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「運転免許証コピーは断固、拒否できる!」というブログが話題・・・これって本当?
個人情報漏えいの心配から、免許証提示に抵抗を感じる人も少なくないだろう

「運転免許証コピーは断固、拒否できる!」というブログが話題・・・これって本当?

「身分証のご提示をお願いします」「身分証のコピーをお取りしてよいでしょうか?」。銀行口座を開設するときに、窓口でこんな風に言われた経験が誰しもあるだろう。

ほとんどの人が、言われたままに従っているだろうが、この9月、「『運転免許証をコピーさせていただきますね。』は断固、拒否できる!身分証明書をコピーさせないことで、個人情報漏洩から身を守ろう。」と題するブログ記事が、ネットで反響を呼んだ。

記事によると、身分証の提示は断れないが、コピーは断れるという。顧客名簿が漏れた、なんていうニュースがしばしば世間を騒がせているいま、身分証コピーは拒否すべきなのかもしれない。しかし、この記事、きちんと読むと、「らしいです」「のようです」「出来るらしい・・・」といった表現のオンパレード。なんだか自信がなさそうだ。

実際のところ、「断固コピー拒否」はできるのだろうか。企業と消費者のあいだの契約問題にくわしい伊藤諭弁護士に聞いた。

●マネー・ロンダリングを防ぐ必要がある

「金融・保険会社は、マネーロンダリングを防ぐための『犯罪収益移転防止法』で、取引相手の身元や取引の目的をしっかりチェックすることが義務づけられています。

新規に口座を作る際などには、必ず運転免許証などの身分証明書を提示しなければなりません」

つまり、身分証の提示は必要だということだ。身分証の「コピー」はどうだろうか。

「たしかに法律では、対面で書類を確認した場合、身分証の『コピー』までが要求されているわけではありません。

しかし業者には、本人確認などをおこなった記録を作成して保管する義務があります。もし記録が不十分だったり、不正確だと、監督官庁から是正命令を受けることがあります。運転免許証等のコピーを添付すれば正確性が高まります。さらに、それによって大幅に記載を省略することが法律で認められています。

身分証のコピーが求められるのは、こうした事情があるからでしょう」

●「なりすまし」をされる可能性もある

別の観点からも、伊藤弁護士は「身分証のコピーが重要になる」と指摘する。

「たとえば、詐欺被害やなりすまし被害によって、契約名義人にとって身に覚えのない契約にもとづく請求がされるケースでは、契約の成立そのものが裁判で争いになります。

裁判では、どの程度の本人確認をおこなっていたかが争点になることが多く、事業者が契約時に身分証のコピーを証拠として取得しておくことが非常に重要になってきます。

契約自由の原則がありますので、客は、金融会社に契約締結や取引きを強制することはできません。したがって、コピーを取ることを禁じることで、金融会社から取引きを拒否されることは十分に考えられます」

伊藤弁護士はこのように述べていた。つまり、身分証のコピーを取らせないことはできるが、それによって生じるデメリットも覚悟しなければならない、ということだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

伊藤 諭
伊藤 諭(いとう さとし)弁護士 弁護士法人ASK川崎
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。中小企業に関する法律相談、弁護士等の懲戒請求やトラブル対応などを手がける。第一法規「懲戒請求・紛議調停を申し立てられた際の弁護士実務と心得」著者。

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