
笠原 裕治
弁護士法人道北法律事務所
北海道 旭川市9条通7-2483-6 熊谷ビル3階インタビュー
笠原 裕治 弁護士 インタビュー

弁護士を目指したきっかけ
私は中学生のとき、いじめを受けていたことがあります。また、それと同じ頃、自宅近くの工場が低周波騒音を出して、家族がそれに悩まされていました。低周波騒音というのは、人の耳に聞こえないくらいの小さな音波によるものなのですが、その音波によって家の戸が震えたりするといった騒音が起こる、というちょっと変わった騒音公害のひとつです。
これらの経験もあって、中学生の頃から、「困ったときは誰に相談すればいいのだろうか」「自分たちのように、弱い立場にある人のために何かできないだろうか」と考えるようになりました。その思いが、徐々に具体的な自分の将来のビジョンとなり、高校生の頃には弁護士という職業に繋がっていったという次第です。
弁護士を目指したきっかけは、この中学時代の経験や、素朴な思いが、今でも私の弁護士活動の根底にあると思っています。
今までの経験と現在の仕事内容
東京の法律事務所で2年6ヶ月、その後北海道名寄市の公設事務所で3年間、その後旭川に転居して業務をしております。いずれの事務所でもいわゆる「一般民事」、つまり離婚から会社法務、いわゆる多重債務関係、それに刑事を含めたあらゆる種類の業務を行っており、特定の分野に偏って業務をしているというわけではありません。
あえて特徴を挙げるならば、公設事務所時代はいわゆる多重債務に関する事件が多かったと思います。また公設事務所での経験があることから、都会での業務より弁護士とより接点の少ない過疎地の依頼者に何とか対応できないか、ということを意識して仕事をしています。
東京から北海道へと移った理由
弁護士になるまでの30年間はずっと東京で暮らしていました。ところが、司法修習の際に突然函館の事務所へ行くことになったのが、北海道に興味を持つきっかけとなりました。その事務所は当時取り扱っている事務所が少なかった多重債務問題に熱心に取り組んでいたのですが、借金を抱えて右も左もわからずに困っていた人たちを助け、心から感謝されている様子を傍で見て、とても感動しました。
また、その後、東京に戻って働き出した際に、たまたま茨城県の事件をお受けする機会が多くありました。その中で、東京都内で起こる都会的な事件より、茨城で起きる事件のほう自分に向いていると感じ始め、弁護士過疎地など地方での弁護士活動に興味を持つようになりました。
そのような経緯で、北海道名寄市に公設事務所を構えることになったのですが、私が訪れたときには、名寄市にとって30年ぶりにやってきた弁護士だったらしく、3年間で、本当にあらゆる分野の事件を扱いました。
また、名寄から旭川へと移るときは、とても慎重に後任を選んでもらいました。公設事務所は、勤務する弁護士が変わる際、そのときに担当している事件ごと事務所を引き継ぎます。地域に密着した事務所だったからこそ、生半可な気持ちの人には後を任せられない、という思いがあったので、引き継ぐ前に見学に来てもらったり、土地柄や業務内容を理解してもらってから、応募して貰いました。百聞は一見にしかずと言いますが、名寄での仕事について知ってもらうには、「現場を見る」ことが一番だと思ったのです。
幸いこれらのことをよくわかっている方が応募してくれ、その後3代目の方も非常に熱心な方が来てくれています。有り難いことだと思っています。
都市部と地方の違いについて
それぞれの地域によって、依頼者の方に特徴があります。特に、弁護士と市民の方との距離感には違いを感じてきました。
東京の事務所で勤務しているときは、依頼者の方も、メディアを通して普段から法律や弁護士を身近に感じておられる方が多いため、法律や弁護士に慣れているといいますか、「私はこういう解決を望んでいる」「慰謝料をこの程度要求したい」といった形で最初からはっきりとした要望を持って相談に来られる方が多かったと思います。
逆に、法律や弁護士があまり身近ではない地方では、困ったことがあったときにどう対処したらいいのかわからず混乱してしまったり、そもそも自分が被害に遭っているという自覚がない方もいらっしゃいます。
例えば、「夫から暴力をふるわれているのだけど、離婚できるのでしょうか」「サラ金に借金があるのですけど、どうしたらいいのでしょうか」「傷害事件の被害にあったのですが、刑事事件に関わるにはどうしたらいいのでしょうか」など、たいていの人は、弁護士に相談して何ができるのかすらわからず来られるので、不安を抱えています。
また、大抵の一般市民の方にとって、弁護士に依頼することなど一生に一度あるかないかなので、どうしても「弁護士は偉そうで、取っつきにくい」という意識があるようです。弁護士に相談や質問がしにくいという声も耳にしますし、「こんなことを弁護士に相談していいのかわからないのですけど…」と不安げに相談に来られる方も少なくありません。
私は現在、地方で働いているので、まずはこういった弁護士の敷居の高さを解消して、市民の方が安心して気軽に相談して頂ける環境を創りたいと思っています。
弁護士としての信条・ポリシー
私が最も重視することは依頼者に与える安心感です。先ほどもお話したように、東京のような都会であればいざ知らず、私が以前赴任していた名寄市や、現在の旭川市あたりだと、相談に来る方は法律にあまり馴染みがない方が大半なので、弁護士に相談するときに不安を抱えていらっしゃいます。
そのような相談者の方に対応するには、まず一定の方向性を示し、安心感を持ってもらうことが最優先です。具体的な方法や相談は、落ち着いてから一緒に考えていきます。
また、その後事件を受任した場合でも、大抵の依頼者の方は「本当に大丈夫なのだろうか」「弁護士はちゃんと動いてくれているのだろうか」という不安を持っております。そういった不安を解消するためにも、私は、相談に来た方に可能な限り明確な方向性を示すと共に、受任後も依頼者に対して説明すること、医療分野で言うインフォームドコンセントを重視し、ともに事件に当たっていく、という姿勢を重視しています。
インフォームドコンセントは、医療の場でよく使われる言葉ですが、全ての専門職に就くものにとって必要なことです。弁護士の基本規定の中でも義務付けられており、私も意識的に大切にしていきたいと思っている考えのひとつです。
関心のある分野
特定の分野に関心がある、ということはありません。旭川やその周辺の弁護士偏在地域で業務を行う場合、少数の法律事務所が、あらゆる事件に対応する必要があります。特定の分野に特化してしまうと、他の案件に対応しにくくなるというマイナス点がありますし、むしろあらゆる分野に対応できるオールマイティさが必要不可欠なのです。
また、私のポリシーとして、「必要とされるところで仕事をする」という思いがあります。弁護士の扱うべき事件というのは、土地や世の中の流れによって変わっていきます。例えば、現在旭川では高齢者人口が激増しており、当然今後、成年後見、相続、遺言など高齢者問題特有の事件が増加すると思われます。これらに関して、十分な対応ができるように今からスキルを磨いていくことは、弁護士として当然のことかと思います。
専門性を極めることは、一歩間違えると自分に限界を設けてしまうことになりかねませんし、弁護士の得意分野というのは、その時々の社会的な需要によって変わっていくものなのではないでしょうか。常に社会的な需要に応じられるよう、社会を読み解き、あらゆることに関心を持ち、日々勉強して行きたいと思っています。
自己紹介
- 所属弁護士会
- 旭川弁護士会
- 弁護士登録年
- 2001年
所属事務所情報
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- 所属事務所
- 弁護士法人道北法律事務所
- 所在地
- 〒070-0039
北海道 旭川市9条通7-2483-6 熊谷ビル3階 - 最寄り駅
- 旭川駅
電話で問い合わせ
0166-76-4817
※お問い合わせの際は「弁護士ドットコムを見た」とお伝えいただければ幸いです。