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「自由というのはまぶしい」 遠隔操作事件・片山被告人が保釈会見(全文・前半)
東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見にのぞむ片山祐輔被告人

「自由というのはまぶしい」 遠隔操作事件・片山被告人が保釈会見(全文・前半)

パソコン遠隔操作事件について威力業務妨害罪などで起訴され、東京拘置所に勾留されていた片山祐輔被告人が3月5日、保釈された。片山被告人は、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き、「私はやってない。なんの身に覚えもない」と述べ、法廷と同じように無実だと主張した。

●「夜なのにまぶしいです」

片山: この一年間、緊張といろんなことの連続で、本当に疲れ果てました。まだまだ戦いは長いですけど、がんばって戦っていきたいと思います。無罪を取るところがゴールということで、現時点はまだ道半ばだと思います。

――まず保釈された今の印象をお願いします。

片山: 印象ですか。やっぱり、正直に申し上げると、ストロボがまぶしいです。ちょっと、拘置所を出るところから、目が痛いです。そういった意味で、気持ち的な意味でも、自由というのはまぶしいものだなと。そんなふうに思います。夜なのにまぶしいです。

昨日、午後2時ぐらいに小池弁護士の面会がありまして、高裁が保釈を認めたと。そういうことを聞いて、今日中に出られると思っていたところ、呼び出しが来ない、来ない、来ない。もう夕食も抜いてもんもんとしていたところ、午後7時すぎぐらいに、刑務官からの告知がきて、高検の検事が最高裁に特別抗告したので、いったん保釈が止まっちゃったと。その告知だけを受けました。それでガクッときてしまって。まあ、昨日午後から今まで、情動の上下が激しいというか、とにかく出てくることができて、良かったです。

(今日は)まず朝、裁判所に着いて、弁護人と面会して、特別抗告されて(保釈の)執行が停止になった経緯の説明は受けました。それで、お昼を食べて、(第2回公判に)出廷したあとにOKが出たということで、良かったという感じですね。

――あらためて、無罪を訴える気持ちを聞かせていただきたいのですが。

片山: 私はやってない。なんの身に覚えもない。本当に1年と20日ぐらい前、今日で389日目ですね。毎日、ノートに日数を書いていたわけなんですけれど。まさに、寝耳に水の家宅捜索と逮捕でした、昨年の2月10日は。警察とマスコミから尾行を受けていたことすら、まったく気づいていなくて、前日に行った猫カフェで、正面から写真を撮られていることにすら、気づかなかった。そんな状態で、寝耳に水の逮捕でした。

●「身に覚えのないアクセス記録」が

――裁判ではほかに真犯人がいて、むしろ遠隔操作されたという主張をしていたと思いますが、そのへんのことについて、ご自身の口からもう一度、説明いただけますか。

片山: そうですね。やはり、身に覚えのないアクセス履歴のようなものが多すぎると。たとえば、事件に関する報道をものすごく多く見ている。検察主張では「多数」とか「頻繁に」とか、そういう使われ方をしているんですけど・・・。たしかに、遠隔操作事件というものが騒がれ始めた初期から、ヤフーニュースのヘッドラインをクリックして見る程度には、見ていたのは事実ですが、「多数」とか「頻繁」とか言われるほど、見ていない。それで、その記録を精査してもらったところ、何万回という回数、もう人力では不可能な回数、報道記事をアクセスして見ていたりとか。あと、落合(洋司)弁護士のブログを見たとか、部落解放同盟のサイトを見たとか、そういう事実も全然覚えがないので、そういった身に覚えのないアクセス記録があることから、遠隔操作されていた可能性が高い。それしか考えられないと思います。

――片山さんとしては真犯人が別にいるということですか?

片山: はい。別にいます。

――真犯人に対して、何か言いたいことは?

片山: そうですね。できれば、出てきてほしい。自首してほしいです。それが無理なら、「片山さんは犯人ではないですよ」的なアクションをしてくれることを、1%ぐらい期待していなくはないです。ただ、1年待っても、結局、何もしてくれないわけで。ラストメッセージでも言っているとおり、犯人はもう、何が起こっても静観するつもりなのかなとか、そんなふうに思ったりもしています。

――質問が2つあります。1つは、いままでメディアにも、ずいぶんいろんなことを書かれてきたと思います。たとえば、首輪をつけるところの決定的な場面があるとか、あるいは、片山さんのスマホから写真が再現されたとか。そういう今までの報道について、思うことを1つ。もう1つは、これからやりたいこと。それからメディアの人たちに言いたいことがあれば、お願いします。

片山: 1つ目は、メディアの方に対しても、ちょっと、正直な気持ち、怒りたい気持ちはありますけど。やはり警察発表ですね。「嘘の大本営発表」って、私は呼んでますけど、まさに大本営発表ですよ。ありもしないものが出た。そうやって、メディアの人をだました警察が一番悪いのではないかと。もちろん一番悪いのは、真犯人だと思いますけど。

2つ目のやりたいこと。これまで私はIT業界で仕事をしてきて、私のできることといえば、やはりITぐらいしかないので、この先、どうやって生きていこうかと。ちょっとIT業界に戻るのは難しいのではないかと思っていますが、しばらく執筆なり、講演するなり、そういったことで、食べていけたらいいなとか、ちょっと思ったりしています。

●今年は「外でお花見」を

――そこまで長い期間のことではなくても、数日単位ではどうでしょうか?

片山: ここ数日としては、まず、おいしいものを食べて、ちゃんとして、ゆっくりお風呂に入って、自由を満喫したいです。

佐藤博史弁護士: 昨年、捕まったときは、2月10日でした。「桜の花見は外でできますか」と言ったけど、今度は本当にお花見ができそうで・・・

片山: そうですね。3月22日に起訴されてしまって、お花見ができないと確定してしまって、ガクッときてたところを、佐藤先生が・・・

佐藤: 私、家の庭にある桜の枝を折ってきまして、「今年の花見はこれだよ」と言って、接見室で桜を見たんですけど、今年は外で見れそうだと。良かった。

片山: はい、はい。そうですね。

――2回の公判に出て、検察側がまず主張したのをご覧になって、何か反応や思いはありますか?

片山: そうですね。これまで、公判前整理手続が、多数回おこなわれてきて、証明予定事実というものがいくつも出てきているので、もうすでに検察主張は見ていて、「特に新しいことは言っていないな」と。なので、公判が始まったから、何か検察の言っていることに対して、印象が変わったとか、そういったことはないという感じですね。

――公判前も含めてどうですか。検察が言っていることを聞いていて、ああいうことで犯人にされてしまうのかなと不安になるようなことがあるとか、そういうのはどうでしょう?

片山: やはり、そうですね。いろいろな面で、証拠上、矛盾しているところがある。たとえば、江の島の猫の首輪から出てきたDNAは別人のものだったりとか。その、さまざまな面の矛盾点が、そこかしこにあるにもかかわらず、屁理屈でごまかしていると。DNAに関していえば、他人のDNAが混入しただけだとか。そもそも、私のDNAが出ないことが重要なわけで、他人のDNAなんかどうでもいい。そういった論調で、屁理屈で証拠の矛盾をごまかしている。そういった印象を受けます。

――今後、そういったことをご自身も積極的に発信したり、主張していったりする予定ですか。メディアなんかに対して。

片山: できればしたいです。

佐藤: 今後のこととして、極めて重要なことで、私たちが保釈を求めていたのもそうなのですが、データの解析を、特別弁護人と一緒にやらなければいけないんです。その作業があります。今日、(検察側が)ずっと立証していた片山さんのパソコンの中から出たものというのは、全部、データベースの形で私たちも持っているので、その解析の作業がとりあえず、すごく大事なことです。今日、(第2回公判の)法廷で出てきたイコマ証人ですが、そのことを破るもの、自分が遠隔操作されていたという根拠を見つけていくということを、車の中でも言っていました。

片山: そうですね。自分もあまりウイルスとかセキュリティに関してのスキルは正直ないですけれど、自分のできるかぎり、自分の使っていたパソコンのことですし、何かおかしいことがあれば、特別弁護人ではなく、まず自分で気付くべきだと。何かおかしいところを少しでも探していきたいと思っています。

――片山さん自身は、犯人に対して、まったく心当たりのようなものはないんですか?

片山: ないですね。はい。

――その点に関連して、検察側はパソコンにウイルスを作成した途中のファイルが残っているなど、そういう形跡があると主張しているようですが、その点については、どうお考えですか?

片山: やはり、私のパソコンが遠隔操作されていた以上、何があってもおかしくないわけです。犯人はファイルを置くのも、盗むのも、消すのも、自在だったわけですから。犯人が使った遠隔操作ウイルスは、iesys.exe(アイシス)だけとは限らないと思います。そこらへんにある、ネットで拾ったウイルスなんかの亜種みたいな形にして使っていたのかもしれないですし。その辺は、結局、今後、解析してみないとわからないですけど。なんらかの形で、iesys.exe、または、iesys.exe以外の方法で、私のパソコンが操られていた可能性が100%だろうと思います。

●遠隔操作されているとは「思わなかった」

――そのときは、ご自分はまさか自分のコンピュータが遠隔操作されているとは、夢にも思わなかったんですか?

片山: 思わなかったです。わからなかったです。

――検察側としては、そのうえで、ファイル・スラック・スペースに意図して痕跡とかを残せないので、遠隔操作はないという主張もしています。片山さん自身としては、遠隔操作はそもそもされている、ありえないことはないということですか?

片山: そうですね。そもそも、ファイル・スラックという言葉自体、今日初めて知ったんです。原理を聞いたかぎり、上書きされて残ったスペースということなので、遠隔操作されてファイルを置かれて、消されて、ほかのファイルが上書きされて、残ったスペースにデータが残るということは、十分ありうることだと思うんです。「遠隔操作では、ファイル・スラック・スペースは自由に残せない」という主張がよくわからないというのが、正直なところです。

佐藤: さきほどの質問で、iesys.exeを作る途中のファイルが見つかったとおっしゃったと思いますが、私たちの理解が正しければ、実はiesys.exeのソースコードというのが送られてきたために、iesys.exe自体のソースコードはわかっているわけですね。その保存のフォルダというのが、「F」というフォルダということはわかっている。それで、片山さんの派遣先を見つけたら、本来あるフォルダと違う「F」というものがあったという説明がありました。これは極めて特殊なフォルダだと言っていたと思いますが、これは片山さんの目からみると、まったく見えないフォルダです。そこに、いま彼が言うように、上書きをすると、ファイル・スラックというところに残るだけの話なので、「F」がいかにもなにか意味がありそうで、iesys.exeと結びつくんですが、片山さんサイドからみると、まったく見えないフォルダですからね。そこへ犯人がアクセスして、何度かそれを上書きしていれば、ファイル・スラックに痕跡が残ると。その痕跡というのは、要するに、iesys.exeにたどり着く文字列が共通していたから、そのiesys.exe関連のものだということを言っているだけですよ。

片山: その「F」に心当たりがないわけではないんです。一応、自前で持ち込んでいたポータブルアプリケーションを起動するのに、トゥルー・クリプト・ボリュームを使ったり、subst コマンドを実行したりして、仮想ドライブという形で使うことはしていたんです、事実。その際に、Fドライブというものは、心当たりがないわけではないです。ただ、Vプロジェ・フォルダとかは、おそらく隠しフォルダになっていたので、自分では見えなかった。ちょっと、佐藤先生の主張を訂正させていただきたいです。

佐藤: いまのそこが、どうやら検察の主張のキーだということは、今日の証人でわかったと思います。ファイル・スラックのことは、さっきの車の中でも、まったくわからないと。原理的にいって、上書きをして、断片みたいなものが残っているという説明なんですけど。それは犯人がそういうことをすれば、とにかく残るというだけの話ですね。

片山: そうですね。

(片山祐輔被告人の保釈会見・前半おわり)

(弁護士ドットコムニュース)

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