愛知県内のスーパーマーケットチェーン2社が、大根やモヤシなどを店頭で1円で販売したことが独占禁止法違反(不当廉売)にあたるとして、公取委が2社に警告を出した。
朝日新聞によると、警告を受けたのは愛知県の2社。5月中旬にキャベツやホウレン草など6〜7品目ほどの野菜を1円で販売していたという。4月末に新規出店が行われたことで、競争が激化していた。
競争が起きるのは消費者にとって悪いことではないが、過度な安売りは独占禁止法上、どのような問題があるのか。タイムセールで激安になることとの違いは何なのか。鎌田智弁護士に聞いた。
●他の事業者が撤退したり、参入しなくなったりする
「スーパーで野菜が安く売られていたら、消費者としてはうれしいことです。しかしその価格が『1円』ということになると、うれしいというだけでは済まされません」
鎌田弁護士はそう指摘する。なぜなのだろうか。
「仕入れ値などを著しく下回る価格で商品を販売することが続けられると、これに太刀打ちできない他の事業者が撤退したり参入しなくなったりしてしまいます。その結果独占の状態が生じかねません。そうなるとその後に値上げされたとしたら消費者は高い買い物を強いられることになります。
そこで独占禁止法は、公正な競争を確保して消費者の利益を守るために不当廉売を禁止しているのです」
独占禁止法に違反するとどうなるのか。
「違反の疑いで警告をされると公正取引委員会のホームページに掲載されますし、違反を繰り返すと課徴金の制裁もあります。事業者にとっては十分に注意する必要があります」
●数量限定の特価販売はOK
そうなると、安売りというのはどこまで認められるのか。
「廉売であっても公正な競争を阻害するおそれがなければ不当廉売にはなりません。生鮮食料品が痛む前に売り切る場合や、数量限定の特価販売などは実際よく目にするところですが、不当廉売にはあたりません。
スーパーの野菜の廉売は、公正取引委員会の調査が入り、結局1週間ほどで取りやめられたようです。安い野菜を購入できたのは消費者の一部ですが、究極的には、公正な取引が回復されて消費者全体にとって利益になったということです」