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「しつけ」で子どもを山に置き去り、親の行為は法的に問題ないのか?
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「しつけ」で子どもを山に置き去り、親の行為は法的に問題ないのか?

北海道七飯(ななえ)町の山林で5月28日夕方から、小学2年生の男の子(7)が行方不明になっている。報道によると、両親が「しつけのため」として、山中で車から降ろして数分後に戻ったところ、男の子の姿が見えなくなっていたのだという。警察や消防などは30日も引き続き捜索活動をつづけている。

男の子の両親は当初、七飯町の山林で「山菜採りをしていてはぐれた」と説明した。その後の警察の調べに、「しつけのため車から降ろして山に置き去りにした」「数分後に戻ったが見つけることができなかった」と話したという。

山菜採り中にはぐれたと説明したことに対して、父親は「世間体を気にした」「申し訳ない気持ちでいっぱい」とわびたそうだが、今回のように、親が「しつけ」として、子どもをどこかに置き去りにする行為は法的に問題ないのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。

●刑法上は保護責任者遺棄罪の可能性

「ご両親の説明のとおり、『しつけ』として、車から降ろして置き去りにしたけれど、戻ったらいなくなっていたということだとすれば、大変痛ましい事件です。何よりも、男の子が無事に見つかることを祈りたいと思います」

秋山弁護士はこう切り出した。法的には問題ないのだろうか。

「親権者には、子どもをしつける権利があり、監護・教育に必要な範囲内で子どもを懲戒すること、つまり懲らしめることも認められています(民法822条)。

しかし、その年齢の子どもを1人にしては危険な場所に、『置き去りにされた』という不安を与えるかたちで置き去りにすることは、正当なしつけの範囲を超えてしまっています。

刑法上は、保護責任者遺棄罪(刑法218条)の問題が出てきます」

保護責任者遺棄はどんな罪なのだろうか。

「幼年者を保護する責任のある人が、幼年者を遺棄した場合、3カ月以上5年以下の懲役にあたる罪となります。

遺棄の結果、幼年者が死傷した場合、さらに重く処罰されることになります(傷害の場合3カ月以上15年以下の懲役、死亡の場合3年以上20年以下の懲役)。

『遺棄』したといえるかの判断の際には、子どもを置き去りにした現場がどのような危険のある場所だったか、置き去りにした時間がどの程度だったかが当然問題になります。

また、犯罪の『故意』の問題として、保護者が、現場に置き去りにした場合に子どもに危険がおよぶ可能性があることを認識していたかどうかも問題になります」

今回の事件についてはどうだろうか。

「報道によると、現場付近は、起伏のある斜面や沢が入り組んでいる山林とのことです。7歳の男の子が置き去りにされれば、不安を感じるでしょう。パニックになってしまい、車を追いかけて道に迷ってしまうような可能性も否定できないのではないでしょうか。

ご両親は、お子さんにこわい思いをさせて、悪いことをしないように思い知らせるつもりだったのかと思いますが、現場を離れている間に、子どもの身に危険がおよぶ可能性を軽視してしまったのかもしれません」

秋山弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

秋山 直人
秋山 直人(あきやま なおと)弁護士 秋山法律事務所
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は四谷にあり、不動産関連トラブルを中心に業務を行っている。

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