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「クリスマスイブはカップル入店お断り」 飲食店の「スタッフへの配慮」は許される?
この張り紙はツイッターで話題になり、1万7000人以上にリツイートされた

「クリスマスイブはカップル入店お断り」 飲食店の「スタッフへの配慮」は許される?

クリスマスの鐘の音が近づき、イブをどう過ごすか、落ち着かない人もいるだろう。そんななか、東京のスパゲッティ店に張り出されたという「クリスマス・イブは、カップル入店お断り」という張り紙が話題になっている。

ネットで注目を集めているのは、「当店スタッフへの精神的ダメージが強いため12月24日(水)はカップルの入店をお断りさせて頂きます」と書かれた張り紙の写真。メッセージの横には、手をつなぐカップルの絵が描かれているが、その上には大きなバツが・・・。この写真は12月5日に投稿されたが、1万7000人以上にリツイートされ、大きな反響を呼んでいる。

この張り紙に対しては、「店長ナイス!!!俺は支持する!!」など好意的な意見もある一方で、「差別じゃないのか?」「スタッフの精神面を優先するな笑」と、カップルを入店禁止にすることに否定的な意見も見られた。

たしかに、クリスマスイブを一人で過ごす人にとって、カップルが仲睦まじく食事する姿を見るのは辛いかもしれない。しかし、店が、カップルに限って入店を拒むのはどうなのか。一般論として、飲食店が店側の基準で客を「選別」することは、法的に問題ないのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。

●民法にある「契約自由の原則」

「この張り紙については、ネット上では賛否両論の意見がありましたね。法律的に考えればどうなるのでしょうか。結論を先に言ってしまいますが、適法です」

西口弁護士はこう説明する。カップルにとっては不公平な気もするが、どういう理屈で、適法といえるのだろうか。

「まず、店を管理しているのは、店長です。法律上、店長は、管理権に基づいて『誰を店に入れるか、入れないか』という選択権を持っています。

また、店では『飲食物の提供』といったサービスを売り物にしています。要するに、飲食店で飲食物を注文し、店側が飲食物を提供する行為は、『契約』ということになるのです」

契約だから、店長は自分の好きにしていいということになるのだろうか。

「そういうことになりますね。民法の世界では『契約自由の原則』という考え方があります。これは、誰もが自分の自由な考えに基づいて、自由に契約を結ぶことができるというものです。

この原則があるので、店が客の注文を拒否したとしても、法律上、問題はないことになるのです」

店は「客を選べる」といってもよいのだろうか。

「はい。ただし、人種による入店拒否は別です。人種差別として違法になる可能性が高いです。また、法律上の問題はないとしても、『あの店は入店を拒否した』というように評判が低下してしまう危険性はありますので、入店を拒否するかどうか、店の経営を考えて慎重に判断すべきことは言うまでもありません」

たしかに、経営を考えるならば、クリスマスはかきいれどきだ。カップルだったら、財布のひもも緩んで高い料理をたくさん注文してくれそうなのに、この店長は思い切ったことをしたといえるかもしれない。

「そうですね。しかし、せっかくのクリスマス・イブです。固いことを言わず、ジョークとして楽しんでもいいのではないでしょうか。みなさんはどんな風に感じますか」

西口弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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