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2016年12月31日 09時30分

ギャンブル依存対策、カジノで「マイナンバー」活用案…どんな課題があるのか

ギャンブル依存対策、カジノで「マイナンバー」活用案…どんな課題があるのか
写真はイメージです

カジノを解禁する統合型リゾート施設(IR)整備推進法が12月26日、公布・施行された。法律には、ギャンブル依存症対策など、カジノ利用者が悪影響を受けることを防止する措置をとる旨が記されている。ギャンブル依存症に対する懸念が根強いが、自民・公明両党はその対策として、マイナンバーの活用を検討しているようだ。

厚生労働省の調査(2013年)によると、ギャンブル依存症の疑いのある人(パチンコ・スロットを含む)は、全国で約536万人と推計されている。日本経済新聞によると、政府・与党は、ギャンブル依存症対策として、過去に依存症と診断された人や依存症の疑いのある人の入場回数を制限したり、入場を禁止する制度を検討している。

具体的には、マイナンバーを活用して、カジノの入場回数などを管理する方法だという。カジノ解禁をめぐって、ギャンブル依存対策として、マイナンバーを活用することは法律上可能なのだろうか。マイナンバー制度にくわしい水町雅子弁護士に聞いた。

●「マイナンバー」利用と「マイナンバーカード」利用をわけて考える

「『マイナンバーを活用』といわれる場合であっても、(1)マイナンバーそのものを利用する場合と、(2)マイナンバーそのものは利用せずにマイナンバーカードのみを利用する場合にわけられます。

まず、(1)マイナンバーそのものを利用する場合についてですが、マイナンバーは法令上利用できる場合が限定列挙されています。現行の法律では、ギャンブル依存症対策にマイナンバーを利用することはできないので、ギャンブル依存症対策に利用する場合は、法改正が必要となります。

次に、(2)マイナンバーカードだけを利用する場合は、総務省の認定を受けるなどの必要はありえますが、カードの提示を受けるカジノにおいて、十分なセキュリティ対策を講じれば、法改正をおこなわずにマイナンバーカードを利用することも考えられます」

●「多くの人に納得してもらわないと難しい」

そもそも、マイナンバーカードを活用すべきだろうか。

「マイナンバーカードをピッとタッチすると、機械でマイナンバーを読み取られていると思いがちですが、実はマイナンバーを読み取らない場合も多いです。

政府ではマイナンバーカードを健康保険証、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカードなどとして活用することを検討していますが、これらもカジノと同様、マイナンバーを読み取らないことが想定されます。

一方で、いくら機械で読み取らないといっても、マイナンバーカードにはマイナンバーが記載されているため、抵抗を感じる人も少なくないのではないか。

「マイナンバーが他人に知られても、すぐに、自分の重要情報を暴かれたり検索されたりするものではありません。しかし、『マイナンバーを他人に知られても怖くない』『マイナンバーカードをタッチしても重大情報が読み取られるわけではない』ということを、多くの人に納得してもらわない限り、普及は難しいのではないでしょうか」

●「多くの人の直感とは違う仕組みになっている」

一方で、マイナンバーカードには多くのメリットもあるとされている。課題をどうとらえるべきか。

「マイナンバーカードは、今後のIoT社会などを踏まえると、社会や多くの方に便利さを提供する可能性のある仕組みです。ネットのログインにマイナンバーカードを活用すれば、ユーザID・パスワードでのログインよりも安全性が高まります。役所などに行かず自宅でさまざまな手続きができるなど、いろいろな展開が考えられるカードです。

軽減税率の際も、マイナンバーカード活用が話題にのぼりましたが、軽減税率やカジノ入館の申請を紙で都度おこなうより、ICカードで電子的におこなう方が、利便性向上、事務作業の軽減・効率化・正確化につながります。

マイナンバーカード以外にも、今の日本にはさまざまなICカードがありますが、多くは民間企業の発行するカードです。この点、マイナンバーカードは、公的機関が厳格な本人確認のうえで交付するカードですので、他のカードにくらべて、なりすましリスクを低く抑えられます。今後も国が何か新しい施策を検討する際に、マイナンバーカードが話題にのぼることが考えられます。

ただ、マイナンバー制度はある種、技術的な制度であるため、『マイナンバーカードを使うのにマイナンバーを使わない』『マイナンバーがわかってもすぐに他人に重大情報を知られはしない』といった点をはじめ、多くの人の直感とは違う仕組みになっていることも事実です。多くの人が安心してマイナンバーやマイナンバーカードを便利に使ってもらうように、政府の丁寧な説明と地道な実績の積み重ねが必要だと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

水町 雅子(みずまち・まさこ)弁護士
内閣官房にて、マイナンバー制度の立案作業、マイナンバー法案の立法作業、指針・ガイドライン等の案文作成作業を担当。マイナンバー・個人情報に関する著書・論文等多数。日本経済新聞社、2015年企業が選ぶ弁護士ランキング情報管理分野第5位。弁護士登録前にシンクタンクでSE、ITコンサル等を経た経験から、マイナンバー、個人情報以外にも、ITシステム開発紛争等をはじめとするIT法を専門とする。その他、企業法務、行政法務全般を扱う。ITをめぐる法律問題についてブログを執筆している
(http://d.hatena.ne.jp/cyberlawissues/)。
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