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2014年08月14日 14時35分

司法試験をテーマにした異色のライトノベル「憲法ガール」はいかにして生まれたか?

司法試験をテーマにした異色のライトノベル「憲法ガール」はいかにして生まれたか?

『憲法ガール』。そんなユニークなタイトルのライトノベルが昨年、司法試験受験生の間で評判になった。難解な司法試験の憲法の問題について、「小説」の形式で解説した本で、「面白くてわかりやすい」と人気を集めたのだ。

登場するのは、ロースクールを目指して勉強中の大学生である「僕」と、その友人の「トウコ」や「ユズ先輩」「リアンくん」といった面々だ。漫画に出てきてもおかしくないような個性的なキャラクターたちが、司法試験の難問をめぐって、熱い議論をかわす。

ライトノベルという軽快なタッチで、重厚な司法試験問題を解説するという異色の組み合わせが受けたようだが、なぜ、このような本が世に送り出されたのか。著者の大島義則弁護士にインタビューして、『憲法ガール』が生まれた背景を聞いた。(取材・構成/関田真也)

●「物語」で何かを表現したいという気持ちがあった

――『憲法ガール』は、どのような作品なのでしょうか。

大島:「一言でいえば、司法試験の『憲法』で過去に出題された論文問題を、対話形式で解説する小説です。大学の法学部や法科大学院に通う登場人物が、司法試験の過去問に取り組む物語ですね。

過去問の解説なので、メインターゲットは、法律家志望の法科大学院生や法学部生となっています。ただ、物語形式ということもあり、会社の法務担当者や公務員、憲法に関心のある一般の方などにも読んでもらえるのではないか、と思っています」

――司法試験の問題解説なのに、「ライトノベル」として書かれていることが特徴的ですね。どのような狙いで、このような作品を書こうと考えたのでしょうか?

大島:「この本は、私が個人のブログに書いていた小説がベースになっています。ブログでは、書籍になることを前提に書いていたのではなく、事前に明確な『狙い』があったわけではありません。気ままに書いたものが、結果的にネットで広く受け入れられた、というのが実態ではないでしょうか。

ただ、もともと小説が好きだったので、『物語』で何かを表現したいという気持ちがありました。実は、高校生のとき、趣味で小説を書いていたんです。当時は時間もあったので、恋愛小説や推理小説、ライトノベルなど、一通りのジャンルを書きました。そういった経験が、今回の作品を生み出すきっかけになったかもしれませんね」

――「小説」という形式にしたのは、なにか意味があったのでしょうか?

「ただ単純に、司法試験の解説を書いただけでは、メインターゲットである司法試験受験生にしか読んでもらえません。しかし物語形式であれば、一般の方にも、とりあえず興味を持って読んでもらうことができるかもしれません。

たとえ内容が難しくて、完全に理解できないとしても、憲法に関心を持ってもらうきっかけになるかもしれません。そこに、小説という表現手段を使う大きな意味があったと思います」

●司法試験を「本気で勉強したい人」に応える本を目指した

――『憲法ガール』の姉妹編として、今年は『行政法ガール』というライトノベルも出版していますね。『憲法ガール』と『行政法ガール』は、いずれも読み物として面白いだけでなく、司法試験の解説本としても完成度が高い、という印象を受けました。

大島:「実は、司法試験を『本気』で解説している本や講義は、あまり多くありません。そのような現状に対する不満がありました。『そこまでは試験対策としては考えなくて良い』というある種の『割り切り』が、受験生だけではなく、教える側にもあるのではないかと思います。

『憲法ガール』と『行政法ガール』は、そのような『割り切り』は一切許さないつもりで書きました。普通に考えれば疑問に思う部分を『割り切らず』に、登場人物が徹底的に会話で詰めてくるようにしました。

おそらく、このような姿勢が、ネットで受け入れられた理由だと思います。『本気で勉強したい人』に対して『本気で応える』本が、今まではなかったのです」

――『憲法ガール』や『行政法ガール』の中では、司法試験の問題を前にして、登場人物たちがそれぞれ「自分なりの議論」を展開していきますね。

大島:「理系の科目と異なり、法律学には一定の考え方の『筋』はありますが、絶対の答えはありません。複数の登場人物が一つの事例問題を多角的な立場から解明していく物語形式は、実は法律学の思考方法を学ぶのに親和的な手法なのだと考えています。

私は大学時代、憲法のゼミに所属していたのですが、そこでは特定の事例問題について、原告側、被告側、裁判官側の3つの立場に分かれて、いつも討論をしていました。そういった経験が作品の中にも生きていると思います」

――当初はブログで書いていた作品ということですが、書籍として出版することになったのは、どのような経緯があったのでしょうか。

大島:「何よりも、物語がネット上で広く受け入れられたことが、書籍化につながる大きな理由だったと思います。ツイッターなどを通して、多くの好意的な反応をいただきましたし、読者の中にはブログの印刷物を大学図書館に入れるように交渉した強者もいたと聞きました。

ブログが大きく話題になったことで、龍谷大学から講演の依頼がきました。その講演の打ち合わせの際に、龍谷大学准教授の斎藤司先生に『あのブログ、出版できませんかね』と軽く質問にしたところ、斎藤先生がこれまた軽く『できるんじゃないですか。出版社を紹介しますよ』と答えてくれたのです。

その後はトントン拍子で話が進みました。本当にご縁に恵まれたと思います」

●弁護士として「憲法訴訟」にも取り組んでいきたい

――ストーリー形式という手法に対して、読者からの反応はどうでしたか。

大島:「過去問の解説部分が対話形式だったためか、本来は難しい内容であるにもかかわらず、『わかりやすい』という声が多く聞かれました。また、ストーリーそのものが『面白い』というコメントもたくさんいただきました」

――今後は、一般向けの作品を発表するなど、新しい挑戦をする考えはあるでしょうか?

大島:「『憲法ガール』と『行政法ガール』は、扱っている対象が司法試験の過去問ということもあり、やや内容が難しいので、漫画やアニメなどにマルチメディア展開をすることは現実的でないと思っています。

そこで、今後は、そのような展開ができることを見据えた物語も生み出していけたらいいな、と考えています。あと、法律に関係した新書を書くことは、一つの夢ですね」

――弁護士としては、今後どのような仕事をしていきたいと考えていますか?

大島:「将来的には、社会的に意義のある憲法訴訟や行政訴訟にも、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

最高裁に提出する上告理由書では、憲法上の主張を行うことがほとんど必須とされていますが、憲法訴訟の専門知識がない状態では、適切な上告理由書は書けません。他方で、憲法訴訟論のしっかりした専門知識を持っている弁護士は多くないのが現状です。

そこで、最高裁での充実した訴訟追行を希望する方のお手伝いをする仕事ができれば良いなと思っているところです。

また消費者庁へ出向していた経験を生かして、公益・内部通報や情報公開法、個人情報保護法、特定商取引法等の法分野の事件の取扱いも強化していけたら、と考えています」

(弁護士ドットコムニュース)

大島 義則(おおしま・よしのり)弁護士
1983年生まれ。慶應義塾大学・同法科大学院卒業。2012年2月~2014年1月まで、消費者庁に出向し総務課課長補佐(情報公開・個人情報保護・公益通報担当)を務める。現在は弁護士。主著として第二東京弁護士会編『ソーシャルメディア時代の個人情報保護 Q&A』(共著、日本評論社、2012年)など。
ブログ「インテグリティな日々」(http://tower-of-babel.hatenablog.com/)
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