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2011年7月14日黒田 健二 弁護士インタビューアップ

特別インタビューvol.6 福田 博弁護士 西村あさひ法律事務所

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投票価値の平等の実現で日本の閉塞感を打破

プロフィール

西村あさひ法律事務所顧問弁護士。東京海上ホールディングス監査役。1960年外務省入省。1990年9月より特命全権大使としてマレーシア駐在。1993年8月外務審議官。1995年9月?2005年8月最高裁判所判事。2007年5月旭日大綬章を受章。

主な著書に『世襲政治家がなぜ生まれるのか? – 元最高裁判事は考える-』(日経BP社 2009年3月23日発行)等。

INTERVIEWーインタビューー

日本の民主主義が2流といわれた理由

──福田先生が投票価値の平等に関心を持つようになられたのは、まだ外務省で勤務されていたときのこととお聞きしています。

福田いまから30年近く前の1980年代の初め、2回目の在米大使館勤務の際、ワシントンの連邦議会のある上院議員のオフィスに行ったときのことです。受付のところに「世界各国の民主化度」というタイトルのパンフレットが置いてあり、それを手にとって開くと米国が一番いい民主主義の国とありました。自国のことなのですから、当然でしょう。

驚いたのは、「日本の民主主義体制は2流だ」と評価されていたことです。日本は東アジアにおける唯一の民主主義国家であると自負し、外交官として誇りを持っていただけに、私は憤慨しました。その後、知人である米国の政治家や官僚に尋ねてみても、彼らは「日本の民主主義体制は2流だ」と口を揃えていいます。その理由を問うと、色々いうのですが、ほぼ共通していたのは、「日本の政治体制は実質的に一党独裁じゃないか」という発言でした。

当時の政権与党だった自由民主党は立派な政党であり、だから国民も一票を投じて長期政権が続いているのだと私は思っていました。しかし、その一方では彼らがそう断じた理由を、頭の片隅で考え続けていました。そして、1995年9月に最高裁判所の判事になって投票価値の問題と相対したとき、日本では投票価値が平等ではなくなっていて、最高裁判所もそれをそのまま容認し続けており、これでは真の民主主義国家とはいえないと思ったのです。

──なぜ投票価値が平等でないと、民主主義が成り立たないのですか。

福田代表民主制は、投票価値が平等な選挙によって多数決で選ばれた代表者たちによる国政のシステムです。フランス貴族で弁護士のトクヴィルは、米国を訪問した印象を1835年と1840年に『アメリカのデモクラシー』という2冊の著作にして出版し、その中で同国の民主主義を賞賛しました。この本は今でも、米国の民主主義について書かれた一番の名著という評判を得ています。しかし、当時は米国はまだ奴隷制をとっていました。また、女性の参政権も認められていませんでした。それにもかかわらず、彼が賛辞を惜しまなかったのは、平等の立場で物事を議論し、多数決で決めていたからです。

もし、有権者の投票価値が平等でなかったら、何が多数かわからなくなります。民主主義体制では投票価値の平等は全てのことに先立つ前提であり、それがあってこそ多数決が可能になります。国政にあって一部の有権者の投票価値を薄めるようなことをすれば、それは民主主義ではないのです。それで私は2005年8月に退官するまで、投票価値の平等はきわめて重要であるという意見を出し続けました。しかし、残念ながら当時は一顧だにされませんでした。

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