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仮想通貨「貨幣の機能」認定へ 「最低限の規制枠組みはできた」金融法務弁護士が分析
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仮想通貨「貨幣の機能」認定へ 「最低限の規制枠組みはできた」金融法務弁護士が分析

政府は3月4日、これまで「モノ」と見なしてきたビットコインなどの仮想通貨に「貨幣の機能」を持つと認定する法規制案を閣議決定した。資金決済法を改正する方針だという。

報道によると、仮想通貨の取引所は登録制とし、金融庁が監督官庁になる。法改正案には「仮想通貨」の定義として、2点を明記。1つは物品購入などに使用できる「交換の媒介」の機能。もう1つが不特定を相手にした購入や売買を通じて「法定通貨と交換」できることだ。

今回の動きをどう見ればいいのか。金融法務に詳しい片岡義広弁護士に聞いた。

●仮想通貨の本体は電子的な「財産的価値」

「まず、今回、仮想通貨が貨幣として『認定』されるといった一部報道がありましたが、厳密にいうと法的には誤りです。正確には、次のようなことです。

(1)ビットコインなどの仮想通貨が支払手段として利用され、または通貨(法定通貨)と交換する業務が規制法の対象となる

(2)その結果、仮想通貨が経済的に事実上貨幣と同様の機能を有することを法律上は「財産的価値」という用語で認知したこととなる

したがって、仮想通貨の本体は、『モノ』でも『通貨』でもありません。依然として、電子的手段による一般的な「財産的価値」ということになります。この点は、今までと位置付けに変化はなく、ただ、部分的に通貨と同じ機能を認めて、それに必要な規制をするということです。」

片岡弁護士はこのように指摘する。規制の対象になるのはどんなことだろうか。

「今回予定される主な法規制は、大きく金融法制と警察法制に分かれます。

金融法制として、(1)登録制による新規参入の規制、(2)自社の資産と顧客の資産を分けて管理する分別管理義務、(3)分別管理に対する外部監査、(4)利用者保護措置に係る行為規制。

警察法制として、本人確認義務と疑わしい取引の届出義務です。

これにより、最低限度の規制の枠組みはできることになるでしょう」

●消費税課税の問題が残されている

仮想通貨をめぐる法規制として、今回の改正で規制は十分なのか。

「残された大きな課題としては、消費税課税の問題があります。適用除外規定のある支払手段や通貨については、その譲渡について消費税は課されません。

一方で、仮想通貨は法定通貨としての通貨ではないし、支払手段として機能はしても、消費税法上に適用除外規定がありません。

そして、仮想通貨も価格がついて取引がされている以上は、今回の規制法を待つまでもなく、また、今回の法案が「財産的価値」と表現しているように、消費税法4条1項が定める『資産』にあたります。

そのため、事業者が仮想通貨を譲渡した場合、現在の法形式上は、消費税を課されざるを得ません。

しかし、仮想通貨の経済的実質が支払手段または通貨と同様の機能を有するものである以上は、税法の実質課税の原則と消費税課税の趣旨に照らせば、その担税力(税を負担する能力)がないというべきでしょう。

そのため、立法論としては、仮想通貨の譲渡について消費税は課すべきではないと考えています。

そこで、通達措置または法令改正により、非課税とされるべきでしょう。麻生財務大臣の本年2月5日の国会答弁も、将来の非課税化に含みを残したものとも考えられます」

他にも残された課題はあるのか。

「仮想通貨を送金手段に用いる場合には、銀行法や資金決済法の『為替取引』に該当するかという点が問題になりうるでしょう。この法的論点については、金融法務事情誌で詳しく論じましたが、この点の明確化も実務上問題となってくると思います。その他、取引が活発になるにつれて様々な課題が想定されます。

また、別次元の問題ではありますが、社会の注目を集める金融商品が現れたときは、必ずそれを騙った詐欺事件が多発します。仮想通貨についても、その例外ではないでしょう。そうした事件の摘発と撲滅による発生抑止が望まれます」

片岡弁護士はこのように分析していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

片岡 義広
片岡 義広(かたおか よしひろ)弁護士 片岡総合法律事務所
あらゆる国内金融法務を手掛ける。2015年および2016年、Banking and Finance LawとStructured Finance Law分野でBest Lawyers in Japanに選ばれる。仮想通貨の我が国の多方面の法適用につき、金融法務事情1998号等に詳細な論文を書く。

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