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遠隔操作事件「プライバシーを過度に暴き立てる報道は問題」 落合洋司弁護士の見解

遠隔操作事件「プライバシーを過度に暴き立てる報道は問題」 落合洋司弁護士の見解

遠隔操作ウイルスに感染したパソコンから犯罪予告が書き込まれた事件。警視庁などの合同捜査本部は2013年2月10日、威力業務妨害の疑いで男を逮捕した。新聞やテレビの報道は、鬼の首を取ったかのような勢いで、被疑者が猫カフェでくつろいでいる様子まで報じたが、ネットでは「過剰報道」と批判する声も出ている。

逮捕された男は今のところ、容疑を否認していると伝えられている。この遠隔操作事件では「誤認逮捕」が相次いだが、今回の逮捕もまた誤認である可能性がないとは言い切れない。そのような点からすれば、捜査や報道は、より慎重さが求められるといえるのかもしれない。

では、今回の事件で「真犯人」を名乗る人物から犯行声明のメールを送られた「当事者」の一人であり、元検事として警察の捜査の内情をよく知る落合洋司弁護士は、これまでの「捜査と報道」の経過をどのように見ているのだろうか。その見解を聞いた。 

●「逮捕された被疑者が真犯人かどうかは、まだ断定できる状況ではない」

――逮捕からここまでの「警察の動き」を見ていて、どう思いますか? また、今後の「捜査の焦点」はどこにあるのでしょうか?

「真犯人が匿名化ソフトを利用するなどしていたことで捜査の難航が伝えられていた中、今年1月になり真犯人が大きく動きました。最後のメールにより判明した猫の首輪装着の記録媒体中のデータや、それに近付く人物の防犯カメラ画像が、大きな手がかりになって、被疑者逮捕に至った可能性が高いでしょう。

今後の捜査では、状況証拠だけでなく、被疑者と犯行との間の直接的な結びつきを立証できる、確たる証拠が得られるかが焦点になるはずです」

――これまで何人も誤認逮捕されていますが、今回の逮捕も「誤認逮捕」という可能性はないですか?

「逮捕された被疑者が真犯人かどうかは、まだ断定できる状況にはありません。あくまで、逮捕状が出る程度の『疑わしさ』が存在したということであり、そこは冷静に見る必要があるでしょう。決めつけは禁物です」

●「プライバシーを過度に暴き立てる報道の在り方には問題がある」

――今回の事件では容疑者が否認しています。真犯人かどうかまだ不明な段階における「実名報道」のあり方に問題点はないのでしょうか?

「犯罪報道の在り方、実名報道の可否については、様々な議論、意見があります。実名報道により捜査、公判の在り方が検証できる側面もあり、実名報道を全否定するのもどうかと思います。

ただ、今回の事件でもそうですが、被疑者を実名で報道しても、あくまで『疑いを受けている』存在ですから、『犯人』であると決めつけすぎ、プライバシーを過度に暴き立てる報道の在り方には問題があります。慎重さ、節度がより強く求められると思います」 

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

落合 洋司
落合 洋司(おちあい ようじ)弁護士 高輪共同法律事務所
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。

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