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性同一性障害、海外では「手術なし」で性別変更できる国も…日本ではどうすべき?
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性同一性障害、海外では「手術なし」で性別変更できる国も…日本ではどうすべき?

性同一性障害と診断された岡山県の臼井崇来人さん(43)が、「性別適合手術」を受けずに、戸籍上の性別を変更するよう求めた家事審判で、岡山家裁津山支部は2月上旬、申し立てを却下した。臼井さんは、戸籍上の性別を変更するのに「性別適合手術」を義務付けた性同一性障害特例法は違憲だと主張していた。

報道によると、臼井さんは女性の体で生まれて、現在は男性として生きるトランスジェンダー。39歳のころ、性同一性障害の診断を受けたという。戸籍上の名前は変えたが、手術への抵抗感や、身体的特徴で性別が判断されることに納得できず、手術は受けていない。

海外では、手術を受けなくても、性別変更ができる国がある。北欧のノルウェーでは、性別適合の手術を受けなくても、6歳から法的な性別を変更できる制度が昨年7月から始まり、昨年7月〜12月の6カ月間で、490人が性別変更をおこなったという。

日本では、戸籍の性別を変更するためには、複数の要件が定められており、その1つに性適合手術が含まれている。だが、手術にリスクがともなうことなどから、現行の性別変更のための要件を見直すべきという声があがっている。どう考えるべきか、LGBT問題にくわしい前園進也弁護士に聞いた。

●「手術まで望んでいない人にとって酷な条件だ」

「性同一性障害者特例法には、生殖腺喪失・生殖機能喪失(同3条1項4号)、外性器(同5号)の要件が定められています。つまり、『性別適合手術』を要件としていますが、私は見直すべきだと考えます。

この要件がある以上、当事者は、手術をするか、法律上望まない性別で生きるかの選択を強いられます。経済的な理由などで手術を受けられない人や、手術までは望んでいない人にとっては、酷な要件となるからです。

そもそも、手術を要件とされている理由は、端的にいうと、『手術をせずに法律上の性別の変更を認めると、周囲の人々や社会が混乱するので、それを避ける』ということです。

たとえば、女性としての生殖機能を残しつつ、法律上、男性に変更できるとすると、法律上の男性が出産することが起こりえます。また、外性器を手術しないと、男性器のある女性が女湯に入ったり、男性器のない男性が男湯に入ったりということが起こりえます。

しかし、このような混乱が日常生活で生じるとしても、その範囲は限定的だと思います。

たとえば、男性が出産することになっても、混乱が生じるのは妊娠から出産、せいぜい卒乳の時期までです。また、性別を変更したいと望んでいる人の多くは、無用な混乱を生じさせたくないと思っているでしょうから、公衆浴場や更衣室などでは、タオルなどで下半身を隠すのではないでしょうか。

このような混乱が限定的であれ日常生活で生じたとしても、最初は驚くでしょうが、慣れて、めずらしくなくなれば、混乱は生じなくなるでしょう。しかし、手術要件があり続けるかぎり、それで苦しむ人々は今後も苦しみ続けます。どちらを優先するかは、明らかだと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

前園 進也
前園 進也(まえぞの しんや)弁護士 アーネスト法律事務所
作家・伏見憲明さんから多大な影響を受け、LGBTに対する法的支援をライフワークとして取り組んでいます。LGBT支援法律家ネットワーク、同性婚人権救済弁護団等に所属。

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