変形労働時間制

弁護士監修記事 2017年07月04日

「変形労働時間制」の仕組みと残業代が発生するケース・計算方法

勤務形態のひとつとして、「変形労働時間制」という仕組みがあります。労働時間について、「日・週」単位ではなく、「ある一定期間の週あたりの平均労働時間」で考える制度です。 そのため、「9時から17時」など固定された時間で働く場合と比べて、「どのような場合に残業代や割増賃金が発生するのか」ということがわかりづらい側面があります。 この記事では、変形労働時間制で残業代・未払賃金が発生する場合や、その計算方法を紹介します。

目次

  1. 変形労働時間制とは
  2. 変形労働時間制を導入できる条件
    1. 1か月単位の変形労働時間制を導入するための条件
    2. 1年単位の変形労働時間制を導入できる条件
  3. 労働時間の上限
  4. 変形労働時間制で「時間外労働」をカウントする上でのルール
    1. 1日単位で時間外労働になる時間を特定
    2. 週単位で時間外労働になる時間を特定
    3. 月単位で時間外労働になる時間を特定する
  5. 残業代の請求方法

変形労働時間制とは

変形労働時間制とは、おおまかにいえば、一定期間の週あたりの平均労働時間が、法律で決められた枠内に収まっていれば、1週(40時間)または1日(8時間)の法定労働時間の規制を適用しないことを認める仕組みです。 法律では、原則として1日8時間・週40時間を超える労働をした場合には、時間外労働として残業代や割増賃金が発生します。 一方で、変形労働時間制を導入した会社は、1月や1年などの一定の単位期間を平均して、週あたりの労働時間が40時間を超えないことを条件に、業務の繁忙期や閑散期などに応じて労働時間を割りふることが可能となります。 たとえば、ある繁忙期の週に48時間労働していたとしても、期間を通じて労働時間の平均が40時間以内に収まっていれば、残業代や割増賃金は発生しないということになるのです。

変形労働時間制を導入できる条件

会社が変形労働時間制を導入するためには、法令で決められた一定の条件を満たしている必要があります。 条件を満たしていない場合、その会社で導入されている変形労働時間制は「無効」となる可能性があります。その場合は、法定労働時間(1日8時間、週40時間)の原則にしたがって、残業代や割増賃金が発生することになります。 主に利用されている制度は、次の2パターンです。

  • 1か月単位の変形労働時間制
  • 1年単位の変形労働時間制

1か月単位の変形労働時間制を導入するための条件

会社が1か月単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定や就業規則などで、次の項目を定めておく必要があります。

  • 対象となる労働者の範囲
  • 対象期間(1か月以内)と、その起算日
  • 労働日と、労働日ごとの労働時間
  • 労使協定による場合は、その有効期間

1年単位の変形労働時間制を導入できる条件

会社が1年単位の変形労働時間制を導入するためには、次の項目を労使協定で定めておく必要があります。

  • 対象となる労働者の範囲
  • 対象期間(1か月を超えて1年以内の期間)とその起算日
  • 労働日と、労働日ごとの労働時間
  • 特定期間(対象期間の中でも特に業務が繁忙な期間)
  • 労使協定の有効期間

また、次の労働者ついては、制度を適用するにあたって規制があります。

対象となる可能性がある人 備考
妊産婦(妊娠中または産後1年以内の女性) 本人の請求がある場合、変形労働時間制で働かせることはできない
年少者(15歳〜17歳) 1日8時間、1週48時間を超えない範囲なら適用可
育児や介護を行っている人 育児等に必要な時間を確保するための配慮は求められる

労働時間の上限

1か月単位の変形労働時間制で、月の法定労働時間の上限は次のようになります。

1か月の日数 法定労働時間の上限(週40時間)
31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日(うるう年の2月) 165.7時間
28日(2月) 160時間

1年単位の変形労働時間制で、法定労働時間の上限は次のようになります。

上限時間・日数 備考
労働日数 280日 変形期間が3か月を超える場合(超えない場合は制限なし)
所定労働時間 1日10時間・1週52時間(※)
連続して労働する日数 6日

(※)変形期間が3か月を超える場合は次の条件をみたす必要があります。

  • 労働時間が週48時間を超える週が連続3週以下である
  • 対象期間を3か月ごとに区分した各期間において、労働時間が48時間を超える週は、週の初日で数えて3回以下である

変形労働時間制で「時間外労働」をカウントする上でのルール

1か月単位の変形労働時間制のもとで、割増賃金が発生する「時間外労働」(法外残業)の時間は、次のようなルールで計算します。

1. 1日単位では、8時間を超える所定労働時間を定めた日は、その超えた分の時間が「時間外労働」にあたる。それ以外の日は、8時間(法定労働時間)を超えて働いた時間が「時間外労働」にあたる。

2. 1週間単位では、40時間を超える所定労働時間を定めた週は、その時間を超えた分の時間が「時間外労働」にあたる。それ以外の週は、40時間(法定労働時間)を超えて働いた時間が「時間外労働」にあたる(1で「時間外労働」にあたる時間を除く)。

3. 変形労働時間制の対象期間の法定労働時間の総枠(上の表の上限時間)を超えて労働した時間は「時間外労働」にあたる(1と2で「時間外労働」にあたる時間を除く)。

1年単位の変形労働時間制の場合、ルール1と2は同じですが、3のルールが次のように変わります。

3. 全ての変形期間について、40時間に変形期間の週の数を乗じた時間の総枠を超えて労働した時間は「時間外労働」にあたる(1と2で「時間外労働」にあたる時間を除く)。

これらのルールにもとづいて、具体的にどのように計算すればいいのか、「1か月変形労働時間制において、1か月の日数が31日の月に、時給1000円で、変形労働時間制のもとで勤務した」というケースを例に確認してみましょう(以下の図と計算式は、『働く人のための労働時間マニュアルver.1 補訂2判(日本労働弁護団)』P.140~142を参考に作成しました)。 変形労働時間制 先ほどの3つのルールにしたがって、「時間外労働」が何時間なのか確認して行きましょう。 まず、図の内容を確認します。 オレンジ色の部分が所定労働時間です。1か月の総所定労働時間は173時間なので、法定労働時間以内(177.1時間)におさまっています。ですから、オレンジ色の部分のみ働いた場合は、時間外労働は発生しません。 一方で、白色のA〜Gの部分は所定労働時間を超えて労働した時間にあたります。総実労働時間は183時間です。

1日単位で時間外労働になる時間を特定

①8時間を超える所定労働時間を定めた日で、それ以上働いた時間→E

所定労働時間が8時間を超えているのは、18日(9時間)と19日(10時間)と20日(9時間)と30日(9時間)です。20日は所定労働時間を超えて働いているので、E の部分が時間外労働になります。

②①以外で8時間(法定労働時間)を超えて働いた時間→A

①以外で法定労働時間を超えて働いているのは、13日です(9時間)。ですから、Aの部分が時間外労働にあたります。

週単位で時間外労働になる時間を特定

①40時間を超える所定労働時間を定めた週で、それ以上働いた時間→D

所定労働時間が40時間を超えているのは第3週です(42時間)。そして、この週の実労働時間は44時間なので、16日のDの部分が時間外労働にあたります。20日のEの部分はすでに1日単位の方でカウントしているのでここには含みません。

②①以外の週で、40時間(法定労働時間)を超えて働いた時間→C

第3週以外で、実労働時間が40時間を超えているのは第2週です(42時間)。所定労働時間より4時間多く働いていますが、Aの部分はすでにカウントしているので除きます。 Bの部分は法定労働時間の範囲におさまっているので、割増賃金が発生する時間外労働部分にはあたりません。 ですから、ここではCの部分が時間外労働にあたります。

月単位で時間外労働になる時間を特定する

これまで特定した時間外労働の部分の除いて、1か月の総労働時間を計算すると、合計は次のようになります。

* 第1週 → 40時間
* 第2週 → 40時間(A、Cを除外)
* 第3週 → 42時間(D、Eを除外)
* 第4週 → 40時間
* 第5週 → 17時間

合計は179時間で、法定労働時間の枠(177.1時間)を1.9時間超えています。この部分が所定労働時間内の労働ですが、時間外労働にあたることになります(H)。

計算

割増賃金が発生する法外残業の時間は次のようになります。

A+C+D+E+H=5.9時間

ACDEの4時間分については、125%〜の割増賃金が発生することになります。 Hの1.9時間については、所定労働時間としての100%の部分は「すでに支払われている」と考えるので、割増分の25%〜の部分のみ割増賃金が発生します。 これ以外のB、F、Gの時間は、割増賃金が発生する法外残業にはあたらず、法内残業となるので、100%の賃金が発生します。 割増率を25%として計算すると、残業代は次のようになります。

【A・C・D・E】時給1000円×4時間×1.25=5000円
【H】時給1000円×1.9時間×0.25=475円
【B・F・G】時給1000円×6時間=6000円

計:11475円

残業代の請求方法

残業代を請求する方法の詳細については、この記事の下の関連記事で解説しています。

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