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「つみたてNISA」非課税メリット大きいけど・・・証券保有者7割超「知らない」 
金融庁ホームページより

「つみたてNISA」非課税メリット大きいけど・・・証券保有者7割超「知らない」 

政府は2月16日に閣議決定した「高齢社会対策大綱」で、「つみたてNISA」の普及を掲げた。「ゆとりある高齢期の生活を確保するためには計画的に資産形成を進めることが重要」であるため。利用者を増やすよう、国家公務員が自ら率先し、「職場つみたてNISA」を導入することも明記された。

つみたてNISAなど少額投資非課税制度は、一定の場合に投資で得られる利益に税金がかからない仕組みだ。近年、金融庁により整備されてきた。概要は以下のとおりだ。

<NISA>非課税投資枠の上限が年間120万円、投資年から最長5年間が非課税

<ジュニアNISA>同・上限が年間80万円、子や孫を対象。18歳まで引き出し不可

<つみたてNISA>同・上限が年間40万円、一部の投資信託が対象。非課税期間は20年間

例えば、つみたてNISAで、年間40万円の上限まで投資信託を購入し、それを20年間続けたら元本の合計は800万円。仮に運用利回りが1.0%だったら、運用益は85万5236円になる。通常は20.315%の税率がかかり、17万3741円を納税しなければいけないが、つみたてNISAなら非課税で運用益はそのままもらえる。得られる税制上のメリットは大きい。(20.315%の内訳は、所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

●「知らない」「申し込むつもりない」・・・まだまだ低い知名度

高齢社会対策大綱によれば、政府は、国家公務員が職場つみたてNISAを活用するよう積極的なサポートをするという。国家公務員への広がりを呼び水に、地方公務員や民間企業へ普及させていく狙いがある。背景には、知名度がまだ低いことへの危機感があるようだ。

金融庁や証券会社にとっては、日本証券業協会が2017年10月にまとめた意識調査の結果は悲しいものだったに違いない。

それによると、つみたてNISAを利用する意向がある人の割合は13.6%にとどまり、非課税となる期間や名称などについて「いずれも知らない」と答えた割合は74.1%に達していた。ジュニアNISAに至っては「申し込むつもりはない」と答えた割合が81.7%。NISAは61.6%が開設しており、26.5%が「申し込むつもりはない」とした。

ちなみに、この調査は証券を保有する約5千人が対象となっている。証券投資をしない層にも意識調査の対象を広げれば、さらに厳しい数字が出るとみられる。

●制度の恒久化や非課税枠の拡大など改善点まだ

金融庁によれば、2016年末の家計金融資産の構成比では、日本は現預金の割合が51.7%で、米国(13.7%)や英国(24.0%)と比べ高水準だ。「近年の推移を見ても、我が国における現預金優位の状況は大きく変わっていない」(金融庁)という。

一方、株式・投信投資割合(間接保有含む)は、日本(18.6%)、米国(46.2%)、英国(37.5%)だ。政府は「貯蓄から投資へ」という方針を掲げて久しいが、家計の資産構成はたいして変わらず、さほど投資に振り向けていないのが実態とみられる。

NISA、ジュニアNISA、つみたてNISAという3つの少額投資非課税制度が「貯蓄から投資へ」を実現する牽引役となれるのか。近年は超低金利が定着し銀行に預金しても利息は「スズメの涙」ほど。「ならば少額投資非課税制度を使おう」という機運はもっと高まってもいいはずだ。

制度の恒久化や非課税枠の拡大をはじめ、NISAとつみたてNISAが同時に併用できないなど、改善の余地は依然として残っている。制度の知名度を上げることに加え、投資家にとってさらに使い勝手がいいものとなるかどうかが課題となりそうだ。

●税理士「投資ゆえ損失が出ることも認識を」

NISAに関する相談も受けることがある佐藤全弘税理士は次のように語る。

「2014年1月からスタートしたNISAですが、あまり定着しないまま、2018年1月からはつみたてNISAとの選択となり、ますます複雑化している印象があります。投資初心者にとってはNISAの特徴である株式売却益の非課税を有効活用するにはどのようにしたらいいのかとの相談が寄せられます。

NISAは、投資対象となる金融商品が多く比較的使い勝手がいいですが、一方、つみたてNISAは一定の要件を備えた投資信託等に限られます。比較的低コストの商品が揃えられているとはいえ、積み立て・長期保有となると信託報酬等の保有コストが気になるところ。ジュニアNISAは、投資対象となる金融商品はNISAに近いものの、何と言っても原則18歳まで払い出し制限があるため注意が必要です。

最後に、いずれのNISAも売却益は非課税ですが、売却損は無かったものとされ、損益通算の対象とならず、また、譲渡損失の繰越控除もできません。NISAは非課税であることばかりが注目されがちですが、投資ゆえに損失がでることも考えないといけません」

【取材協力税理士】

佐藤 全弘(さとう・まさひろ)税理士

お客様の立場にたって、わかりやすい税金を目指すとともに付加価値の高いサービスを提供することをモットーとしてお客様のニーズに応えられるパートナーを目指します!

事務所名 : 佐藤全弘税理士事務所

事務所URL:http://satouzeirishi.com/

(弁護士ドットコムニュース)

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