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2018年11月08日 11時02分

「ハロウィン禁止条例」ネットで待望論 実際にできるのか考えてみた

「ハロウィン禁止条例」ネットで待望論 実際にできるのか考えてみた
10月31日の渋谷のハロウィンの様子

逮捕者も相次いだ渋谷のハロウィン。ネットでは「渋谷のハロウィンを条例で規制して欲しい」といった声が多数上がっている。

例えばツイッターでは「区の条例で禁止して全員逮捕して罰金を取ればいい」「罰則ありの条例制定は賛成」「条例とかで公道の仮装禁止にすればいい」といった声が見受けられた。渋谷区の長谷部健区長も11月1日、報道陣の取材に対して、規制を含めた対策を検討する考えを明らかにしている。

実際に「仮装禁止条例」や「路上飲酒禁止条例」など、条例を作って規制することは可能なのだろうか。元警察官僚で特別刑法の改正など立法作業の経験がある澤井康生弁護士に聞いた。

●条例は「法律の範囲」で制定できる

ーーネットでは「路上飲酒禁止と仮装禁止条例つくれ」などという声が上がっています。こんな条例を実際に作ることは可能でしょうか

「まず、条例で何でも規制することはできません。憲法94条で『法律の範囲内で条例を制定することができる』と規定されているからです。つまり、条例よりも法律の方が効力が上なのです。法律に違反する条例や法律の効果を阻害するような条例は、制定することができません」

ーーそうなると「仮装禁止条例」「路上飲酒禁止条例」の制定は難しいでしょうか

「仮装する自由や飲酒する自由は、憲法13条の幸福追求権や自己決定権の下、一定程度保障された権利です。これらの権利を規制する法律そのものがない以上、条例で無制限にこれらの権利を規制することはできません。

しかしながら、仮装する自由や飲酒する自由であっても他人の迷惑となる場合には法律で規制することが可能ですから、一定の条件下で条例で規制することはできます」

ーーどのような条件でしょうか

「路上での仮装や飲酒を禁止する目的は、繁華街での平穏を確保するためです。その目的を達成するために、仮装する自由や飲酒する自由を過度に規制することのないよう、相当厳格な要件を設ける必要があります。

例えば、路上であることに加えて、日時、時間、場所の範囲、行為や態様、人数などの要素を可能な限り特定して禁止する方法が考えられます。ただそうなると、実務的には特定は難しいと思います」

●「路上での仮装や路上飲酒自体は犯罪行為ではない」

ーー罰則も定めることができますか

「はい。行政法で課せられた義務違反に対して科せられるのが行政罰ですが、これには二種類あります。刑法上に刑名のある刑罰を科すのが『行政刑罰』、軽い違反行為に対して金銭的な制裁を科す『秩序罰』です」

ーー行政刑罰とは何でしょうか

「行政刑罰とは、行政罰のうち、その原因となる行為が犯罪に該当することにより科される刑罰をいいます。例えば無免許運転やスピード違反などの道路交通法違反があたります。行政刑罰は、刑罰の一種なので刑法の適用があり、刑事訴訟法の定めるところにより、検察官の起訴を受けた裁判所の判決により刑罰が科されます」

ーー秩序罰とは何でしょうか

「秩序罰は、行政秩序に障害を与える危険性があるものに対して科される制裁で、過料が科されます。例えば、住所移転に伴う転入届などを正当な理由なしに届け出なかった場合は5万円以下の過料が科されます」

ーー仮に、路上での仮装や飲酒を禁止する条例を、罰則規定を盛り込んで制定した場合、秩序罰が科されることになりますか

「はい。一定の条件下で路上での仮装や飲酒を禁止する条例を制定することは可能でしょうが、行政罰としては秩序罰(過料)を設けることしかできません。路上での仮装や飲酒自体は犯罪行為ではないので行政刑罰を設けることはできないからです」

ーー秩序罰の場合、警察は取り締まることができないのでしょうか

「秩序罰は犯罪行為ではなく、刑法、刑事訴訟法の適用がありません。したがって警察が捜査することはできませんし、逮捕や捜索差押えを行うこともできません。路上での仮装や飲酒の結果として暴行事件や器物損壊事件などが発生して初めて、警察が取り締まることが可能となります。

したがって、路上での仮装や飲酒を禁止する条例を制定しても、それ程、大きな効果はないかもしれません」

(弁護士ドットコムニュース)

澤井 康生弁護士
元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。弁護士でありながらMBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士の資格も有し企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。現在、朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。東京、大阪に拠点を有する弁護士法人海星事務所のパートナー。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。

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