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「11万件のサクラ投稿で妨害された」楽天が業者を提訴ーー虚偽口コミの法的問題は?
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「11万件のサクラ投稿で妨害された」楽天が業者を提訴ーー虚偽口コミの法的問題は?

ネット通販で、ほかの消費者の口コミを参考にする人は多いだろう。だが、あなたが参考にした口コミが、実は「サクラ」によるものだったら・・・。大手通販サイト「楽天市場」を運営する楽天は、商品を高評価する「サクラ投稿」があったとして、大阪市の業者に約1億9800万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。

報道によると、121の出店者が、商品を高く評価する投稿をこの業者に依頼して、150件ごとに8万円を支払う契約をそれぞれ結んでいたという。楽天は「サクラ行為で公正なサービスが妨害された」と主張している。サクラ投稿は判明した分で、11万件以上あるという。一方、業者は3月20日の第1回口頭弁論で、楽天の請求の棄却を求めた。

数年前から、消費者に宣伝と気づかれないように宣伝する「ステルスマーケティング」(ステマ)が問題視されている。一般論として、高評価する「サクラ投稿」を請け負って、実際に投稿した場合、どんな法的問題があるのだろうか。上田孝治弁護士に聞いた。

●サクラ投稿「消費者こそが直接の被害者」

「消費者庁は景品表示法上、問題となる事例として、下記のような場合を考えています。

(1)出店者が、口コミ投稿の代行業者に依頼して、

(2)自分の店のサービスや商品の口コミをたくさん書き込ませて、サイト上の評価を変動させ、

(3)通販サイトでの評価はもともと高くなかったのに、多数の一般消費者から好意的な評価を受けているようにみせかける」

まさに、今回のような事例ではないか。

「今回のサクラ投稿も、景品表示法の不当表示(優良誤認または有利誤認)にあたるでしょうね。出店者は『措置命令』の対象となる可能性があります。出店者に対して、誤認表示の排除や再発防止策の実施、同様の違反行為を行わないことなどを命令するものとなるでしょう」

出店者の責任ではなく、今回問題になっているようなサクラ投稿業者の責任はどうなるのだろうか。

「景品表示法に基づく不当表示の責任を問われるのは、『自己の供給する商品・役務の取引について』不当表示を行った者です。今回だと、出店者が該当します。ですから、サクラ投稿を請け負っていた業者の責任は問われません。しかし、これはあくまで『景品表示法』の話に限定したものです。業者に責任がないわけではありません」

どういうことだろう。

「今回のようなサクラ投稿は、楽天からすれば、『楽天市場』のネット通販全体への信頼を揺るがす行為であり、看過できないということでしょう。しかし、サクラ投稿による被害という意味では、サクラ投稿を信じ、この商品が他よりも優れていると思って商品を購入してしまった消費者こそが、直接の被害者と言えます。

したがって、サクラ投稿を信じて実際に商品を購入したところ、投稿内容と全く異なる商品であったというような場合であれば、購入者は、出店者はもちろん、サクラ投稿の請負業者に対しても、不法行為を理由とする損害賠償請求ができる可能性があります」

上田弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

上田 孝治
上田 孝治(うえだ こうじ)弁護士 神戸さきがけ法律事務所
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題、不動産・マンション管理法務に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。

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