懲戒解雇

弁護士監修記事 2017年04月12日

「懲戒解雇」が無効になるケースとは?不当解雇として争う方法と手順

会社におけるもっとも重いペナルティー。それが「懲戒解雇」です。退職金が支払われないことがあったり、再就職にマイナスに影響する可能性があったりと、その後の影響は決して小さくありません。 一方で、会社がそんな重い処分をするための法的なハードルは高く、条件をみたしていない懲戒解雇は、違法で無効な「不当解雇」にあたります。「不当解雇」と認められた場合、復職や金銭解決が期待できます。 自分の懲戒解雇に納得できない点がある方は、この記事を参考に対処法を検討してみてください。

  • 普通の解雇と何が違う?
  • 懲戒解雇が無効になるのはどんなケースなのか
  • どんな解決を期待できるのか
  • どんな手段・制度を利用すべきなのか

目次

  1. 懲戒解雇は普通の解雇と何が違う?
  2. 懲戒解雇が無効になるのはどんなケース?
    1. 7年以上前の暴行を理由に懲戒解雇(ネスレ日本事件)
  3. 懲戒解雇が「不当解雇」だと認めてもらうと、どんなメリットがあるのか
  4. 「労働審判」「裁判」「あっせん」etc…手続きはどれを選べばいいのか?
    1. 金銭解決を希望する場合
    2. 復職したい場合
  5. どんな証拠を用意する必要があるのか
  6. 弁護士に相談したほうがいいの?

懲戒解雇は普通の解雇と何が違う?

能力不足などを理由として雇用関係を終わらせる通常の解雇と異なり、懲戒解雇は企業秩序を乱したことに対する「制裁」としての意味があります。 通常の解雇の場合、原則として、会社は労働者に事前に解雇を予告するか、予告しなかった場合でもその分の手当を支払う必要があります。一方、懲戒解雇は、こうした制約が原則としてなく、突然解雇される可能性があります。 また、「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない」といったルールが就業規則で設けられている場合、退職金の全部または一部が支払われない可能性があります。 こうした規則があっても、裁判などで退職金の支払いが認められることがあります。規則があるからといって当然に支払われないことになるわけではありません。懲戒解雇の場合でも、事前に解雇予告を受ける場合や、予告手当が支払われるケースもあります。

懲戒解雇が無効になるのはどんなケース?

会社が懲戒解雇をするためには、まず懲戒解雇に関するルールを就業規則で定めてあり、その内容を事業場の労働者に周知させている必要があります。規則を設けずに会社が労働者を懲戒解雇することはできません。 まずは、会社の就業規則で懲戒解雇に関するルールが定められているか、定められている場合、自分が懲戒事由にあてはまるのか確認しましょう。

  • 就業規則に懲戒解雇について定めがあるか
  • 就業規則の懲戒規定にあてはまるか

就業規則に懲戒解雇についての定めがあって、一見すると自分のケースがあてはまるような場合でも、懲戒解雇が当然に有効になるわけではありません。 客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当とはいえない懲戒解雇は、「懲戒権の濫用」として無効になります。具体的にはどんなケースなのか。「ネスレ日本事件」と呼ばれる最高裁の判例を素材に確認してみましょう。

7年以上前の暴行を理由に懲戒解雇(ネスレ日本事件)

食品メーカーで働いていた従業員が、7年以上前の会社内での暴行・暴言・業務妨害などを理由に諭旨(ゆし)退職処分を受けました。 その後、従業員は諭旨退職処分で定められた期限までに退職願を提出しなかったことから懲戒解雇処分と受けました。 裁判では、この諭旨退職処分の有効性が争われました。 最高裁は、「(今回の諭旨退職処分は)実質的に懲戒解雇処分に等しい」としたうえで、処分の時点では、企業秩序を維持するために諭旨退職処分のような重い懲戒処分をする必要はなかった(=客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当とはいえない)として、「諭旨退職処分と、諭旨退職処分による懲戒解雇処分も無効」と判断しました。 社内での暴行といった犯罪行為が理由となっていても、企業の秩序を維持するために必要なのかどうか具体的に検討した上で、7年以上経過した後では「解雇まではやりすぎ」と判断したのです。

諭旨退職処分は、一定期間内に自発的に退職願いを提出すれば自己都合の退職として扱うけど、提出しなければ懲戒解雇にするという処分です。

このほか、懲戒解雇が有効かどうかを考えるうえで参考になるのが、会社が労働基準監督署長に対して申請する「解雇予告除外認定」の基準です。 これは、「労働者に落ち度があって解雇(懲戒解雇)するのだから、解雇予告をする必要がないことを認めてください」と企業側が行政官庁に申請する制度です。 東京都の労働局では、認定の基準として次のような例を示しています。こうした例にあてはまれば、必ず懲戒解雇が有効となるわけではありませんが、自分が受けた懲戒解雇の理由と比べて参考にしてください。

  • 会社内で窃盗、横領、傷害など犯罪行為をした
  • ギャンブルなど職場の風紀・規律を乱す行為をして、ほかの労働者に悪影響を与えた
  • 資格など、採用の条件となるような経歴について、会社にウソをついていた
  • 2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤するように再三注意されても応じない
  • 遅刻や欠勤が多く、会社が何度注意しても改めない

懲戒解雇が「不当解雇」だと認めてもらうと、どんなメリットがあるのか

あなたの懲戒解雇が「不当解雇」である場合、解雇は違法・無効です。その場合、解決としては大きく二つのパターンが考えられます。

  • 復職はせず、未払い賃金や慰謝料など金銭で解決する
  • 元の職場に復職する

不当解雇を争う場合、かたちとしては「解雇の無効を主張する」=「復職を求める」ということになりますが、会社との関係がこじれ、復職が現実的でない場合が少なくありません。 その場合は金銭解決を求めることになります。実際のケースでは、金銭解決を求めることが多いです。 金銭解決を選択した場合、解雇処分を下された後も就労の意思があったこと、また、その解雇処分が無効であることが判断されれば、「解雇されずに働いていれば、本来支払われるはずだった賃金」が支払われます。

復職を望まない場合でも、解雇は無効と判断されると、労働者としての地位が復活します。その場合、解決金を受け取り、会社との合意で改めて退職するという形をとることが考えられます。

「労働審判」「裁判」「あっせん」etc…手続きはどれを選べばいいのか?

「訴える」というと裁判をイメージするかもしれませんが、不当解雇を主張する手段は裁判だけではありません。どのような解決を望むのかによって、ベストな手段は異なります。 不当解雇のフロー図

金銭解決を希望する場合

金銭解決を希望する場合は、労働審判を選択することがあります。 労働審判は、労働問題について詳しい裁判官、労働審判委員、会社側の代表者、労働者などの関係者がひとつのテーブルに集まり、話し合いでお互いに納得できる妥協点を探る解決手段です。 労働審判は原則として3回以内の日程で、話し合いで解決を試みる手続きですので、裁判よりも比較的短い期間で結論をだすことができます(平均70日程度)。

会社との対立が深刻で、話し合いでの解決が難しい場合は、裁判で解決するしかないケースもあります。ただし、裁判は手続きや審理が複雑で、決着まで1年以上の時間がかかることも少なくありません。弁護士費用もその分高額になるケースもあります。こうした負担に留意しておく必要があります。 解雇の有効性を会社と争う間、生活費などに不安を感じる方のために「仮給付」という制度が用意されています。失業手当は本来、失業したことを前提に受ける制度ですが、仮給付は、解雇の有効性を争っていても受けることができます。

復職したい場合

復職を望む場合、会社との関係をいたずらに悪化させたくはありません。そのため、会社との対立がはっきりする裁判などの公的な手段を選ぶのではなく、よりソフトな手段を試みるのが適切だと考えられます。 まずは、会社の相談窓口への相談、もしくは労働組合が団体交渉してくれないか検討してみましょう。 社内の手段で解決が難しい場合でも、都道府県の労働局・労働委員会などに「あっせん」などの手段を活用することも考えられます。

どんな証拠を用意する必要があるのか

どの手続きを利用するとしても、「解雇された事実」を明らかにすることが出発点になります。まず「解雇された」事実を証明する証拠(解雇通知書や解雇理由証明書)を用意しましょう。 この他にも、不当解雇を争うための証拠はさまざまですが、選ぶ手続きによってそろえるべき証拠は変わってきます。

弁護士に相談したほうがいいの?

会社という組織と労働者個人では、交渉力・情報収集力などの面で圧倒的な差があります。自分で会社と交渉しようとしても、対等にことを進めることは容易ではありません。「不当解雇」を争おうと考えた場合、どの手段を選択するとしても、弁護士に相談することをおすすめします。

不当解雇が問題となるケースでは、同時に残業代や退職金が未払いになっていることが少なくありません。あわせて相談すれば、解雇の無効と同時に、こうした割増賃金・退職金を会社側に請求する手続きをとることができます。

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