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性的虐待を受けた子どもの話をどのように聞くべきか? 専門家が語る4つのポイント
小児科医の山田不二子さんは、子どもの性虐待の現状と課題を語った。

性的虐待を受けた子どもの話をどのように聞くべきか? 専門家が語る4つのポイント

「性的虐待を受けた子どもは、被害を周りの大人に訴えられずにいる。聞き方を間違えると、さらに被害を招くことになる」。子どもの性的搾取をなくすための方策を考えるセミナーが12月6日、東京都内で開かれた。

小児科医の山田不二子さんは、性虐待をするのは「顔見知り」の場合が多いとして、子どもが受ける性虐待の特徴を次のように語った。

「父親が娘に、というケースが一番多いですが、父親が息子に行うこともあれば、母親が息子や娘に行うこともあります。きょうだいや学校の先生の場合もあります。

そうした人物が性虐待をする理由は、性欲もないとは言いませんが、より強く影響しているのは征服欲・支配欲です」

そうした特徴があるため、多くの子どもたちが「どうせ何をしても逃げられないから、あきらめよう」と自分を順応させてしまうか、その逆に「あんな被害を受けたことを認めてしまえば、もう生きていけない」と、ひたすら否認し続けるのだという。

●「何で言わなかったの?」母の一言で告白を「撤回」

子どもたちが勇気を出して、信頼できる大人に被害を告白しても、周りがきちんと反応してくれるとは限らない。

「たとえば子どもが、お父さんから性虐待を受けたことをお母さんに話すとします。するとお母さんは、『もっと早く教えてくれれば良かったのに!何で言わなかったの?』と言ってしまうんですね。

子どもは、言いたかったけど言えなかったんです。背景には、口止めをされていたり、自分がしているのは恥ずかしいことだと思っていたりと、さまざまな事情があります。

その葛藤を乗り越えて、最後の頼みとして話したお母さんにそう言われれば、子どもは『拒絶された』と思っても仕方ない。そういう経験をした子はどうするか? 『ママごめん、いまのは全部ウソ』と、告白したことを撤回します。そういう子はすごく多いです」

山田さんは、子どもの言葉がすべてだと考えるのが正解ではないと話す。

「子どもが語ったことが100%だと思わないでください。子どもの言葉をそのまま信じると、子どもが語っていない部分で、もっと深刻な被害があることを見落とす危険があります。

そして、子どもの中には『語らない』という選択をしている子や、『語れない』という状況に置かれている子もいると知っておいてください」

●虐待が疑われる子どもへの聞き取り法

山田さんは、「虐待が疑われる子どもから話を聞くときにこれだけは理解しておくべき」項目として、4つのポイントをあげた。

「まず徹底してほしいのは、『誰が何をしたか』以上のことを、根掘り葉掘り聞かないことです。こちらから話すよう促してもいけません。ある程度子どもが語ったら、『この先は専門家の人が話を聞くからね』と言って、それ以上聞いてはいけません。

2つ目は、子どもが言ったことを疑ってはいけないということです。『まさか、そんなことがあるはずない』と不思議そうな顔をするだけでも、子どもは『この人は信用してくれなかった』とキャッチして、もう話してくれなくなることが多いです。

3つ目は、他の大人に再度同じ話をさせないということです。自分だけでは受け止めきれないからといって、他の大人に話をさせる人もいますが、子どもにとっては同じ話を何回もしなければならないので、とても苦痛です。新たに話をした相手が不適切な対応をした場合、撤回したり、もう話さないことを選んでしまうリスクもあります。

そして4つ目は、虐待の加害者に対して、周りの人間が虐待を疑っていると言ってはいけないということです。たとえば、身体的虐待の場合、加害者に対して『●●君があなたに殴られたって言ってるけど殴りました?』と聞く人は意外と多い。

このように聞かれた加害者は、虐待をやめるどころか、バレないようにもっとやるんです。通告して調査が進んで、子どもの安全確保ができる段階になるまで、虐待が疑われていることを加害者に知らせてはいけません」

●子どもに何度も同じ話をさせるな

虐待を受けた子どもから、どうやって必要な情報を聴き取るのか。欧米では、児童相談所や警察、検察という専門機関が、子どもから必要な情報を一度で聞き取る「司法面接」というやり方が一般的だという。

「専門の面接官が1回のやり取りで、子どもから必要な情報を聴き取るため、子どもは辛い体験を複数の人間に何度も話す必要がありません。

司法面接は欧米ではすでに制度化されています。しかし、日本では一部地域で実践が開始されているものの、児童相談所が独自に行っているために、面接の1回制が担保されていません。

日本でも、この司法面接を早急に制度化することが求められます」

山田さんはこのように語っていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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