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旧優生保護法「強制不妊手術」の男性、妻に40年以上話せず「不幸にしてしまった」…国を提訴
原告の男性は、妻が亡くなる直前にようやく「不妊手術を受けていた」ことを打ち明けることができたという

旧優生保護法「強制不妊手術」の男性、妻に40年以上話せず「不幸にしてしまった」…国を提訴

今から61年前、旧優生保護法による不妊手術を強制されたことで、精神的苦痛を受けたとして、東京都内在住の男性(75)が5月17日、損害賠償3000万円をもとめる国家賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。男性はこの日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて「人生を返してください」と訴えた。

●「何の説明もなく不妊手術を受けさせられた」

訴状などによると、男性は1957年(当時14歳ごろ)、宮城県内の病院で、何の説明もなく、旧優生保護法にもとづく不妊手術を受けさせられた。当時、入所していた教護院(児童自立支援施設)の先輩から「子どもが生まれなくする手術だ」と聞いたという。

今年1月、宮城県内の女性が仙台地裁に提訴した報道を受けて、弁護団の電話相談に問い合わせた。今年3月、宮城県の個人情報開示の手続きをおこなった結果、保管期間が過ぎて廃棄されたため、手術記録は存在しないとされた。

男性は医師による意見書をもらったうえで、今回の提訴に踏み切った。代理人をつとめる関哉直人弁護士は会見で、「(旧優生保護法は)当時から明らかに憲法に反する法律で、しかも十分に吟味して手術決定がされていない」と説明した。男性側は、手術によって、長年生活上の苦痛を受けたと主張している。

●男性「一人の女性を不幸にしてしまった」

男性は1972年、結婚して仲睦まじい夫婦関係をつづけていたが、子どもをつくれない身体であることを伝えることができず、約5年前、妻が亡くなる直前になって、ようやく打ち明けることができたという。結婚から40年以上経っていた。男性は「一人の女性を不幸にしてしまった」と振り返った。

「心から自分の妻に謝罪した。妻は周囲から『なんで子どもが出来ないのか?』と言われるたびにどんなつらい思いをしたかわからない」(男性)

●「手術に関わった人は表に出て、真実を語ってほしい」

旧優生保護法にもとづく強制不妊手術をめぐっては、この日、北海道と宮城県でも同じような国家賠償訴訟が起こされた。今年1月末に仙台地裁に提訴した宮城県の女性のケースを含めて計4件となった。

強制不妊手術は全国で約1万6500件あったとされるが、全体の2割ほどしか記録が残されていない。男性はそんな現状の中で、自分が裁判することで、救済につながる動きにつなればと考えている。

男性は「一人で傷ついている人が大勢いる。その人たちの思いを込めて、裁判をすすめていきたい。手術に関わった人は表に出て、真実を語ってほしい。名乗り出てない人も、勇気を出して、裁判に出てほしい」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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