弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 民事・その他
  3. 高校を卒業したら自分の「制服」を売りたい・・・オークションに出品したら法律違反?
高校を卒業したら自分の「制服」を売りたい・・・オークションに出品したら法律違反?
高校を卒業すれば、制服を手元に置いておく必要はない

高校を卒業したら自分の「制服」を売りたい・・・オークションに出品したら法律違反?

3月は卒業シーズン。卒業式を終えてしまえば、制服に袖を通す機会はほとんどない。恋や勉強の思い出がつまった制服を、卒業後も大切にとっておきたいという人もいるだろうが、なかには、「もう着ないんだから売ってしまおう」という人もいるようだ。

ネット上のQ&Aサイトには、「高校時代の制服を高く売れるサイトを教えてほしい」「制服はオークションで売れるのか」などの質問がいくつも寄せられている。売る側には、高値で買い取ってもらえるのではないかという期待があるようだ。

しかし、制服の販売というと、いわゆる「ブルセラショップ」が思い浮かんで、何だかいかがわしい感じもする。では、着なくなった制服を店舗やオークションを介して売ることは法律上、何か問題があるのだろうか。藤田晶子弁護士に聞いた。

●公安委員会の許可を得た「古物商」か?

まず、古着を扱う店やネットショップで売る場合を考えてみよう。

「高校時代の自分の制服を売ってお金に換えようという場合、使用済み制服の買取りを行っている業者の実店舗やネットショップを利用することが多いと考えられます。

高校時代に使用された制服は、古物営業法という法律の『古物』に当たります。そして、古物営業には、業者の営業所が所在する都道府県公安委員会の許可が必要です。したがって、そのような許可を得た『古物商』が取引の相手方となります」

と藤田弁護士は説明する。リサイクルショップや古着屋を営業するために必要な許可を得た業者である必要があるのだ。そして、古物商の買い取りにも、決められたルールがあるという。

「古物商が制服を買い取る際、買取価格が1万円以上になる場合は、売り主の本人確認のため、身分証明書の提示や氏名・住所・年齢・職業を記載した文書を交付してもらうことが義務づけられています。これに反する買取りは、古物営業法違反となります。

つまり、制服を売る側は、1万円以上の金額の場合、取引の際に身分証明書その他の個人情報を業者に開示しなければならないわけです」

盗品の売買を防ぐ趣旨で買い手に要求される手続きだが、売る側も当然、身分証明書を用意していく必要がある。

●ブルセラショップは「青少年保護条例」で規制されている

古物営業法の規制のほかに、各都道府県で条例による規制も設けられているという。

「1990年代に、いわゆる『ブルセラショップ』対策として、各都道府県が青少年保護条例を制定しています。

たとえば、『東京都青少年の健全な育成に関する条例』によると、青少年(18歳未満の者)が使用済み制服を売ろうとした場合、『古物商』は青少年が保護者の同行もしくは同意を得ていない限り、青少年から古物を買い受けてはならないこととなっています。これに違反すると業者は30万円以下の罰金に処せられます」

これら古物営業法や青少年保護条例による法規制は、主に古物を取り扱う業者側を対象にした制限ではあるが、自分でネットで売ろうと思った場合にも無縁ではない。

「制服を売ろうとする未成年者の中には、友達の使用済み制服などをたくさん集めてきて、インターネットを介して『反復継続』して販売するという例もあるようです。

そうなると、たとえ個人によるネット販売であっても、古物営業にあたることになりますが、営業に関し成年者と同一の行為能力を有していない未成年者は古物営業の許可を得られないのです」

これに対して、一回きりでネットやフリーマーケットで売る場合には、「古物商」の免許は必要はない。だが、ネットオークションなどの規約に触れないかが問題となってくる。

「個人が制服をネットオークションに出品して売りたいという場合でも、古物営業法や青少年保護条例といった公的な法規制や過去のブルセラ対策の影響からか、ヤフーオークションを始めとする大手のオークションサイトでは、使用済みの制服は『禁止出品物』とされているようです」

オークションサイトでは、出品できないことが多そうだ。では、フリーマーケットはどうだろう?

「使用済み制服というと、マニア等の需用者層のイメージからか、どうしてもアダルト系の雰囲気がつきまといます。しかし、青少年保護条例が売買を禁止している『着用済み下着等』 とは異なり、それ自体は、必ずしもわいせつ物や、青少年の健全な育成を阻む物品とはいえません。したがって、フリーマーケットで自分の制服を販売するだけなら、法規制の対象となることはないでしょう。

ただし、一部の私立高校などでは、学校のイメージ低下や現役生徒を犯罪から守る等の理由・目的で、校則で制服の処分を制限しているところもあるようです。法規制の問題とは別に、学校との間でトラブルにならないかも考える必要があるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

藤田 晶子
藤田 晶子(ふじた あきこ)弁護士 あさひ法律事務所
著作権・特許・商標・不正競争等の知的財産関係訴訟、インターネット関連法分野の紛争処理・相談業務を得意分野とする。その他、一般企業法務、成年後見人・未成年後見人業務等にも携わっている。日本大学法科大学院講師(知的財産法)、日弁連・知的財産センター委員

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする