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インタビュー・レポート

分野を問わず、悩みを抱えている方の力になりたい  〜考え抜いたコンセプトを軸に、独立直後から集客に成功〜

インタビュー/事例 2020年05月15日


今回は、名古屋市などのベッドタウンでもある岐阜県各務原市で開業されている小林和久先生(清流のまち法律事務所)に、弁護士登録をしてから現在に至るまでの歩みや仕事術について、お伺いしました。

小林先生は、独立開業当初からWeb集客を活用しながら、依頼者の方とのコミュニケーションや事件解決までのスピード感を大切にして、様々な分野の事件を解決に導いて来られました。仕事術とあわせて、独立開業直後からWeb集客で結果を出すためのノウハウや事務所のコンセプト作りの方法などについても、お話しいただきました(インタビュー日:2020年4月15日)。


 
記事のハイライト

・司法過疎地での経験が今に活きている
・独立成功の鍵は、事務所のコンセプト設計
・経営を支える「伝達力」と「実行力」
地域の方や同業の先生との繋がりを大切に

 
司法過疎地での経験が今に活きている

 

ー 公務員から弁護士に転身された理由について、お聞かせください。

2つあります。
1つ目は、公務員時代に、職場の同僚から、パワハラや家族の問題について相談を受けることが多く、相談にのった後に感謝してもらえることに喜びを感じたからです。

2つ目は、当時、中間管理職的な立場にいたのですが、手がけていた仕事に疑問を感じるよようになり、人の役に立つことができる弁護士の仕事に興味を持ったからです。
また、法科大学院が、弁護士になりやすい制度を設けていたことも理由のひとつです。



ー 弁護士になる前から、相談を受けられていたのですね!
  弁護士の仕事をする上で、社会人経験が活かされているなと思うことはありますか。

ありますね。
中間管理職的な立場で働いていた経験から、様々な相手の立場を尊重しつつ、その人に合わせた物事の伝え方が自然と身についたので、様々なタイプの相談者や依頼者の方とのコミュニケーションが必要な弁護士の仕事に、とても活きていると思います。
報連相の徹底や仕事の期限を守ることも根強く染み付いているので、相談者や依頼者の方との信頼関係も築きやすいですね。

加えて、前職で精神的に追い込まれた経験もあります。そのため、精神的に追い込まれている方や悩みを抱えた方の気持ちがとてもよく分かるので、相談者や依頼者の方の気持ちに寄り添いながら事件解決を目指すことができるのも強みだと考えています。



ー 相手の立場や性格などによって、コミュニケーションの取り方は変わってきますよね。
  弁護士をする上で心がけていることについて、お聞かせください。

いくつかあるのですが、一番重視しているのは、相談者や依頼者の方の「意思」や「気持ち」を尊重することです。

「意思」や「気持ち」を尊重するために不可欠なのが、コミュニケーションで特に聞くことが大切だと思っていますので、丁寧に相手の話を聞くことを意識しています。そのため聞くスキル向上させるために傾聴・コーチングの勉強や、夫婦カウンセラーや認知症サポーター等の資格も取得しています。

また、相談者や依頼者の方とお話しをしていると、よく「どうしたらいいでしょうか」とご質問いただくことが多いのですが、その時は、まず「ご自身がどうしたいのか」について、伺うようにしています。相談者や依頼者の方が、事件をどのような形で解決したいと考えているのかを、把握しておくことは非常に重要です。例え、希望の予測がついても、私からは発言せず、必ずご自身の口から言っていただくように心がけています。
とはいえ、初めて法律事務所という場所に来て、弁護士に対して意見を言うのは、なかなかハードルが高いことです。少しでもリラックスしていただくために、傾聴を心がけつつ、話しやすいフランクな雰囲気を作って、打ち解けた後に意思の確認をさせていただいています。
ありがたいことに、相談者や依頼者の方からは、「話しやすかった」「こんなに話を聞いてくれるとは思わなかった」
などの感想をいただくことが多いです。


また、事件解決までのスピード感も重視しています。
経験上、事件を早く進める方が、良い解決になる傾向にあるからです。事件の解決までの期間が伸びれば伸びるほど、依頼者の方が不安な気持ちになったり、別の問題が発覚したり、相手方との関係が複雑化しやすかったりするので、可能な限り、素早い解決を心がけていますので、「こんなに早く問題が解決するとは思わなかった。」という感想もいただくことも多いです。



ー 家事事件、民事事件に広く注力されていますが、その理由についてお聞かせください。

独立する前は、北海道で司法過疎地の公設事務所の所長を務めていたのですが、その時の経験から、手がける分野を絞らないようにしています。

司法過疎地に向かった理由は、弁護士を目指すきっかけとなった「人の役に立ちたい」という気持ちが強さから、「一番弁護士が求められる地域で働きたい」と考えたからです。赴任した地域では、司法過疎地で弁護士が少なく他の弁護士へ相談に行くのもとても大変な地域で、私が相談を受けなければ相談できるところがない状況だったので、多岐にわたるご相談を一切断らずに受けていました。
特に、人間の感情や関係が複雑に絡み合い、事件の背景を理解しないとなかなか解決できないような家事事件や民事事件が多かったのですが、そのような問題に正面から向き合って解決することが、自分にとって、やりがいも喜びも感じることができ、かつ、自身の力が一番発揮できると考えたので、岐阜県で開業した今も、手がける分野は絞っていません。国選もやっているので、刑事事件を手がけることもあります。ご要望があれば、しっかり応えていきたいと考えています。

現在、特に注力しているのは、離婚問題、相続事件、不動産の明け渡し、債権回収、交通事故、借金の問題、高齢者に関する問題ですね。当事者の気持ちがとても強く関わってくる分野なので大変ではありますが、その分、解決した時に依頼者の方にとても喜んでいただけるので、大きなやりがいを感じています。



ー 広い分野を手がけるとなると勉強も大変かと思いますが、どのような工夫をされていらっしゃるのですか。

書籍は、常に最新のものを購入するようにしています。

月刊弁護士ドットコムの「Book for Lawyers」は、本のラインナップがよく便利なので、結構な頻度で利用しています。
近日公開予定の電子書籍の読み放題サービスも、どんな感じになるのか気になっていますね。

また、研修やセミナーにもよく参加しています。本を読むよりも、講師の方の解説を聞いた方が理解しやすく、労力をかけずに重要なポイントを抑えることができるので、とても便利です。特に、弁護士ドットコムのオンラインセミナーは、ラインナップが充実しているので重宝しています。





独立成功の鍵は、事務所のコンセプト設計


独立を決意した理由について、お聞かせください。

独立する前に所長を務めていた事務所は、任期で所長が交代するルールがありまして、その任期が終了したことが1つです。また「やりたいことが自由にできること」「自分自身が成長できること」にも魅力感じて、独立することを決めました。
独立する前に、所長として経営者の経験を積めたのはとてもよかったですね。

開業場所はいくつか候補があったのですが、生まれ育った地元だったことや高齢の母親1人で生活していたため心配だったことに加え、当時、各務原市には弁護士が二人しかいなかったこともあり、最終的に各務原市に決めました。
地元と言っても、長らく北海道にいましたし、知名度もないので、「開業後しばらくは、一ヶ月に数件しかお問い合わせは来ないだろうな」と覚悟していました。しかし、実際にはじめてみると、思った以上にたくさんのお問い合わせをいただき、大変驚きました。
これは、Web集客に力を入れていたことや、岐阜県では県庁所在地である隣の岐阜市に法律事務所が集中していて、他の地域には少ないという事情などがあってのことだと考えています。



ー 独立時点で、経営経験があるというのは非常に強いですよね。
  独立準備で、効果的だったことについてお聞かせください。

Web集客を始める前の準備に力を入れたことと、事務所のコンセプトをしっかり考えたことですね。この2つを行ったことで、開業してすぐに多くのお問い合わせをいただけたのだと考えています。

開業当初は地縁や知名度がなかったので、Web集客がメインになると考え、事前に、ホームページの開設準備やポータルサイトのページ作成を進めることにしました。
当初は、「一定のクオリティのホームページさえあればいい」と考えていたのですが、
様々な人に意見を聞き、自分でもリサーチをしたところ、クオリティ以前にコンセプトが重要であることがわかりました。そして、コンセプトはホームページに限ったことではなく、ロゴや掲載する写真、相談室のデザイン、物件選びなど、事務所に関する全般に関わってくることだと気がつきました。そこで、まずは事務所のコンセプトを決めるところから始めることにしました。



ー 事務所のコンセプトは、どのように決めたのですか?

初めてのことだったので、どうやって決めるか悩みましたが、自分の長所ややりたいこと、開業地域において求められていること
について熟考し、それらをバランスよくまとめることにしました。

例えば、弊所であれば、自身の特色である「コミュニケーションを重視していること」「家事事件、民事事件を中心に広く手がけていること」を、ホームページやポータルサイトのページから読み取れるように工夫しました。
また、地域的に「岐阜市に法律事務所が集中していて、各務原市には少ない」「各務原市は人口もそれなりに多い」という事実から、「身近な弁護士が必要」だと考え、その要素も反映しました。
Webページに記載する内容については、他の先生のホームページやポータルサイトのページを見て研究しましたね。

正直、

Web集客のみで、ここまでお問い合わせが多いとは思っていなかったので、かなり効果があったと考えています。


ー コンセプトが決まっていると、すべてに統一感が出るので、相談者の方にどのような事務所であるかが、より伝わりやすくなりますよね。
  今思えば、独立準備中にやっておけばよかったと思われることはありますか。

事務所のコンセプトの作り込みにかなり時間がかかったので、もっと早いタイミングから考えておけばよかったと思っています。私の場合、ホームページの準備や開業場所を探しはじめてから、コンセプトの重要性に気づいたので、少々準備に遅延が発生しました。


経営を支える「伝達力」と「実行力」
 
大変順調にご経営されているようにお見受けしますが、その要因は、ご自身では何だとお考えですか。

2つあります。
1つ目は、Web集客が上手くいっていることです。
弊所は、お問い合わせの95%がWeb経由なのです。その中で、事務所のコンセプトや私の人物像が、ホームページやポータルサイトのページから、相談者の方に上手く伝わっていることが大きいですね。

2つ目は、知見のある方々のアドバイスを聞き、実行していることです。
ホームページを作る過程で、様々な業者の方にコンセプトを伝えた上で、アドバイスをいただいたことで、納得のいくものを作り上げられた経験から、「知見のある方のアドバイスを聞き、それを元に行動に移すことが成功への近道だ」ということを学びました。
弁護士ドットコムの営業の方のアドバイスを聞いて、実行することもありますし、最近では、よく読んでいる弁護士ドットコムの他の先生へのインタビュー記事で、得た気づきや参考になる施策を、実際の経営に取り入れています。
「良いな」と思ったことをすぐに取り入れるという行動が、経営を支えている一面もあると考えています。


ー 独立してすぐの集客手段として、Web集客を選択されたとのことですが、ポータルサイトも色々試されたのでしょうか。

そうですね。色々試し、現在もいくつか並行して利用しています。
弁護士ドットコムを選んだ理由は、知名度があったことやバランスがよかったことです。知名度があるポータルサイトの方が、相談する側からしても安心感があります。また、集客用のホームページだと見る層を選びますが、弁護士ドットコムは、真剣に相談したいと考えている層と、気軽に相談したいと考えている層のバランスがちょうどよく、広い対象に訴求できるので一番いいですね。


ー Web集客をする上で、工夫されているポイントがありましたら、お聞かせください。

他の事務所との違いを意識しつつ、事務所や自身の特徴、弁護士に相談することへの敷居の低さなどが、相談者の方に上手く伝わるように、ウェブでの掲載内容に気を配ることですね。

具体的には、ポータルサイトであれば、入力可能な項目はなるべく埋め、可能な限り自分の情報を記載するようにしています。
ホームページについては、他先生は信頼感を重視した硬めのホームページが多いように感じたので、私は、柔らかめにしようと考えました。あまり柔らかくしすぎると信頼感が損なわれるので、バランスには悩みましたね。
また、人間は何事もイメージから入るところがあるので、掲載する写真やホームページの色合いなどにも注意を払いました。

このような工夫が功を奏したのか、依頼してくださる方は「小林先生にお願いしたくて、来ました」と言ってくださいますね。とてもうれしく思っています。


地域の方や同業の先生との繋がりを大切に


ー 
小林先生の今後の展望について、お聞かせください。

事務所の経営について言えば、3年間ほどは、今の状態を続けながら様子見したいですね。
仕事をするうちに、地域の方との繋がりができてご相談が増え、事務所を大きくする必要性が出て来たら、事務員や弁護士の先生を増やすことも考えます。

手がける分野について言えば、まずは今ご依頼いただいている案件をしっかりやることを意識していきたいですね。地域の方との繋がりで企業顧問のお話しなどがありましたら、その分野も積極的に手がけられればと考えています。


ー 今後、独立して、安定的に事務所経営を続けていきたいと考えていらっしゃる先生にメッセージやアドバイスなどありましたら、お願いいたします。

独立してみないことには、独立の向き不向きや良し悪しがわからないので、「独立してみたい」という気持ちがあるなら、一度は独立してみることをお勧めします。
不安もあるとは思いますが、開業に関する書籍を読んだり、経験者のアドバイスを聞くなどすれば、ある程度、不安は解消できます。幸い、弁護士という職種は開業資金がそこまでかからないので、「もし独立開業が肌に合わなければ、また戻ればいい」くらいの心持ちでやってみるといいかと思います。

独立する前も独立した後も、常に課題は出てきますが、課題が発生した原因を考えて対処することの繰り返しに慣れれば、経営も上手く回り出します。
トライアンドエラーが好きな人は、独立するととても楽しいと思いますよ。

独立後、案件の進め方に悩んだ時は、新人弁護士の困りごとに電話でアドバイスをくれる日本弁護士連合会のサービスを利用したり、同期や先輩弁護士に相談するといいですね。先輩弁護士との繋がりを作る機会は少ないかと思いますが、委員会に入ったり、弁護士会のクラブ活動に参加してみるといいかと思います。私も、岐阜弁護士会の野球部に入っているのですが、そこで一緒に活動する中で、様々な繋がりができています。仕事だけの繋がりだと、どうしても利益による繋がりになってしまって気兼ねしますが、趣味の繋がりであれば気軽に付き合えるのでおすすめです。


 

 
 
 
 

(取材・文 / 松居恵都子)

 



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小林 和久先生のプロフィール



私は社会人として6年間働いていましたが、職場の人々のパワハラや家族の相談等を受けることが多く、世の中で困っている人の助けになりたいと思い弁護士を志しました。
弁護士になってからは、3年間北海道の富良野市で弁護士として勤務、その後日本弁護士連合会が支援する司法過疎地の公設事務所である名寄ひまわり基金法律事務所の所長として3年間業務を行いました。
司法過疎地では弁護士が少ないため年間約200件の様々な相談を受けてきました。
この度、地元の皆様のお役にたちたいと思い各務原市で開業しました。


【所属弁護士会】
・岐阜県弁護士会

【主な取扱分野】
・離婚・男女問題
・債権回収
・遺産相続
・不動産・建築
・借金・債務整理
・労働問題
・犯罪・刑事事件
・交通事故

【セミナー】
・2016年 11月
 簡単!わかりやすい!はじめての人でもわかる成年後見制度
 名寄市主催 権利擁護講演会

・2016年 11月
 村民と弁護士で贈る啓発劇 みんなのための法律劇
 猿払村主催 訪問販売、降込め詐欺、交通事故について演劇の出演と解説

・2018年 1月
 知っておきたい暮らしに役立つ法律のはなし~安心した老後を送るために~
 名寄市消費生活センター主催 終活と高齢者の問題について講演

・2018年 1月
 刑事事件と法律及び地域の事件の実情について
 保護司会主催 刑事事件の簡単な解説と名寄市の民事事件の実情について講演

・2018年 11月
 劇で伝える「高齢者の相談先」大紹介
 名寄市主催 権利擁護講演会 演劇の出演、パネリストとして参加

【メディア出演】
・2016年 8月~2019年7月 ラジオAirてっし(FM)
 番組:毎週火曜日11時~11時30分「身近な法律の話」のメインパーソナリティとして法律の話をしていました。

・2016年 8月枝幸町ケーブルテレビ
 テレビ番組:身近な法律の話 DV、債務整理、児童虐待、財産分与等について解説

・2016年 9月名寄新聞・北都新聞・道北日報
 自殺予防コラム「家庭の問題で悩んでいるあなたへ」

・2017年 9月名寄新聞・北都新聞・道北日報
 自殺予防コラム「お金の問題で悩んでいるあなたへ」

【Web】
・公式HP
 https://stsmile.design/seiryu/

・弁護士ドットコムのページ
   https://www.bengo4.com/gifu/a_21213/l_263357/




 

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