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丸岡アナ「代理出産」で第1子誕生…法整備、10年以上前の最高裁決定から議論進まず
ブログで長男誕生を報告した丸岡いずみさん

丸岡アナ「代理出産」で第1子誕生…法整備、10年以上前の最高裁決定から議論進まず

フリーアナウンサーの丸岡いずみさん(46)と映画コメンテーターの有村昆さん(41)夫妻に第1子となる長男が誕生した。不妊治療の末、2人が選んだのは、夫婦の受精卵を用いたロシアでの代理出産。祝福の声と同時に、法整備を求める声もあがっている。

たとえば、お笑いコンビ「ハイヒール」のリンゴさん(56)は、フジテレビ系「ノンストップ!」(1月23日)で、代理母が子どもの引き渡しを拒否したり、逆に依頼者が引き取らない問題などに触れた。日本テレビ系「スッキリ」(1月24日)でも、大沢あかねさんら出演者が「法整備が必要」とコメントしている。

日本では法律上、代理出産は禁止されていないが、日本産科婦人科学会が「自己規制」の立場を取っているため、希望者は制度がある国に渡るケースが多い。

一方、民法では代理出産が想定されていないため、親子関係に混乱が生じかねない状況がある。最高裁は2007年3月、海外の代理出産の場合でも、実子としての届出を認めない判断を下した。同時に、「立法による速やかな対応が強く望まれる」としたが、10年以上たつのに、議論は進んでいない。

●現状は代理母が母という法解釈…養子縁組・特別養子縁組で親子関係へ

2007年の最高裁決定の当事者になったのは、元総合格闘家の高田延彦さんとタレントの向井亜紀さん夫妻だ。

2人のもとには2003年、米国ネバダ州在住の女性を代理母として、双子の男児が誕生。夫妻の受精卵を用いたもので、夫妻は米国の裁判所で親子関係の手続きをして帰国した。しかし、日本では夫妻の実子とする出生届が認められず、裁判になった。

最高裁の判断は、日本の民法にのっとり、代理出産では嫡出子(結婚している夫婦の間に生まれた子)とは認められないというもの。日本の「公の秩序」に反するため、外国の裁判所で親子と認められても、無効になるとした(民事訴訟法118条3号)。

結局、高田・向井夫妻は、双子について、代理母との法律上の親族関係を消滅させる「特別養子縁組」を成立させることになった。

●厚労省、法務所では議論が休眠状態 議員立法も停滞中

この最高裁決定では、判断について「現行民法の解釈としては」と注釈をつけ、「代理出産については法制度としてどう取り扱うかが改めて検討されるべき」と述べている。しかし、今も立法のめどはたっていない。

代理出産をめぐっては、かつて厚労省と法務省で議論が進められていた。2008年には、法務大臣と厚生労働大臣の諮問を受けた、日本学術会議が報告書を発表している。

報告書では(1)代理出産は原則禁止、(2)先天的・後天的に子宮を持たない女性については、試行的実施は考慮されてよい、(3)法律上は出産した女性を母とする、などの提言がされている。

ところが、厚労省では日本産科婦人科学会が、代理出産について禁止の立場のため、「判断を尊重している」(厚労省雇用均等・児童家庭局)として議論は事実上終結しているという。

一方、法務省では、厚労省の議論が止まったことで、「代理出産に限らず、生殖補助医療によってどういう状況が考えられるのか、という議論の前提が整えられず、休眠状態になっている」(法務省民事局)。

●議員立法の道模索も…政局のために保留

現在、自民党では、医師・弁護士の古川俊治参議院議員を座長とする「生殖補助医療に関するプロジェクトチーム」が議員立法の道を探っている。

2016年には、生殖補助医療について「出産した女性を母とする」案が、自民党の法務部会・厚生労働部会で了承され、政調審議会・総務会を通れば、国会に法案として提出できる状態まで来た。

しかし、議員立法は、内閣が提出する閣法と違い、審議が後回しになる傾向がある。古川事務所によれば、「限られた時間で審議を進めるためには野党の合意が必要。今は野党がバラバラで、誰に話をすれば良いかも分からない」ことから、保留になっているという。

●放置したままで良いのか

許可している国がある以上、代理出産は今後も利用され続けるだろう。日本でも、諏訪マタニティークリニック(長野県)では10例以上の代理出産が報告されている(HPによると、現在は新規相談を受け付けていない)。

速やかな立法を求めた最高裁決定から10年。子の福祉や医療法、倫理面など検討すべき内容は多いが、そろそろ放置したままでいるわけにはいかないはずだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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