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グーグルの利用規約について注意すべきこと

グーグルの利用規約について注意すべきこと

インターネット検索サービスやメールサービスなどを提供するグーグル(本社米国)が、今年3月に利用規約を全サービス共通のものに変更した。無料で利用することができる優れたサービスを多数提供しているグーグルだが、ユーザー数が非常に多いため利用規約の変更は多くの人に影響を与えることになる。法律の観点から、ユーザーは利用規約についてどのようなことに注意するべきなのだろうか。

例えば、ユーザーは「Googleドライブ」というサービスを利用することで、オンライン上に様々なファイルを保存することができる。ところがグーグルの利用規約を確認すると、ユーザーが保存したデータは、サービスの運営、プロモーション、改善、および、新しいサービスの開発に目的が限定されるものの、グーグルにも使用権限があるという内容になっている。文言だけみれば、新たな事業の企画案をまとめたファイルをGoogleドライブに保存した場合に、その内容をグーグルが利用して事業化しても問題ないと解釈することも可能だ。

インターネットビジネスや著作権に詳しい福井健策弁護士に、利用規約について見解を聞いた。

「実は、グーグルに限らず、外資系を中心に多くのネット系サービスの規約はかなり一方的にサイト側に有利に組みあがっています。かつてネット規約を比較したコラム(※)を書きましたが、むしろSNSや動画投稿サイトでは公開が想定された場である分、ユーザーのコンテンツについてグーグルの規約以上に強い、全世界半永久の使用権を取るような内容の規約になっていることも珍しくありません。」

「今回の問題は、グーグルは利用規約を全サービスで共通化しているため、例えばGoogleドライブのようにストレージという『私的空間』に置いたコンテンツであるにも関わらず、必要以上に広範な権利をサイト側が得ているようにも見える点です。仮にグーグルが『悪い意図はない』と説明しても、不安を覚えるユーザーは多いかもしれません。」

「こうした利用規約について、ほとんどのユーザーは無頓着に、あるいは(どうせ拒絶はできないと感じて)否応なく『同意』している状態です。日本の政府もこうした海外プラットフォームの活動について、国内ユーザーやベンチャー保護のために積極的に動こうという姿勢はやや希薄に思えます。これは、情報社会の未来を左右する大きな問題です。ネットの自由やユーザーの権利について警鐘を鳴らす『ウォッチドッグ』的な民間活動の活発化など、社会全体での取り組みが必要でしょう。」

もちろんこのような利用規約が気になるユーザーは、規約に同意せずにサービスを利用しなければよいという考え方もあるが、利用規約は随時変更される可能性がある。例えば仕事でグーグルのサービスを頻繁に利用していた場合に、利用規約に同意しないことでこれまでの仕事のデータも使用できなくなる、あるいは業務効率が著しく低下するといった場合には、実質的に規約の変更に同意せざるを得ないというような状況は起こり得るだろう。

今年3月にはグーグルの検索サービスの「サジェスト機能」によってプライバシーを侵害されたとして、日本人男性が米国のグーグル本社に表示差し止めを求める仮処分申請が東京地裁で認められたが、グーグルは米国法で違法が認められない限り対応しないことを表明し、グーグルを相手取った訴えを起こしたとしても、日本国内の裁判だけで決着することは難しいことが浮き彫りになった。

グーグルが提供するサービスのように特に多くのユーザーが利用しているものについては、福井弁護士がいうように、ユーザーに著しく不利な利用規約になっていないかなど、社会全体で関心を持ち続けることが重要になりそうだ。

(※参考リンク)
福井健策「規約間競争が始まる? FacebookやTwitterなど人気サイト利用規約を読み比べる 」
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/20110729_463750.html?ref=rss

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

福井 健策
福井 健策(ふくい けんさく)弁護士 骨董通り法律事務所
骨董通り法律事務所 代表 弁護士・ニューヨーク州弁護士。日本大学芸術学部・神戸大学大学院・iU ほか 客員教授。専門はエンタテインメント法。内閣府知財本部・文化審議会ほか委員。「18歳の著作権入門」(ちくま新書)、「ロボット・AIと法」(共著・有斐閣)、「インターネットビジネスの著作権とルール(第2版)」(編著・CRIC)など知的財産権・コンテンツビジネスに関する著書多数。Twitter:@fukuikensaku

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