男女の出会いの場として、年々、利用者を増やすマッチングアプリだが、中には既婚者も紛れ込んでいる。妻子のある男性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、アプリに登録していることが「私の元々の知り合い」にバレてしまい、「妻にバラす」と金銭を要求されていると質問を寄せた。
男性は「会ったかも相手が誰かもわかりません」としながらも、住所や子どもの名前など「向こうは私の詳しいこと」まで知っており、知人であることには間違いないようだ。妻にバラすのはやめて欲しいと伝えると「大人だからそれなりの対応をしろ」と迫られた。
最終的に「終わりにするから30万、銀行などで借りて用意しろ」と要求されている。現状、相手も特定できないが、相手の行為は何らかの犯罪に該当するのだろうか。山崎喜代志弁護士に聞いた。
●「脅迫罪」と「恐喝未遂罪」
「今回のケースを検討する上では、『脅迫罪』と『恐喝未遂罪』が考えられます。
脅迫罪(刑法222条)は本人又は親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加えるぞと脅すものです。しかし、『妻にバラす』は、この5つに該当することはなさそうです」
では、「恐喝未遂罪」はどうか。
「恐喝未遂罪(同249条、250条)は、害悪を加える対象は上記5つには限りません」
●お金を実際に払えば「恐喝罪」が成立する可能性も
今回のケースでは、該当する可能性があるのだろうか。
「相手側は、相談者を脅して金品を要求しています。ただ、恐喝未遂罪と認られるためには、要求に応じなければ危害を加えられるかもしれないという脅しの強さが必要です。
単に威圧感を覚えるとか嫌がらせといったものは該当しません。『マッチングアプリ登録を妻にバラす』ことは、特段の事情がない限り、恐喝に該当する程度の強い脅しとはいえず 、単なる嫌がらせと判断されるケースが多いかと思います。
ただ現実にお金を支払ってしまえば、強い脅しがあったとして『恐喝罪』が成立する可能性はあります」
相談者はどう対応するべきか。
「相手側の主張に応じず、一切、相手にしなければ良いでしょう。ただ、相手がそれでも連絡をし続ける場合があります。そのときには、速やかに、弁護士に相談するのがよいと思われます」