ただし、日本弁護士連合会といえども、司法試験合格者減の提言まではできてもその最終的な決定権はなく、前回の選挙で司法試験合格者数を減らすことを掲げた宇都宮氏が会長になって以降も、合格者数に関する政府の方針に今のところ大きな変化は起きていない。
今回の選挙においても、決選投票となった宇都宮氏と山岸氏両名とも減員ペースに差はあるものの司法試験合格者数を減らすことを掲げていた。またそれ以外の政策としては、宇都宮氏は原子力政策の転換運動や刑事司法の改革、山岸氏は弁護士業務の拡大やロースクール制度の改革を訴えたが、大勢は決しないまま今回のやりなおし選挙になった。
歴史的な混戦のなか、注目のやり直し選挙は3月28日に公示され、4月27日に投開票が行なわれる予定になっている。