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電車の迷惑行為「背負ったリュック」1位、他の荷物よりトラブルに発展しやすいワケ
写真はイメージです(U-taka / PIXTA)

電車の迷惑行為「背負ったリュック」1位、他の荷物よりトラブルに発展しやすいワケ

日本民営鉄道協会が12月20日に発表した2018年度「駅と電車内の迷惑行為ランキング」によると、客が感じる迷惑行為として、「荷物の持ち方・置き方」(37.3%)がトップ(昨年は29.8%で3位)になり、このうち最も迷惑に感じる行為のトップになったのは、「背中や肩のリュックサック・ショルダーバッグ等」(66.2%)でした(昨年は55.2%)。満員電車などでのリュックを問題視する風潮が高まっています。

弁護士ドットコムにも、公共交通機関でのリュックに関するトラブル相談が寄せられています。ある人は、リュックを背負っていた子どもが、他の客から「リュックが頭にぶつかったといわれ、頭が痛いから病院にいく」と言われたそうです。

相談者の子どもには、ぶつかった感触はありません。しかし「息子はあたってないといい、相手は当たったといい平行線」だそうです。

リュックをめぐるトラブルは様々なものが考えられますが、どんな法的問題に発展する可能性があるのでしょうか。甲本晃啓弁護士に聞きました。

●言い争いになって刑事事件に発展する可能性

「電車の棚に上げた大きな荷物が不安定になり落下して、他人に怪我をさせた場合や、キャリーバッグや通路に置いた荷物に他人がつまずいて怪我をした場合には、民事では、怪我の治療費などを賠償する責任を負います。

また、刑事では、過失傷害罪に問われる可能性があります。なお、被害者がスマートフォンを操作して、周りをよく見てないなかったことも原因であるような場合には、民事では過失相殺という考え方で賠償金が減額がされることがあります」

では、リュックの場合はどうなるのでしょうか。

「背負ったリュックに人にぶつかり怪我をさせた場合も、先ほど説明したケースと同様と考えられます。しかし、実際にはリュック自体をぶつけて怪我をさせるという事例よりも、リュックが原因で乗客同士が言い争いになって暴行・傷害などの刑事事件に発展する例のほうが多いように感じます」

●「無自覚」が招くリュックトラブル

なぜ、そのような特徴があるのでしょうか。

「ひとつの大きな要因として、無自覚が挙げられます。自分のリュックが原因で人に怪我をさせたことが自覚できれば、相手に対して申し訳なかった、と思うのが通常でしょうし、それ以上のトラブルには発展しないのが普通です。

しかし、背負ったリュックでは自身の視覚の範囲外となり、感覚も鈍り、体の向きを変えた時に人にぶつかってしまうこともあります。乗り降りの際に通路を塞ぐ形になってしまい、気づかず周囲に迷惑をかけていることもあります。

また、そのような状態では、他人がリュックを押しのけて進もうとしたときに、小突かれたものと勘違いして本人が逆上するという事例もあります。いずれも、リュックを背負った本人に自覚がないために、状況を誤解して、トラブルに発展することも多いようです」

●狭い範囲で強い圧力がかかってしまう「力学的」特徴

他にはどのような特徴があるのでしょうか。

「もうひとつ、満員電車でのリュック問題については、力学的な面についても言及しないとならないでしょう」

「力学的」とはどのような意味でしょうか。

「例えば、皆さんも背もたれのある椅子に浅く座り、背もたれに寄りかかると体重の一部が背もたれに分散するのがわかると思います。

満員電車で背負ったリュックは、いわばこの椅子の背もたれの役割をしてしまい、後ろにいる人がリュックを背負った本人の体重を受け止める道具となってしまうのです。

本人は背中全体でその圧力を受け止めるので、それほど力がかかっている感じはしなくとも、後ろの人には丸みを帯びた外側が当たるため、狭い範囲で強い圧力がかかる場合があります。相手に苦しい思いをさせてしまうのですから、余計にトラブルになってしまいます。

なお、ケンカなどのトラブルになれば、周囲の利用者に迷惑をかけるだけでなく、列車の運行に支障を来すこともあり、そうなると鉄道会社から損害賠償請求をされる可能性もあります。

電車に乗ったらリュックを前に抱えるとか、落下しないよう確実に網棚に載せるなどした上で、常に意識をそらさないようにすることで、トラブルを起こさない、巻き込まれないようにしたいですね」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

甲本 晃啓
甲本 晃啓(こうもと あきひろ)弁護士 甲本・佐藤法律会計事務所
理系出身の弁護士・弁理士。東京大学大学院修了。丸の内に本部をおく「甲本・佐藤法律会計事務所」「伊藤・甲本国際商標特許事務所」の共同代表。専門は知的財産法で、著作権と特許・商標に明るい。鉄道に造詣が深く、関東の駅百選に選ばれた「根府川」駅近くに特許事務所の小田原オフィスを開設した。

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