【人事労務担当者向け】能力不足を理由に従業員を解雇するための条件と注意するポイント

成績不良や業務への適性がないなど、能力不足を理由に従業員を解雇したい場合、どのようなプロセスを踏めばよいのでしょうか。

  • 能力不足を理由に従業員を解雇するための条件
  • 解雇するときに注意すること
  • 解雇以外の解決策

この記事では、上記のポイントについて詳しく解説します。

目次

  1. 能力不足を理由に従業員を解雇するための条件
    1. 就業規則に解雇事由がある
    2. 解雇権の濫用にあたらない
    3. 解雇が禁止されている期間にあたらない
    4. 解雇をする30日前までに解雇の予告をするか、解雇予告手当を支払う
  2. 自主的な退職という選択肢を示す
  3. 弁護士への相談を検討する

能力不足を理由に従業員を解雇するための条件

従業員を解雇をするには、法律で定められた、次のような条件を満たす必要があります。

  • 就業規則に解雇事由がある
  • 解雇権の濫用にあたらない
  • 解雇禁止期間にあたらない
  • 解雇をする30日前までに解雇の予告をするか、解雇予告手当を支払う

条件を満たさない解雇は無効です。 解雇が無効になると、解雇はそもそもなかったことになり、会社と従業員の労働契約はずっと続いていたことになります。会社は、従業員に対して、「解雇されずに働いていれば支払われるはずだった賃金」を支払う必要があります。 このような事態にならないために、どのような場合に解雇の条件を満たすのか、具体的に紹介します。

就業規則に解雇事由がある

会社が常時10人以上の従業員を雇う場合、就業規則には「退職に関する事項」として、「従業員がどのような場合に解雇されるか」(解雇の事由)を載せておく必要があります。 就業規則は、従業員がいつでもその内容を見られるようになっていることが必要です。 さらに、従業員と雇用契約を結ぶときには、解雇の事由を含めた労働条件について説明した書類を相手に渡すことも必要です。

労働条件について説明した書類を手渡す義務は、平成16年1月1日以降に結ばれた雇用契約に適用されます。それ以前に結ばれた雇用契約については、こうした書類が交付されていない場合があります。

就業規則や、雇用契約を結ぶときに渡した書類に書かれた解雇の事由にあてはまる事実がないのに、従業員を解雇することはできません。 就業規則などに、能力不足が解雇の事由として記載されているか確認しましょう。 たとえば、「勤務成績または能率が著しく不良で就業に適しないと認められるときは、解雇する」といった記載です。

すでにある就業規則に、能力不足が解雇の事由として記載されていない場合は、記載したうえで、改めて労働基準監督署へ届け出なければなりません。

常時雇用する従業員が10人未満の会社には、就業規則の作成義務はありません。従業員の解雇を検討したい場合には、就業規則を作成して、周知することから始めましょう。

あわせて、従業員が能力不足であることを証明する証拠を集めておきましょう。たとえば、能力不足であることを客観的に証明できる数値や言動などの記録です。 証拠が不十分だと、従業員から「能力不足ではないから解雇は無効だ」と解雇の効力を争われた場合に、能力不足を証明して解雇の有効性を認めてもらうことが難しくなります。

解雇権の濫用にあたらない

解雇が有効といえるためには、その解雇が解雇権の濫用にあたらないことが必要です。 従業員を解雇することが客観的にみて合理的ではなく、社会通念上、解雇が相当ではない場合は、「解雇権の濫用」にあたり、解雇は無効です。 解雇権の濫用にあたるかが裁判で争われた場合、以下のようなポイントが判断の基準となります。

  • 解雇した理由が、就業規則の解雇事由に当てはまるか(客観的・合理的理由があるか)
  • 解雇が本当にやむを得なかったのか、解雇以外の選択肢はなかったのか(社会通念上、相当といえるか)

会社は、できるかぎり、解雇を回避する措置を講じる必要があります。たとえば、教育や指導を実施したり、本人の能力に見合った業務に異動させたりするといった措置です。 解雇を回避する措置を実施しても改善する見込みがない場合は、解雇もやむを得ないと言えるでしょう。 あわせて、教育や指導を実施しても従業員の能力が改善されなかったことを証明する証拠を集めておきましょう。たとえば、教育や指導の内容、異動の事実、教育や指導があっても引き続き能力不足であったことを客観的に証明できる数値や言動などの記録です。 証拠が不十分だと、従業員から「能力不足ではないから解雇は無効だ」と解雇の効力を争われた場合に、解雇の有効性を認めてもらうことが難しくなります。 ただし、どの程度教育や指導などを実施すれば解雇することがやむをえないと評価されるかは、明確なラインを設定することが難しいので、可能であれば、合意の形で退職を促すことを検討してもよいでしょう。 その際は、合意の上での退職であったことを示す「退職合意書」を書面として残しておきましょう。詳しくは「自主的な退職という選択肢を示す」の項目に後述しています。

解雇が禁止されている期間にあたらない

次の期間内に解雇することは法律で禁止されています。期間中の解雇は無効と判断されます。

  • 仕事中のケガや仕事が原因で病気になった場合に、その療養のために休む期間と、その後30日間
  • 産前産後休業の期間と、その後30日間

ただし、災害などやむを得ない事情によって、会社の事業を続けることが不可能な場合には、解雇禁止の適用を受けません。 また、従業員の仕事上のケガや病気について、会社が直接治療費などを支払ったり、労災保険を利用して補償を受けているケースで、療養から3年が経っても治らない場合は、会社がその従業員の平均賃金の1200日分を支払えば、解雇禁止のルールが適用されません(打切補償)。 打切補償を支払ったあとは、従業員に対して、労災保険による医療費の支払いや休業補償をしなくてもよくなります。 打切補償を支払わなくても従業員を解雇できる場合もあります。従業員が、ケガや病気の療養を始めてから3年が経った時点で、傷病補償年金の支払いを受けている場合か、その時点以降に傷病補償年金の支払いを受けることになった場合です。 傷病補償年金の支払いを受けていることは、打切補償の支払いを受けていることと同じと見なされます。そのため、会社は、打切補償を支払わなくても従業員を解雇できます。

従業員のケガや病気が通勤中に負ったものである場合は、解雇禁止の対象にはなりません。

解雇をする30日前までに解雇の予告をするか、解雇予告手当を支払う

従業員を解雇するときには、少なくとも30日以上前から、従業員に解雇することを通知しなければなりません(解雇予告)。 たとえば、3月31日付けで解雇する場合、会社は遅くとも3月1日には解雇予告をする必要があります。 解雇予告をした日の翌日からカウントして、実際に解雇する日までの日数が30日間に満たない場合、足りない日数分の平均賃金を従業員に支払わなければなりません。このお金を「解雇予告手当」といいます。 ただし、次のような従業員を解雇する場合は、解雇予告手当を支払う必要はありません。

  • 14日未満の試用期間中に解雇された人
  • 4か月以内の季節労働者で、その期間内に解雇された人
  • 契約期間が2か月以内で、その期間内に解雇された人
  • 雇用期間が1か月未満の日雇い労働者で、その期間内に解雇された人

また、次のような事情がある場合も、解雇予告手当を支払う必要はありません。

  • 災害などで、会社の事業を続けることが不可能な場合で、労働基準監督署長の認定を受けた場合
  • 犯罪行為など、明らかに従業員側に非がある解雇で、労働基準監督署長の認定を受けた場合

自主的な退職という選択肢を示す

ここまで説明したとおり、従業員を解雇するためには、解雇が有効となるための条件を満たす必要があり、条件を満たすことを示す証拠を用意しておく必要があります。 しかし、実際にはこうした証拠がなかったり、あっても不十分だったりするために、解雇の有効性を争う上で会社側が不利なケースがあります。 働き続けてもらうことが難しい従業員がいる場合に、必ずしも解雇だけが有効な手段とは限りません。解雇にこだわりすぎず、よりソフトな対応を検討することも1つの方法です。 よりソフトな対応としては、従業員に対して、自主的な退職という選択肢を提示する方法があります。 従業員としても、解雇されると転職などに影響があることから、自主的に退職することにメリットがある場合があります。 ただし、退職の促し方が相当とはいえない場合には、退職強要として不法行為にあたる可能性があります。 退職強要にあたる場合、従業員から損害賠償を請求されるなどのリスクがあります。 たとえば、従業員を退職させようと、長時間にわたって説得したり、「退職しなければ解雇する」などと脅したりすることは避けましょう。 従業員が自主的な退職に合意した場合には、「退職合意書」を取り交わしておきましょう。後から「退職に合意した覚えはない」などと主張されてトラブルになるリスクを避けることができます。 退職勧奨に関する詳しい解説は、記事末尾のリンクをご覧ください。

弁護士への相談を検討する

従業員を解雇したい場合には、事前に弁護士に解雇のプロセスを相談することをおすすめします。 これまで説明したとおり、従業員を解雇するには、様々な条件を満たす必要があり、条件を満たさない場合には無効となります。 無効な処分を行なった場合、従業員から、その処分がなければ支払われたはずの賃金の支払いを請求されるなど、トラブルに発展するリスクがあります。 解雇をめぐる争いが裁判に発展すると、決着がつくまでには時間もお金もかかります。裁判を起こされたことが社内外に伝わることで、会社の評判や採用活動によくない影響が出る可能性もあるでしょう。 従業員を解雇する前に、弁護士に相談することを検討しましょう。弁護士に相談すると、解雇をめぐるトラブルを防ぐためのアドバイスを受けることができます。

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