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国政選挙4度目の「ネット選挙」、フェイクニュースが流れた場合の法的問題は?
写真はイメージです(ふじよ / PIXTA)

国政選挙4度目の「ネット選挙」、フェイクニュースが流れた場合の法的問題は?

9月28日に衆議院が解散され、10月22日の投開票に向けて事実上の選挙戦に突入することとなった。小池百合子・東京都知事が代表を務める「希望の党」を中心にした野党再編の影響もあり、様々な情報が飛び交うことになりそうだ。

今回の衆院選は、2013年の公職選挙法改正でインターネット選挙運動が解禁されてから、4度目の国政選挙となる(これまでに衆院選1回、参院選2回)。

ツイッターやフェイスブックなどのSNSで、有権者も簡単に選挙運動ができる一方、有権者も公職選挙法のルールをきちんと守る必要があり、違反すれば罰則もある。

また、2016年のアメリカ大統領選挙などで、インターネットを通じて、偽のニュース(フェイクニュース)が流れたこともあり、今回の選挙でもデマや誤情報などが流れないかどうかが懸念されている。

ネット選挙ではどんなことに注意すればいいのか。また、フェイクニュースが流れた場合、どのような法的問題が発生しうるのか。深澤諭史弁護士に聞いた。

●候補者の名誉を毀損しないこと

まず、ネット選挙の注意点はどのようなものか。

「大まかにいえば、次の2点に気をつけるべきでしょう。

(1)候補者の名誉を毀損(きそん)しないこと(2)公選法の細かい規定に違反しないこと」

深澤弁護士はこうポイントを指摘する。具体的にはどういう問題があるのだろうか。

「まず(1)については、ネット選挙に限ったことではありませんが、特に選挙運動期間中、各候補者は警戒しています。

もちろん、自分の支持候補を応援しようとする気持ちはわかります。しかし、その思いが暴走して、ライバル候補の名前をあげるなどしたうえで、『犯罪者!』『税金泥棒!』『嘘つき!』と不穏当な表現で書き込むことは慎むべきです。

なお、公職の候補者に対する名誉毀損については、『真実であることの証明があったときは罰しない』という特例がありますが、その証明は根拠に基づくものが必要であり、単に『みんなそういっている!ネットに書いてあった!』というだけでは足りません。難しい問題もあり、そう簡単に責任は免除されるものではないと肝に銘じるべきです」

●連絡先の明記が本来は必要

また、深澤弁護士は「連絡先」が重要だと指摘する。

「特に気になっているのは、『連絡先の明記のない』選挙運動です。主に、匿名掲示板で散見されますが、ネット選挙においては、メールアドレスなど連絡先の明記が本来は必要です(公選法142条の3第3項)。

ですから、匿名掲示板に連絡先の記載もせずに、『●●候補に投票しよう!』と投稿してはいけません。逆に、匿名であっても、連絡手段が明記されていれば、問題はありません」

さらに、候補者の「なりすまし」も起こりうるという。

「勝手に候補者名のアカウントを作成してツイートする『なりすまし行為』は禁じられています(公選法235条の5)。また、候補者の発言を自動ツイートする『bot』を作成する行為も『なりすまし行為』として禁じられる可能性が高いでしょう」

●フェイクニュースで発生しうる法的問題

2016年のアメリカ大統領選では、様々なフェイクニュースが飛び交い、例えば、クリントン氏が、ワシントンのピザ店を児童の性的虐待拠点として運営しているとの虚偽情報が流れたこともあった。日本でもフェイクニュースについての関心が高まりつつあるが、虚偽情報を流した場合の法的責任はどうなるのか。

「候補者について虚偽の事実を公表したり、あるいは、真実をゆがめて伝えたりすると、公職選挙法違反の罪が成立します(公職選挙法235条)。

フェイクニュースは、まさに、虚偽の事実そのものですから、この罪に問われるケースも出てくるのではないか、と思います。

もっとも、フェイクニュースを拡散する人が、『フェイクニュースであることを知らない』場合には、罪に問うことは難しい場合もあるかもしれません。

なお、プロバイダ責任制限法に特例が設けられており、選挙関連の情報については、候補者側からの迅速な削除請求が可能になっています。ですから、候補者側としては、迅速な対処ということがフェイクニュースに対抗するポイントであると思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

深澤 諭史
深澤 諭史(ふかざわ さとし)弁護士 服部啓法律事務所
明治大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了。IT関連事件、ネット上の表現トラブル、刑事弁護、弁護士法令問題などを中心に取り扱う。主な著書に「弁護士の護身術」「まんが 弁護士が教えるウソを見抜く方法」「その「つぶやき」は犯罪です」、「弁護士のための非弁対策Q&A」「Q&A弁護士業務広告の落とし穴」「インターネット権利侵害Q&A」。

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