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「中国が『半端ない』攻勢をかけている」三田紀房さんが語る「漫画の未来」
「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」の様子

「中国が『半端ない』攻勢をかけている」三田紀房さんが語る「漫画の未来」

知的財産戦略本部の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」(タスクフォース)の第2回会合が6月26日、東京都内で開かれた。人気漫画『ドラゴン桜』や『インベスターZ』の作者として知られる三田紀房さんが、漫画家の立場から、ゲストスピーカーとして発言した。

三田さんは、漫画村など「海賊版サイト」の対策として、漫画家自身が、著作権を使ったアクションをとることは「現状、むずかしい」という認識を示した。一方で、自分たちの権利に関心をもつ漫画家も増えてきており、将来の漫画家を育むためにも、電子書籍分野を発展させることが重要だという考えを述べた。

●「漫画は非常に儲かって、右肩上がりの市場だった」

三田さんによると、出版権以外の著作権は、漫画家が持っているが、「漫画家の能力では、それらの権利を管理することはできない」ため、出版社に出版権以外の権利も委託する関係性になっているという。三田さんは「(漫画家は)ツイッターなどSNSで『海賊版をやめてください』と言うくらいしか、対応策がない」と話した。

タスクフォースの委員から、これまで漫画家が積極的に著作権管理をしてこなかった背景を問われると、三田さんは「漫画は非常に儲かって、右肩上がりの市場だったから」「著作権を考えなくても、ヒットすると、紙の媒体の売上だけで、十分な利益をあげれた時代がずっと続いたから」と答えた。

●「たくさん競争できる環境が、日本の漫画界を発展させてきた原動力だ」

一方で、昨今の電子書籍の活況から、自分たちの権利についての関心や、ビジネス感覚を持ちはじめた漫画家も増えてきたという。また、単行本の漫画の売上が年々減ってくる中で、漫画家の収入源として、電子書籍の割合が高くなっているという。三田さんの場合、2017年の収入のうち、電子書籍の売上が60%にのぼったそうだ。

「漫画界は、100人デビューして、成功するのはおそらく1人いるかいないかくらい。ある意味ギャンブルと言っていい世界だが、失敗した99人が非常に大事だと思う。たくさんデビューして、たくさん競争できる環境が、日本の漫画界を発展させてきた原動力だと思う。一部の天才が、ヒット作を生むだけでは、その分野は必ず衰退すると思う。

紙媒体で、非常に苦しくなってきた出版界だが、電子書籍という大きなビジネスチャンスが生まれてきた。それを発展させる仕組み、取り組みをしていってほしい。電子書籍の分野がさらに発展するように、漫画界も考えていきたい」(三田さん)

●「日本は、漫画の母国で、ルールを作った国だ」

三田さんはさらに「漫画界の将来」についても触れた。これからの国際競争の中で、「ライバルは中国になる」「中国の物量は、日本の比ではないというか、今流行りの『半端ない』攻勢をかけている」(三田さん)という。三田さんは、ゴルフとサッカーを例にあげながら、次のように説明した。

「ゴルフもサッカーも、イギリスが競技のルールをつくった。しかし、ゴルフはアメリカに市場を圧倒的に奪われてしまった。一方、サッカーは世界展開が非常にうまく、イギリスにも(世界最高峰の)プレミアリーグがあります。このビジネスモデルが非常にいい参考になる。

日本は、漫画の母国で、ルールを作った国だ。このルールを日本の最大の価値として、どうやって中国が席巻する市場で、その存在感を高められていけられるか。これが漫画界に課せられた次の大きな課題だと思う。電子書籍という新たなビジネスで体力を強化して、次世代の国際競争に打ち勝ってほしい」(三田さん)

(弁護士ドットコムニュース)

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