歩合制の給与の考え方と残業代が発生するケース・計算方法を解説

実力主義を強く反映した「歩合制」を導入する企業は少なくありません。 歩合制に対して、「成果がなければ給与もゼロでも仕方ない」「どれだけ残業しても残業代は発生しない」と考えている人がいるかもしれませんが、そうではありません。 この記事では、歩合制の給与の考え方と、残業代が発生するケース・計算方法について詳しく紹介します。

目次

  1. 歩合制とは
  2. 一定の基本給は必ず支払われる
    1. 保障給は平均賃金の6割程度が望ましいと考えられている
  3. 歩合制の残業代
    1. 固定残業制が導入されている場合
  4. 残業代を請求する

歩合制とは

歩合制(出来高払制)とは、一般的には、仕事の成果に比例して給与が高くなる仕組みをいいます。 しかし、歩合制をといっても、雇用契約の場合、完全歩合制(成果がなければ給与もゼロ)は法律で禁止されており、残業代も残業時間に応じて請求することができます。

一定の基本給は必ず支払われる

正社員や契約社員、アルバイトなど、雇用契約を結んでいる従業員は、一定の基本給(「保障給」といいます)を必ず支払ってもらうことができます。 基本給ゼロの「完全歩合制」で雇用契約を結ぶことは法律で禁止されています。違反した場合、会社は30万円以下の罰金のペナルティを受ける可能性があります。 保障給の金額は、最低でも、都道府県ごとに定められている最低賃金を上回る金額である必要があります。 各都道府県の最低賃金は、厚生労働省の最低賃金に関する特設サイトで確認できます。

保障給は平均賃金の6割程度が望ましいと考えられている

保障給の水準については、「常に通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入」と考えられています。 休業の場合についても平均賃金の6割以上の手当を受けられることから、大体の目安として、歩合制でも少なくとも「平均賃金の6割程度」を保障することが妥当とされています。 このような水準を確保するように行政は企業に対して求めていますが、現状では、全ての企業でこの水準が保障されているわけではありません。

自動車運転者については、交通事故の防止対策の一環として、行政庁より明示的に、「歩合給制度が採用されている場合には、労働時間に応じ、固定的給与と併せて通常の賃金の6割以上の賃金が保障されるよう保障給を定めるものとする」よう指導されています。

雇用契約を結んでいるのに、会社から適切な保障給が支払われていない場合は、会社に支払いを求めることができます。自分で請求することが難しい場合は、弁護士や最寄りの労働局に相談しましょう。

歩合制の残業代

歩合制で働いていても、原則として、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働いた場合は、超えた時間に対して残業代・割増賃金が発生します。 つまり、従業員は、1日に8時間以上働いた場合と、週40時間以上働いた場合、保障給を時給に換算した額の「残業代」と、残業代に上乗せした「割増賃金」受け取ることができます。 割増賃金は、保障給を時給に換算した賃金に、最低でも25%を上乗せした賃金です。たとえば、時給が1000円であれば、時間外労働にあたる時間の時給は1250円です。

時給に上乗せする割合は、深夜(22時〜5時)に働いた場合や、休日に働いた場合などに、さらに上乗せされます。

固定残業制が導入されている場合

歩合制を導入している会社は、給与にあらかじめ想定した残業時間分の残業代を含める「固定残業代制度」を導入していることが少なくありません。 基本給と残業代の区分を明確に定めておくことと、区分して計算した残業代も法的な割増率を満たしていることが条件です。 固定残業代を定めた場合でも、想定の残業時間を超えた分に対しては、別途残業代の支払いが必要です。 固定残業代制度を適用するためには、就業規則などで基本給と残業代の区分を明確に定めることや、何時間分の残業代を含むとするかを記載する必要があります。

残業代の計算方法

固定残業代が支払われている場合でも、次の場合は、固定残業代の他に、残業代・割増賃金が発生します。

  • 固定残業として定められた時間以上に残業した場合
  • 深夜(22時〜5時)に働いた場合
  • 法定休日に働いた場合

どのように計算すればよいのか、簡単な例を紹介します。

時給の計算方法や休日の考え方など、残業代を計算するために確認が必要な点がいくつかありますが、固定残業における残業代をイメージしてもらうために、ここでは詳細は省いて解説します。時給の計算方法や休日の考え方については、別に詳しく解説した記事があるので、そちらを参考にしてみてください。記事の末尾に参考リンクを掲載してあります。

固定残業として定められた時間以上に残業した場合

固定残業として定められた時間を超えて残業した場合、超えている部分は時間外労働となるので、超えた部分の時間に別途残業代が発生します。 具体的には、超えた部分の時間に対して、時間外労働した場合の割増賃金率(25%以上)を時給に上乗せした割増賃金が生じます。 たとえば、以下のようなケースで計算してみましょう。

  • 固定残業代は5万円(40時間)
  • 実際の残業時間は50時間だった
  • 月給から換算した時給は1000円
  • 時間外労働の割増賃金率は25%

この場合、固定残業として定められた時間(40時間)に対し、実際には50時間残業しているので、10時間分の割増賃金が別途発生します。具体的な計算式は以下のようになります。 10時間 × 1000円 × 1.25 = 1万2500円 固定残業として定められた時間を超えて残業した時間(10時間)に対し、1万2500円の割増賃金が、固定残業代とは別に生じることになります。

深夜(22時〜5時)に働いた場合

深夜(22時〜5時)に働いた場合は、働いた時間に対して、基礎時給に深夜労働した場合の割増賃金率(25%以上)をかけて計算します。 たとえば、以下のようなケースで計算してみましょう。

  • 固定残業代は5万円(40時間)
  • 1か月の残業時間は30時間だった
  • 残業時間のうち、深夜(22時〜5時)の残業は10時間だった
  • 月給から換算した時給は1000円
  • 深夜労働の割増賃金率は25%

この場合、固定残業代に含まれた残業時間の範囲内ですが、深夜労働の割増分について別途賃金が発生します。具体的な計算式は以下のようになります。 10時間 × 1000円 × 0.25 = 2500円 このように、固定残業代の範囲内の残業であっても、別途2500円分の深夜残業代が生じることになります。

「法定休日」に働いた場合

労働基準法では、従業員が最低でも1週間に1回、または、4週間に4回以上の休みを得られるよう定めています(法定休日)。 多くの会社で週休2日制を採用していますが、法律で定めれられた休日(法定休日)は週1日であり、残り1日は会社が定めた「所定休日」です。 法定休日の曜日は、就業規則や雇用契約書を確認してみましょう。記載がない場合、土日が休みの会社であれば、日曜日を法定休日としていることが多いです。 法定休日に労働した場合は、働いた時間に対して、法定休日に労働した場合の割増賃金率(35%以上)を基礎時給に上乗せした割増賃金が生じます。 法定休日に出勤した場合の割増賃金について、以下のようなケースで計算してみましょう。

  • 固定残業代は5万円(40時間)
  • 休日以外の残業時間は20時間
  • 日曜日が法定休日になっている
  • 日曜日に4時間働いた
  • 月給から換算した時給は1000円
  • 法定休日に働いた場合の割増賃金率は35%

固定残業時間には、法定休日の労働時間を含むことができません。そのため、月の残業時間が、固定残業で決められた時間の範囲内でも、法定休日に働いた場合は、その時間分の残業代と割増賃金がフルで発生します。 計算式は以下のようになります。 4時間 × 1000円 × 1.35 = 5400円 固定残業代とは別に、法定休日の残業代・割増賃金が生じることになります。

一方、会社が定める法定休日以外の休日(所定休日)に働いた場合は、固定残業の時間の範囲内に収まっている限りは、残業代・割増賃金は別途発生しません。

残業代を請求する

具体的に未払いの残業代を請求する方法については、この記事の下の関連記事で解説しています。

  • 参考リンク

厚生労働省 最低賃金の特設サイト

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