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不正入試・東京医大の「誠意ある補償」が焦点 弁護団は提訴も視野
打越さく良弁護士(2018年12月7日、東京都内)

不正入試・東京医大の「誠意ある補償」が焦点 弁護団は提訴も視野

東京医科大の不正入試問題が発覚してから約4カ月。東京医大は12月7日になって、2018年度と2017年度の医学部医学科入試で得点操作により不合格となった女子や多浪の男子受験生について、入学意思を表明した49人のうち女子5人を改めて不合格にした、と発表した。

不合格になった入学希望者の得点を復元し、得点操作前の状態に並び替えて精査した。「募集定員に達するまでの順位に入った方を合格と再判定しました」(東京医大)としている。

これまで元受験生を支援する「医学部入試における女性差別対策弁護団」は、慰謝料支払いなどの「誠実な対応」を求めてきた。ただ東京医大は「補償は検討中」と十分な回答をしないまま。弁護団の共同代表を務める打越さく良弁護士に、今後の方針などを聞いた。

●入試くらいは差別がないと思ったが

ーー東京医大は女子5人を改めて不合格にしました。どう捉えていますか

「大学側に責任があるのに、追加入学を認められない受験生が出ることは、受験生からしたら到底納得できないでしょう。この5人の方は全員、入学を認められるべきです。

社会にはまだまだ女性差別が残っていますが、入試くらいは機械的に公平にされ、差別はないと思われていました。それが違った。努力が報われるのではなく、性別による差別がされていたということで、まったく誠実ではありません」

ーー元受験生からの相談を受け付け、11月23日には元受験生向けの説明会も開きましたが、今後の対応方針を教えてください

「弁護団では、東京医大に対してこれまで補償などの誠意ある対応を求めています。十分な回答をもらっていないので、それを待っている段階です。東京医大の対応次第では、民事訴訟を起こす可能性があります」

ーー元受験生や保護者からはどのような声が聞かれましたか

「狭い医学の世界では声をあげた人は叩かれるのではないか、名を連ねたらどうなるかわからない、という懸念の声が聞かれました。

また、不合格になったことで自分の能力が足りないと思って、医師になることを諦めて他の学部に行ったという人もいました。医学部に入れるかどうかは、職業選択に関わるものです。スタートラインで医師という道を閉ざされるのは不当です」

●文科省は「違憲違法」だと打ち出すべき

ーー本格的な受験シーズンが迫っています。文科省の対応については

「入試不正が疑われるのに、文科省は大学側に自主的な公表を促すということにしてきました。いくつかの大学で不正があったと報じられていますが、なかには逃げ切りを図ろうとしている大学もあるのではないかと心配です。

これから受験シーズンが本格化していきますが、文科省として早期に大学名を公表し、不当であるということを強く打ち出すべきです。大学の逃げ切りを許すようではまずいし、逃げ切りを許せば、それが『悪しき前例』になってしまいます。

今回のような差別は、憲法14条や教育基本法4条に反し、違憲違法だということを明確に文科省として打ち出してほしいと思っています」

<憲法14条1項>すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

<教育基本法4条1項>すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。

(弁護士ドットコムニュース)

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