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勤務医の約8割が当直明け「連続勤務」、集中力や判断力の低下…医師の過酷な労働実態
厚労省の記者クラブで会見する植山代表

勤務医の約8割が当直明け「連続勤務」、集中力や判断力の低下…医師の過酷な労働実態

勤務医の約8割が、当直明けの翌日も連続勤務をし、集中力や判断力の低下を感じているーー。全国医師ユニオンや医労連(日本医療労働組合連合会)などで作る「勤務医労働実態調査2017実行委員会」が11月9日に発表した調査で、多くの医師が長時間労働により勤務に影響が出ている実態が分かった。

●約8割が当直後も「通常勤務」

「過労死ライン」に当たる月80時間以上の残業を超えている医師は、常勤医(当直なし)で4.9%、常勤医(当直あり)では7.3%、初期研修医が8.5%に対し、後期研修医では18.9%と高い数字となった。また1か月の休みが0日の医師が、常勤医で8.2%、初期研修医で4.2%、後期研修医で8.1%という結果もあり、植山代表は「医療安全上の問題にも繋がっている」と指摘した。

こうした長時間労働の背景には、夜間や休日の救急医療や重症者に対応する「当直勤務」が大きく影響している。当直明け後の勤務体制について、78.2%が「通常勤務」と答えており、連続勤務が日常茶飯事となっている現状が浮き彫りとなった。

さらに、労働時間の管理方法については、「自己申告」が51.6%と最も多く、「タイムカードなどの客観的管理」が27.5%、「管理なし」が17.6%と、労働時間が十分に管理されていないことも明らかになった。

●約8割が「集中力」「判断力」の低下を自覚

また、当直明けの翌日の連続勤務と医療ミスとの関係についての質問で、集中力や判断力に関して「通常時と比べて大幅に低下していると思う」が36.3%、「やや低下していると思う」が42.7%と約8割が低下していると答えた。

電子カルテの文章の入力ミスや単純なミスも含む診療時のミスについて問うと、全体の13.4%が「相当ミスが多い」、13.4%が「ややミスが増える」と、3割近い医師が実際にミスが増加していると答えた。

こうした調査について、会見した全国医師ユニオンの植山直人代表は「医療の安全がこれだけ叫ばれていながら、勤務実態と医療ミスに関する詳細なデータがないのが問題だ。今後精緻なデータや統計を出していきたい」と話した。

●働き方改革の議論進むも、「ほとんど改善しない」が約6割

医師の時間外労働への規制のあり方について厚労省の検討会で議論が進んでいる中、働き方改革で医師労働は改善すると思うかを問うと、全体の57.1%が「ほとんど改善しない」と答えた。その理由を聞くと、複数回答で「必要な診療体制を維持できない」がもっとも多く、次に「医療現場の法律は守られない」、「医師を労働者と考えない風潮」と続いた。

時間外労働の上限規制について、医師への適用は5年間猶予を設けたことについては、「わからない」が42.4%と最も多く、「賛成」が17.2%に対し「反対」が35.2%と2倍以上となった。

調査は2017年7〜9月、学会や医療団体に協力を要請して記入を依頼し、約1800人の勤務医から回答を得た。このうちインターネットでの回答を除いた1621人のデータが公表された。回答者の属性は、性別(男性77%、女性23%)、年代(20代7.3%、30代20.5%、40代24.7%、50代25.3%、60代以上22.1%)、ポスト(院長9%、副院長9.4%、診療部長・科長28%、一般医師43.6%、無回答9.9%)。

(弁護士ドットコムニュース)

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