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「戦後70年談話」首相だけでなく「民衆」も発信したい――各地の市民グループが発表
埼玉県の市民グループが発表した「戦後70年・私たちの談話」

「戦後70年談話」首相だけでなく「民衆」も発信したい――各地の市民グループが発表

安倍晋三首相が8月に「戦後70年の談話」を出すのに先立って、全国各地の市民グループが自分たちの言葉で「民衆談話」なるものを発表する動きが広がっている。その起点となった埼玉県の市民グループが7月7日、「戦後70年・私たちの談話」を日本政府や中国・韓国の大使館に届けた。

「安保法制と同じく、安倍首相が出す談話は『戦争のできる国にしていこう』という流れに沿ったものになるとみられ、平和を求める私たち民衆の気持ちとは違う談話になると予想される。そうであるならば、自分たちの平和への気持ちを、自分たちの言葉で『談話』にして、世界に向けて発信しようと考えた」

グループの共同代表の松永優さんは、そう話す。松永さんたちは、全国各地の市民グループに「それぞれのグループが自分たちの言葉で『談話』を発信していってほしい」と呼びかけている。すでに、大阪や広島、札幌、富山などで同様の「民衆談話」を発表する動きが出ているという。

●「日本による侵略・植民地支配を痛切に反省」

松永さんたちが作った「民衆談話」の内容は、次のようなものだ。

まず、第二次大戦における日本の責任に触れ、「この戦争によって、国内外合わせ二千数百万人という戦死者を出しました。悲惨な殺戮に至った日本による侵略・植民地支配という加害の大罪を、痛切に反省したいと思います」と述べている。

続けて、昨今の日本政府は、戦争放棄をうたった憲法9条の理念を無視するような政策を推し進めようとしていると指摘。「日本政府がいま為すべきことは、歴史の事実を素直に認め、侵略への深い反省と、被害者に対して誠実、かつ真摯に謝罪することであり、歴代内閣の平和への指針を一歩たりとも後退させてはなりません」と注文をつけている。

そのうえで、「戦争による最大の被害者は民衆です。しかし、政治の暴走をゆるし、ファシズムを支えてきたのも私たち民衆でした」として、市井の民衆一人ひとりが歴史を直視し、国の未来を決めていくことの大切さを訴えている。

この「民衆談話」には、埼玉在住の100歳のジャーナリスト・むのたけじさんや、「夏子の酒」で知られる漫画家・尾瀬あきらさん、故菅原文太さんの夫人・菅原文子さんらが、賛同人として名を連ねている。賛同人の数は現時点で280人になるという。

松永さんたちは、日中戦争の発端となった盧溝橋事件が起きた7月7日、安倍首相に届けてほしいと内閣府を訪れて、職員に「民衆談話」を手渡した。また、中国と韓国の大使館も訪問し、それぞれの国の言葉に翻訳した談話を提出した。さらに、アメリカやアジア各国など約30カ国に英語版を郵送して、メッセージを伝える意向だ。

松永さんたちの「民衆談話」とその翻訳版は、グループのウェブサイト(http://gettouki.wix.com/gettouki#!services/ca4p)で見ることができる。日本語版の全文は、以下の通り。

●戦後70年・私たちの談話(略称:民衆談話)

今年2015年は、第二次大戦の敗戦から数えて70年の節目の年にあたります。この70年と、さらにはアジア・近隣諸国と共に歩む未来を考えるとき、私たちは日中戦争に始まり、アジア・太平洋戦争にいたる悲惨な歴史的事実から目を逸らすことはできません。この戦争によって、国内外合わせ二千数百万人という戦死者を出しました。悲惨な殺戮に至った日本による侵略・植民地支配という加害の大罪を、痛切に反省したいと思います。

「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」

戦争放棄を謳ったこの日本国憲法第9条の下、私たちは「非戦・不戦」を世界に向けて誓いました。

しかし、昨今の日本政府はこの理念を無視し、「国際紛争を武力で解決する国」を目指す政策を次々と推し進めています。こうした動きは、中韓両国をはじめアジア各国に強い危惧の念を抱かせています。日本政府がいま為すべきことは、歴史の事実を素直に認め、侵略への深い反省と、被害者に対して誠実、かつ真摯に謝罪することであり、歴代内閣の平和への指針を一歩たりとも後退させてはなりません。

さらに、沖縄における軍事基地の建設、原発、ヘイトスピーチ、性差による社会的差別など、人間の生存や尊厳を破壊し傷つける多くの不条理や矛盾を、この社会は抱えています。それらに対し、自由に意見や異議を述べることも出来ないような、息苦しい全体主義国家への傾斜を感じます。私たちはこうした政治の暴走を危惧し、強い憤りと反対を表明します。

戦争による最大の被害者は民衆です。しかし、政治の暴走をゆるし、ファシズムを支えてきたのも私たち民衆でした。私たちは、その歴史を直視し、この国の未来を決めていくのは、時の政治権力ではなく一人ひとりの民衆である、との確信のもとに、私たちの平和への思いを国内外に向けて、この「戦後70年・私たちの談話」を発信することとしました。

ー 私たちは ー

*戦争につながる一切のものを拒否し、真の平和への不断の努力をします。

*価値観や文化の多様性を尊重し、国境・民族を超えた人と人との相互信頼を大切にします。

*近隣国との紛争は、歴史をふまえた丁寧な対話と、市民レベルでの交流によって解決すべきものと信じます。

*格差や不公平、隷従や暴力が生み出す〈憎しみの連鎖〉をなくす努力をします。

*日本のみならず近隣諸国の民衆からも、それぞれの声と顔を持った「民衆談話」が発せられることを望み、平和を大切にする人たちと手をつなぎ、共に生きていく決意です。

ー 行動を ー

*この「私たちの談話」は、あの日中戦争が始まった7月7日に、世界に向けて発信します。

*同時に、首相官邸及び、韓国・中国・インドネシア・フィリピン・ミャンマー(ビルマ)、アメリカなどの各国の駐日大使館、並びに関係地域の代表機関に手渡し、民衆の思いを伝えたいと思います。

*この談話(民衆談話)の賛同人になってください。この行動にも参加してください。共に声をあげましょう。

戦後70年 民衆談話の会

(弁護士ドットコムニュース)

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