競業避止義務

弁護士監修記事 2020年03月03日

【人事労務担当者向け】元従業員に競業避止義務違反を問えるケースと請求できること

退職した従業員が、同業他社に転職をしたり、競合となる会社を起業したりした場合、競業避止義務に反するとして差止請求や損害賠償請求ができます。

  • 競業避止義務とは
  • 退職した従業員に差止請求や損害賠償請求ができるケース

この記事では、上記のポイントについて詳しく解説します。

目次

  1. 競業避止義務とは
  2. 就業規則や誓約書の有効性を判断するポイント
    1. 競業禁止の目的
    2. 退職するときの従業員の仕事内容や役職
    3. 競業禁止の期間
    4. 地理的な制限
    5. 競業禁止の範囲
    6. 代償措置の有無
  3. 競業避止義務違反を理由に元従業員に請求できること
  4. 弁護士に相談する

競業避止義務とは

競業避止義務とは、会社と競合する他社の業務をしないという、従業員が負う義務のことです。 在職中の従業員は、就業規則に特に定めがない場合でも、一定の範囲で、競業避止義務を負っていると考えられています。たとえば、競合となる会社を設立しないことや、社内の情報を外部に漏らさないといった義務です。雇用契約上、従業員は会社に対して誠実に業務をすることが求められているからです。 退職した後の従業員は、原則として、競業避止義務を負いません。従業員には、仕事を決める自由(職業選択の自由)が憲法で認められているからです。 会社が退職後の従業員に競業避止義務を負わせるには、あらかじめ就業規則で定めておくことや、誓約書を従業員と交わすことなどが必要です。 たとえば、次のような規定です。

  • 「退職後○年間にわたり、会社と競合する事業を起業することや、同業他社への就職をしてはならない」

ただし、退職後の従業員に競業避止義務違反を問うためには、就業規則や誓約書の内容が有効であることが必要です。どのようなポイントをもとに有効性が判断されるのか、次の項で詳しく解説します。

就業規則や誓約書の有効性を判断するポイント

従業員が退職した後の競業を禁止する就業規則などの有効性について、裁判例では、主に次のような点を総合的に考慮して判断しています。

  • 競業禁止の目的
  • 退職するときの従業員の仕事内容や役職
  • 競業禁止の期間
  • 地理的な制限
  • 競業禁止の範囲
  • 代償措置の有無

簡単にいうと、就業規則や誓約書が、次のどれかに当てはまる場合には、裁判で争いになったときに無効と判断される可能性があります。

  • 元従業員の在職中の仕事内容や役職が、会社の秘密情報に接するようなものだった
  • 競業禁止期間が2年以上ある
  • 競業禁止の地域が限定されていない
  • 競業禁止の仕事内容や職種が具体的に示されていない
  • 割増退職金など、代償措置にあたる制度がない

具体的にどのような事情があればよいのか、裁判例を紹介します。

競業禁止の目的

一般的には、会社の秘密情報を守るために競業避止義務を課している場合は、その目的は正当だと考えられています。 たとえば、ボイストレーニングの教室を運営していた会社が、ボイストレーニングの指導方法・指導内容や集客の方法、生徒管理体制についてのノウハウを守るために競業避止義務を課していたケースで、裁判所は、こうした情報が「長期間にわたって確立されたもので独自かつ有用性が高い」として、目的は正当だと判断しました。

退職するときの従業員の仕事内容や役職

その従業員が、会社の秘密情報に接するような仕事や役職についていたかどうかも判断のポイントです。秘密情報に接しないのであれば、そもそも、競業避止義務を課す必要性がないからです。 たとえば、全国展開する家電量販店で店長や地区部長をつとめ、役員などで構成される営業会議にも出席していた従業員に退職後の競業避止義務を課していたケースで、裁判所は、会社の全社的な営業方針や経営戦略といった営業秘密を知ることができたことなどを理由に、競業避止義務を負わせる誓約書を有効だと判断しました。 このようなケースとは反対に、秘密情報に接するような役職でないのに、退職後も競業避止義務を課しているような場合は、その就業規則や誓約書などが無効と判断される可能性が高いでしょう。

競業禁止の期間

就業規則や誓約書で定めた競業禁止の期間が長すぎる場合、無効と判断される傾向があります。職業選択の自由に対する制限として重すぎると考えられるからです。 裁判例では、期間が1年以内の場合には、有効と判断される傾向にあります。 ただし、転職先が限られるような狭い業界では、競業禁止の期間が1年以内でも長いとして、就業規則が無効と判断された裁判例もあります。 競業禁止の期間が2年以上の場合、無効と判断される可能性が高まります。

地理的な制限

競業禁止の地域を限定していない場合、その就業規則や誓約書は無効とされる傾向があります。 ただし、地域の限定がない場合でも、全国的にチェーン展開する会社であることを理由に誓約書を有効とした裁判例もあります。

競業禁止の範囲

禁止する仕事の内容や職種を限定しているかどうかも、就業規則や誓約書が有効か無効かを判断するときの1つのポイントです。 仕事内容や職種を限定しておらず、禁止する範囲が広すぎる場合は、無効とされる傾向にあります。

代償措置の有無

競業避止義務を課す代わりに、その従業員に待遇面のメリット(代償措置)があったかどうかも、判断のポイントです。 裁判例では、退職後の独立支援制度や、通常の退職金に加えて割増退職金を支払うことなどが、代償措置にあたると判断したケースがあります。 代償措置にあたる措置を会社が何もしていない場合、競業避止義務は無効と判断される傾向にあります。

退職後の競業避止義務に関して、就業規則や誓約書で定めていない場合でも、不法行為に基づく損害賠償請求をできる可能性があります。また、従業員が退職後に会社の秘密情報を利用した場合、不正競争防止法を根拠に、損害賠償などを請求できる可能性があります。

競業避止義務違反を理由に元従業員に請求できること

競業避止義務を負わせる就業規則や誓約書が有効な場合、会社は、競業避止義務に違反した元従業員に対して、差止や損害賠償を求めることができる可能性があります。 差止請求とは、たとえば、元従業員が、会社の秘密情報として管理されている情報を持ち出して転職先で使用している場合に、その使用をやめさせるといったことです。 損害賠償請求とは、たとえば、元従業員が会社の秘密情報を転職先で使用したことが原因で損害(売上げの減少など)が発生した場合に、お金の支払いで損害を埋め合わせるよう求めることです。 ただし、損害賠償請求や差止請求は、当然に認められるわけではありません。 損害賠償請求が認められるには、会社の損害が生じた原因が元従業員の競業行為であることを証明する必要があります。 差止請求が認められるには、元従業員の競業行為によって、会社の営業上の利益が実際に侵害されているか、将来的に侵害されるおそれがあることを証明する必要があります。

弁護士に相談する

元従業員に対して、競業避止義務違反を理由に差止請求や損害賠償請求をしたい場合には、弁護士への相談をおすすめします。 これまで説明したとおり、競業避止義務違反を理由に、元従業員に損害賠償請求や差止請求をするには、様々な条件を満たす必要があります。 条件を満たしているかは個別の事情により異なるので、専門的な知識を有する弁護士に判断してもらう必要があります。 また、実際に差止請求や損害賠償請求をする場合には、損害がこれ以上拡大しないようにスピーディな対応が求められたり、損害を裁判所に証明するための証拠を集めたりするなど、やはり専門的な知識を有する弁護士の力が必要です。 弁護士への相談を検討しましょう。

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