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2018年04月15日 09時46分

土俵の女人禁制「新しい伝統つくるべき」…太田弁護士、相撲協会の「無理解」を指摘

土俵の女人禁制「新しい伝統つくるべき」…太田弁護士、相撲協会の「無理解」を指摘
写真はイメージです(denkei / PIXTA)

4月4日に京都府舞鶴市であった大相撲の春巡業で、あいさつ中に倒れた多々見良三市長の救命処置をするため土俵にあがった複数の女性に対し、土俵から降りるよう行司が場内アナウンスを行ったことが問題になっている。

「『女人禁制』の伝統より、人命救助を優先すべきだ」などと批判が殺到。日本相撲協会の八角理事長は「行司が動転して呼びかけたものでしたが、人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くお詫び申し上げます」とコメントを出した。共同通信によると、市長はくも膜下出血で手術を行った。命には別条はなく、約1か月の入院が必要だという。

今回、「最悪の事態」は免れたが、もし行司の場内アナウンスによって救命処置が十分に施せず、市長が亡くなってしまっていたとしたら、どのような責任が生じるだろうか。太田啓子弁護士に聞いた。

●損害賠償責任にとどまらず刑事責任が生じた可能性も

ーーもし舞鶴市長が亡くなっていたとしたら、どのような責任が生じたでしょうか

「日本相撲協会が女性に土俵から降りるよう命じ、これによって十分な救命措置が施されず患者が落命するというような事態になっていた場合、救命行為を妨害したことが不法行為となって損害賠償責任を負うことになっていたでしょう。

過失致死罪のような刑事責任が生じた可能性もあり得ると考えます。人命を軽視するというのはそれほど重大な事柄で、人命尊重を上回る価値などないというのは当然のことです」

ーーこの問題についてどのように思いましたか

「そもそも、『土俵は女人禁制』というのが『伝統』と呼べるようなことなのかと歴史的経過を踏まえ疑問視する声もありますが、仮に『伝統』といえるほどの内実があったとしても、問われるべきなのは『伝統なのか、そうではないのか』ではなく、『今後も守り続けるべき伝統なのかどうか』です。

たとえばオリンピックは、現在では女性選手の活躍も華々しく、女性の出場を疑問視する人はいないが、古代オリンピックでは女性は出場してらず、1896年の第1回オリンピックには女性選手は出場していませんでした。

また、古代オリンピックでは、男性選手は裸で出場していたといわれます。そのような『伝統』を守るべきであったとはいえないですよね。その後の時代の状況の変化、現代的価値観にあわせて『伝統』とされてきた行事内容が変更されることはいくらでもあるし、また、そうすべきでもあります」

●日本相撲協会、批判の本質に「無理解」

ーー守り続けるべき「伝統」とは言い難いということですね

「土俵上は女人禁制というルールは、女性は穢(けが)れているという性差別的発想が根底にあり、その点においてもう覆されなければならない『伝統』です。女性が土俵から降りた後、土俵上に塩をまいて『浄めた』のではないかという批判もあり、これについては女性が土俵に上がったこととは関係ないという相撲協会の弁明もあるようです。

ですが、静岡市で行われた『子ども相撲』において、過去に参加したことがあるという女児が「女の子だから」という理由で参加を断られた、しかもそれは日本相撲協会からの指示であったという報道がありました。それを聞くと、日本相撲協会はなぜ批判を受けているのかという本質を理解していないのだろうと考えざるを得ません。

女児の参加について『女の子だから顔に怪我をして傷がついてはいけないと考えた』という弁明もしているという報道があり、これもまた、本質の無理解を露呈していると感じます」

ーー日本相撲協会にはどのようなことを望みますか

「性差別に無自覚で、それを『配慮だ』『尊重だ』といった美しい言葉でごまかそうとする発想こそが醜悪なのであって、日本相撲協会においては、厳しい批判を正面から受け止め、是非性差別とは縁をきって『新しい伝統』を創出してほしいと切望します」

(弁護士ドットコムニュース)

太田 啓子弁護士
2002年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、雇用関係を多く扱う。性差別、性暴力、「憲法カフェ」などをテーマに雑誌・テレビで発信し、政治を自由に語る場「怒れる女子会」も企画する。2児の子育てでも奮闘中。子連れでの法律相談も歓迎している。
共著に「これでわかった!超訳特定秘密保護法」(岩波書店)、「憲法カフェへようこそ」(かもがわ出版)。
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