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小学生が線路に「置き石」、電車緊急停止…事故が起きれば親に巨額請求の可能性も
写真はイメージです(tarousite / PIXTA)

小学生が線路に「置き石」、電車緊急停止…事故が起きれば親に巨額請求の可能性も

兵庫県明石市のJR山陽線大久保ー魚住間の踏切で10月14日、線路上の置き石とみられる影響で、快速電車が緊急停止するトラブルが発生した。

報道によると、近くに停車していた車のドライブレコーダーに、小学生の男児とみられる2人が立ち去る姿が記録されていたという。

もしこの男児が線路上にわざと石を置いていたのであれば、刑事、民事の両面でどのような責任を問われる可能性があるのか。甲本晃啓弁護士に聞いた。

●危険往来罪や往来危険汽車転覆等罪になる可能性

「鉄道の線路への置き石は、脱線転覆事故につながり、ひとたび鉄道事故になれば多数の乗客が命の危険にさらされることになります。また、事故に至らないまでも置き石を踏むと、大きな音や振動が発生するため、運行をストップして列車の点検を行うなどの対応を余儀なくされ、利用者にも多大な影響を与えます。鉄道の運行情報で『異音確認』という理由を見かけますが、実は置き石が関連しているという場合もあるようです」

置き石はどのような犯罪になるのか。

「まず、置き石の刑事責任として、ある程度の大きさの石を置いた時点で往来危険罪(刑法125条1項:2年以上20年以下の懲役)が成立し、実際に転覆事故につながれば往来危険汽車転覆等罪が成立します(同127条、無期または3年以上20年以下の懲役)。

そして、事故により乗客や線路の周囲にいる人を死亡させた場合は、無期懲役や死刑という厳しい量刑が定められており、これは刑事罰では最も重い部類です。ただし、本件では犯人が14歳未満(刑事未成年)であるため処罰はされません」

●親が損害賠償責任を負う可能性が大きい

民事上の損害賠償責任はどうなるのか。

「民事責任としては、置き石により鉄道を故意に止めた場合には、止めた時間や影響範囲に応じて損害賠償義務が発生します(民法709条)。鉄道会社の運行妨害に対する意識も変化しつつあり、近年では厳格に対応するケースも増えているようです。

「国土交通省『平成28年鉄道車両等生産動態統計年報』によれば、近年製造の鉄道車両価格は1両あたり平均で9,000万円から1億円程度です。最近の車両は衝突時の安全性を考慮してクラッシャブル構造を採用しており、意図的に潰れやすくなっている部分があります。

事故になれば、軽微な脱線を伴う複数の車両が『全損』の扱いとなることが珍しくありませんので、損害額は大きくなります。もちろん、事故により人が死傷すれば、想像できないほどの額の損害賠償を求められることになります。

ただし、民事の賠償責任について責任能力(民法712条)が必要で、これは概ね12〜13歳程度から認められると言われています。他方で、このような場合、監督義務者である親が賠償責任を負います(民法714条)。

法律の規定上は親が子供に十分な監督義務を尽くしていれば免責されることになっていますが、判例では免責が認められた例はほとんどありません。したがって、本件では加害者の男児にかわり、親が列車の運行を止めたことについて、損害賠償責任を負う可能性が大きいでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

甲本 晃啓
甲本 晃啓(こうもと あきひろ)弁護士 甲本・佐藤法律会計事務所
理系出身の弁護士・弁理士。東京大学大学院修了。丸の内に本部をおく「甲本・佐藤法律会計事務所」「伊藤・甲本国際商標特許事務所」の共同代表。専門は知的財産法で、著作権と特許・商標に明るい。鉄道に造詣が深く、関東の駅百選に選ばれた「根府川」駅近くに特許事務所の小田原オフィスを開設した。

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