もしもに備えて理解!遺産相続の順位
自分がどのくらいの遺産をもらえるかを知るにあたりおさえておきたいことが「相続の順位」です。
今回は、遺産相続の順位について説明していきます。ご参考になれば幸いです。
目次
1.もらえる相続財産の割合はどうやって決まる?
被相続人(死亡した者)が死亡した場合、被相続人が残した遺産は誰にどのような割合で相続されるのでしょうか。
この点については、被相続人が遺言を残していたか否かで大きく異なります。
(1)遺言がある場合
被相続人が遺言を残していた場合には、原則としてその遺言に書かれている通りに遺産を分割します。つまり、相続人は遺言に書かれている通りに被相続人の財産を相続することになります。
(2)遺言がない場合または遺言が無効の場合
遺言がない場合または遺言が民法上の要件を満たしていない場合(この場合には、遺言は無かったものとして扱われます)には、民法上の法定相続分に従って、相続財産の割合が決まります。
この点については「5.どのくらいの割合の財産をもらえる?具体的な相続分について」で具体的に説明していきます。
(3)遺産分割協議で相続分を決定
上記の(1)、(2)にかかわらず、相続人全員で遺産分割協議(残された遺産を具体的に誰にどのような割合で分割させるかを決めること)をすることができます。
相続人全員が納得して遺産分割協議ができれば、必ずしも遺言や法定相続分に従って分割する必要はありません。
2.法定相続人とは具体的に誰?
次は法定相続人が具体的に誰なのかを知っておきましょう。
法定相続人とは、民法に定められた被相続人の遺産をもらうことができる人のことを言います。
具体的には、以下の通りです。
(1)配偶者
夫または妻のことです。
なお、この場合の「配偶者」は、法律上の配偶者、すなわち婚姻届を提出している場合に限られます。内縁の配偶者は、この場合の「配偶者」にあたりませんので、注意して下さい。
(2)血族相続人
血縁により相続人となる者のことで、具体的には以下の方々です。
- 直系卑属(子や孫など)
- 直系尊属(父母や祖父母など)
- 兄弟姉妹
なお、血族には「3、遺産相続の順位」で述べるように、順位があります。
3.遺産相続の順位は?
遺言がなく、法定相続分に従って相続割合が決まる場合、どのくらいの遺産をもらえるかは相続の順位により決まります。ここでは相続の順位について説明していきます。
(1)配偶者
配偶者は常に相続人になります。
(2)血族相続人の順位
血族相続人の場合には、順位があり、より上の順位の相続人が存在しないときに初めて後順位の相続人が相続することができます。
第1順位:被相続人の子もしくはその代襲相続人である直系卑属
子や孫、ひ孫などがこれにあたります。この場合、子は実子か養子かを問いません。
なお、普通養子の場合には、養子となっても実の親子関係はそのままなので、養親のみならず実の親からも相続できます。
もし、子供が既に死亡しているような場合には孫や、孫がなくなっている場合にはひ孫が代襲相続します。代襲相続について詳しくは「4、代襲相続とは」をご参照下さい。
第2順位:被相続人の直系尊属
親や祖父母などがこれにあたります。
子や孫などの第1順位の血族相続人がいない場合に相続することができます。
なお、直系尊属が複数いる場合には、関係性が近い者が相続することになります(例えば、両親と祖父母がいる場合には、両親だけが相続することになります。)。
第3順位:被相続人の兄弟姉妹
第1順位及び第2順位の血族相続人がいない場合に初めて相続することができます。父母双方が同じ場合にはもちろん、一方のみ同じ場合(異母兄弟、異父兄弟)でも相続人となります。
ただ、相続分に関しては「5、どのくらいの割合の財産をもらえる?具体的な相続分について」で説明するように、父母双方が同じか、一方のみ同じ場合(異母兄弟、異父兄弟)で異なります。
4.代襲相続とは
(1)代襲相続とは?
代襲相続とは、簡単に言いますと、相続が開始される前に既に相続人が死亡している場合に、その相続人の子供などが相続人となる場合を言います。
なお、相続人が死亡している場合以外でも、以下のような場合には代襲相続されます。
- 相続人に相続欠格事由がある場合(例えば、相続人が被相続人を殺害したような場合)
- 相続人に廃除事由がある場合(例えば、相続人が被相続人を虐待していたような場合)
(2)代襲される者は?
代襲される者は、被相続人の子及び兄弟姉妹に限られます。
(3)代襲相続できるのは誰?
代襲相続できるのは、代襲される者の直系卑属、つまり被相続人の孫または兄弟姉妹の子(つまり甥や姪)です。
もし、子も孫も死亡していた場合には、さらに曾孫が相続人となります(この場合を、再代襲と言います。)。そして、子の代襲については無限に再代襲が生じます。
他方、甥や姪については一代限りで代襲が終了し、甥や姪の子が相続人になることはありません。
5.どのくらいの割合の財産をもらえる?具体的な相続分について
民法は、相続人が複数いる場合の具体的な相続分を定めています。これを、「法定相続分」と言います。
前述のように、被相続人は、遺言で相続分を指定することができますが、遺言がない場合には、この法定相続分が適用されることになります。
法定相続分は以下の表の通りです。
直系卑属 | 直系尊属 | 兄弟姉妹 | |
---|---|---|---|
配偶者 | 配偶者 1/2 | 配偶者 2/3 | 配偶者 3/4 |
直系卑属 1/2 | 直系尊属 1/3 | 兄弟姉妹 1/4 |
なお、血族相続人の注意点としては以下の通りです。
(1)血族相続人が子の場合
子が複数いる場合には、それぞれ均等の相続分になります。また、養子と実子に相続分の差はありません。
(2)血族相続人が直系尊属の場合
同順位の直系尊属が複数いる場合には、それぞれ均等の相続分となります。
(3)血族相続人が兄弟姉妹の場合
兄弟姉妹が複数いる場合には、それぞれ均等の相続分となります。
なお、片方の親のみ同じ兄弟姉妹の相続分は、両親とも同じ兄弟姉妹の半分になります。
6.法定相続人なのに財産がもらえない場合に!遺留分減殺請求権とは?
(1)遺留分とは?
遺留分とは、簡単に言うと、請求すれば必ずもらうことができる相続分です。
(2)遺留分権利者は誰?
遺留分権利者(遺留分請求権がある相続人のこと)は、具体的には、
- 被相続人の配偶者
- 子
- 直系尊属
- 子の代襲相続人(つまり孫のこと)
です。
なお、兄弟姉妹は遺留分権利者にはなれませんので、注意して下さい。
(3)遺留分減殺請求の方法は?
自己の遺留分が侵害された場合に遺留分を請求することを、遺留分の減殺(げんさい)請求と言います。また、その権利のことを遺留分減殺請求権と言います。
遺留分減殺請求権行使の方法は、必ずしも裁判をする必要はなく、裁判外で行っても良いことになっています。例えば内容証明郵便で遺留分減殺請求をすることも可能です。
まとめ
今回は、遺産の相続順位について説明してきましたが、いかがだったでしょうか。今回の話が、相続順位について知りたい方のご参考になれば幸いです。