フレックスタイム制で働いている人が残業代を計算する方法

「自分の未払いの残業代がいくらか」を計算するためには、自分の労働時間、残業時間を正確に把握して計算する必要があります。

  • フレックスタイム制とは何か
  • 労働時間を把握する方法
  • 残業代の計算方法

この記事では、これらのポイントについて詳しく紹介します。

目次

  1. フレックスタイム制とは?
    1. 労働時間を把握する方法
  2. 残業代の計算方法
    1. 残業代の計算式
    2. 残業代の計算例
    3. 清算期間の設定が1か月を超える場合
    4. 割増賃金は深夜労働や休日労働などでさらに加算される
    5. 割増賃金の計算方法
    6. 残業時間が1か月に60時間を超えている場合
  3. 基礎時給の計算方法
    1. 月給から除外される賃金がある
    2. 1か月の平均所定労働時間の出し方
  4. 残業代を請求する

フレックスタイム制とは?

本来、従業員の始業時刻と終業時刻は、「9時から17時」といったように、固定されていることが通常です。 これに対して、「フレックスタイム制」は、始業時間・終業時刻を、従業員が自分で決めることができる制度です。 従業員にとっては、通勤ラッシュを避けて余裕をもって通勤できたり、通院や子の世話をしてから出社できたりするなど、私生活と仕事との調和を図るメリットがあると考えられています。 フレックスタイム制を導入している会社は、「従業員が選択して労働することができる時間帯(フレキシブルタイム)」を定めています。これに加えて、「労働しなければならない時間帯(コアタイム)」を定めているケースもあります。 たとえば、次のようなケースです。 フレックスタイム制の例 この場合、従業員は、「コアタイム」である11時から16時までは、休憩時間を除き必ず労働する必要があります。その代わり7時から11時、16時から22時の間で、出社・退社の時間を調整できることになります。 このとき考えられる勤務時間は、たとえば次のようになります。

  • 7時〜16時(労働時間8時間/休憩時間1時間)
  • 11時〜20時(労働時間8時間/休憩時間1時間)

労働時間を把握する方法

フレックスタイム制では、「ある日は5時間だけ働いて退社したけど、別の日は10時間働いた」というように、日によって労働時間に差がでてきます。 そのため、会社は、週や月など、あらかじめ定めた一定の期間で、従業員が働くべき時間を設定します。一定の期間のことを「清算期間」といい、清算期間中に働くべき時間を「所定労働時間」といいます。 清算期間は、最長で3か月を一つの単位として設定することができます。

清算期間について、これまでは1か月を一つの単位として設定していましたが、2019年4月1日から、最長で3か月を一つの単位として設定できるようになりました。

所定労働時間は、「週40時間以内」という法律で定められた労働時間(法定労働時間)の上限におさまるように設定する必要があります。 3か月までの法定労働時間の上限は以下のようになります。

  • 1か月を清算期間にした場合

    1か月の日数 法定労働時間の上限
    31日 177.1時間
    30日 171.4時間
    29日 165.7時間
    28日 160時間

  • 2か月を清算期間にした場合

    1か月の日数 法定労働時間の上限
    62日 354.2時間
    61日 348.5時間
    60日 342.8時間
    59日 337.1時間

  • 3か月を清算期間にした場合

    1か月の日数 法定労働時間の上限
    92日 525.7時間
    91日 520時間
    90日 514.2時間
    89日 508.5時間

商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業など特定の事業で、従業員数が10人未満の事業所の場合は、法定労働時間の上限は44時間となっています。

残業代の計算方法

まず、「残業代」とひとくちに言っても、その内訳は、残業代割増賃金という2種類に分けることができます。 残業代は、原則として1分でもしたら発生します。月給を時間単位に換算しなおして計算します。 割増賃金は、月給を時給に換算した賃金に、最低でも25%を上乗せした賃金です。 たとえば、時給換算が1000円の場合、時間外労働にあたる時間の時給は1250円(残業代1000円+割増賃金250円)です。 通常の、始業時間と就業時間が決まっている働き方だと、原則として、1日8時間・週40時間(法定労働時間)を超える労働をした場合には、残業代が発生します。 たとえば、一週間の労働時間は、40時間以内におさまっていても、ある日の労働時間が10時間だったとしたら、2時間分の残業代と割増賃金が発生します。 一方、フレックスタイム制では、清算期間中に実際に働いた時間が、所定労働時間や法定労働時間の上限を超えた場合に残業代や割増賃金が発生します。 たとえば、「1日12時間働いた」という日があったとしても、清算期間中に実際に働いた時間が、所定労働時間や、法定労働時間の上限におさまっていれば、残業代・割増賃金は発生しません(深夜・休日の割増賃金は除きます)。

時給に上乗せする割合は、深夜(22時〜5時)に働いた場合や、休日に働いた場合などに、さらに上乗せされます。

残業代の計算式

残業代の計算式は次のとおりです。

残業代= 残業時間 × 基礎時給 × 割増賃金率
原則として、
1分単位で計算
月給ー除外賃金
ーーーーーーーーーー
1か月の平均所定労働時間
1.25
(〜1.75)

残業代の計算例

たとえば、以下のようなケースで考えてみましょう。

  • 基礎時給は1000円
  • 清算期間は1か月(31日・法定労働時間の上限は177.1時間)
  • 会社が定めた清算期間中に労働すべき時間(所定労働時間)は160時間
  • 清算期間中の実際の労働時間は180時間
  • 割増賃金の割合は25%

このケースの残業時間は、実際の労働時間(180時間)から所定労働時間(160時間)を引いた20時間となります。 残業代と割増賃金は、残業時間を以下の2つの時間に分けて計算します。

  1. 所定労働時間(160時間)を超えて、法定労働時間の上限(177.1時間)におさまる範囲の時間(17.1時間)
  2. 法定労働時間の上限を超える時間(2.9時間)

このうち、17.1時間の残業は法定労働時間の上限を超えていないため、割増賃金が発生しません。つまり、1時間あたりの残業代は1000円です。 一方、2.9時間は、法定労働時間の上限を超えているため、割増賃金が発生します。割増賃金の割合は25%なので、1時間あたりの残業代・割増賃金は1250円(1000 × 1.25)です。 図にすると次のようになります。 残業代・割増賃金が発生するケース

清算期間の設定が1か月を超える場合

清算期間中に実際に働いた時間が、所定労働時間や法定労働時間の上限を超えていなくても、清算期間を1か月を超える長さで設定している場合は、残業代・割増賃金が発生する可能性があります。 具体的には、清算期間中に、1か月間の労働時間が「週平均で50時間」を超えた月がある場合です。「週平均で50時間」を超えた場合は、清算期間の途中でも、その月の給与に、残業代や割増賃金が支払われます。 「週平均で50時間」になる1か月の労働時間は、以下の表のようになっています。

1か月の日数 週平均で50時間となる1か月の労働時間
31日 221.4時間
30日 214.2時間
29日 207.1時間
28日 200時間

たとえば、清算期間を3か月(4月〜6月)で、実際に働いた時間が法定労働時間の上限(90日:514.2時間)を下回っていても、5月の労働時間が230時間だった場合、8.6時間分(230時間 - 221.4時間)の残業代・割増賃金が発生するのです。

割増賃金は深夜労働や休日労働などでさらに加算される

深夜労働や休日労働の条件にあてはまる場合は、割増賃金率はさらにあがります。 たとえば、深夜(22時〜5時)に時間外労働をおこなった場合、割増賃金率は50%(25%+25%)以上になります。労働基準法に基づくと、最大で75%以上まで上がります。 ただし、会社によっては、割増賃金率などが労働基準法より有利に定められているケースもあります。まずは、会社の就業規則・賃金規定を確認しましょう。

割増賃金の種類 割増賃金率 条件
(法定)時間外労働 +25%〜 法定労働時間を超えて働いた場合
深夜労働 +25%〜 22時〜5時に働いた場合
(法定)休日労動 +35%〜 法定休日に働いた場合
月60時間を超える時間外労働 +50%~ 月60時間を超える時間外労働をした場合
(※一部の中小企業は対象外)

時間外労働と法定休日の割増賃金率は重複しません。たとえば、法定休日に法定労働時間を超える9時間の労働をしたとしても、賃金は35%以上の割増です。

「法定休日」とは

労働基準法では、従業員が最低でも1週間に1回、または、4週間に4回以上の休みを得られるよう定めています。 多くの会社で週休2日制が取り入れられていますが、法律で定めれられた休日は週1日であり、残り1日は会社が定めた所定休日です。 法定休日に労働した場合は、35%以上の割増賃金が発生します。法定休日の曜日は就業規則や雇用契約書を確認してみましょう。 記載がない場合は、土日休みの会社であれば、日曜日を法定休日として計算されることが多いです。 なお、休日出勤をした場合でも、その後に取得した休暇が「振替休日」「代休」かによって、割増賃金が発生するかどうかが異なります。

「振替休日」とは

「振替休日」とは、あらかじめ休日と定められていた日を労働日として、その代わりに他の労働日を前もって休日にしておくことをいいます。 つまり、前もって「休日」と「労働日」を入れ替えておくことが「振替休日」です。 振替休日 「振替休日」を取得した場合は、たとえば、法定休日の日曜日に出勤していたとしても、その日は「労働日」として扱われているため、休日出勤にはあたりません。つまり、割増賃金が発生しないことになります。

  • 日曜日:通常の労働日と同じ扱いです。休日労働にはあたらないため、休日労働としての割増賃金は発生しません。
  • 水曜日:通常の休日と同じ扱いです。
「代休」とは

一方で、「代休」は、突発的に業務にあたる必要が生じ、あらかじめ休日の振替先が指定されないで休日に働いたような場合に、その代わりに後で特定の労働日を休みにすることです。 代休 「代休」を取得した場合は、あらかじめ休日と労働日を入れ替えていないので、法定休日の場合は35%の割増賃金が発生します。

  • 日曜日:休日労働にあたるため、35%以上の割増賃金が必要です。
  • 水曜日:代休は無給扱いになるため、この日は給与が発生しません。

なお、法定休日以外の休日に働いた場合でも、法定労働時間を超えた時間外労働であれば、25%の割増賃金が発生します。

割増賃金の計算方法

ここまで割増賃金の仕組みを紹介してきましたが、実際にはどのように計算すればいいのか、主な残業のパターンを例に具体的に確認していきましょう。 残業の割増賃金パターン

残業のパターン 係数 (例)時給1500円の場合
法定時間外労働にあたらない残業 ×1 1500円
かつ深夜労働にあたる残業 ×1.25〜 1875円
法定時間外労働にあたる残業 ×1.25〜 1875円
かつ深夜労働にあたる残業 ×1.5〜 2250円
法定休日労働にあたる残業 ×1.35〜 2025円
かつ深夜労働にあたる残業 ×1.6〜 2400円

残業時間が1か月に60時間を超えている場合

法定時間外労働が1か月に60時間を超えると、割増賃金率は50%以上になります。 ただし、法律の経過措置として、次の表の業種で、①②のどちらかの条件をみたす中小企業は、現状このルールが適用されていません。適用されるのは2023年4月1日からの予定です。

業種 ①資本金(または出資)の額 ②従業員の数
小売業 5000万円以下 50人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他 1億円以下 300人以下

次は、この「60時間ルール」が実際にはどのように適用されるのか確認しましょう。 月の残業が60時間を超えている場合の残業の割増賃金パターン

残業のパターン 係数 (例)時給1500円の場合
時間外労働にあたる残業 ×1.5 2250円
かつ深夜労働にあたる残業 ×1.75 2625円

⑦の時間外労働にあたる残業が4時間で、⑧の深夜労働にあたる残業が1時間です。 曜日ごとに残業代を計算すると、次のようになります。

  • 2250円 × 4時間 + 2625円 × 1時間 = 1万1625円

基礎時給の計算方法

残業代・割増賃金は時間・分で計算するので、「月給制の場合はどう計算すればいいの?」という疑問もあるでしょう。 月給制の場合は、まず、「基礎時給」を算出する必要があります。 計算式は次のようになります。

残業代= 残業時間 × 基礎時給 × 労基法上の最低の最低割増賃金率
原則として、
1分単位で計算
月給ー除外賃金
ーーーーーーーーーー
1か月の平均所定労働時間
1.25
(〜1.75)

月給から除外される賃金がある

ひとくちに「月給」といっても、「家族手当」「通勤手当」など、会社からは給与の他にもさまざまな名目で手当や賃金が支給されます。 基礎時給を計算するうえで、これらの手当や賃金の中には、月給から差し引いて計算するものがあります。 ただし、除外される手当にあたるかどうかは、実質的に判断する必要があると考えられています。 名目上「家族手当」「通勤手当」と支給されている場合であっても、こうした手当に当たらないケースがあるということです。 たとえば、「家族手当」という名目で支給されている手当でも、家族構成や員数に関係なく一律に支給されているといった事情があれば、実質的には「家族手当にはあたらない=除外されない」ということになります。 次の表は、除外されないケースの一例です(②)。

①除外される手当・賃金 ②除外されないケース
家族手当(扶養手当など) ・独身者にも支給されている
・家族の人数に関係なく一律で支給されている
通勤手当 通勤の距離や交通手段に関係なく、一定額が一律に支給されている
別居手当(単身赴任手当など) 別居の有無に関らず、一律に支給されている
子女教育手当 家族構成などの個別事情によらずに、一律に支給されている
住宅手当 持ち家か賃貸かの違い、住宅ローン、家賃の額といった個別的事情を反映していない
臨時に支払われた賃金 ・次の条件に該当しない賃金
(1)臨時的、突発的事由に基づいて支払われた、
(2)結婚手当など、支給条件はあらかじめ確定されているが、支給する条件が発生が不確定で、かつ、とてもまれに発生するもの
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス・賞与など) 年俸制の場合などで最初から賞与額が決まっている場合

最低賃金を下回っていないかも確認する

基礎時給を計算した結果「こんなに時給が低いのか…」と感じた場合は、最低賃金を下回っていないかどうかも確認するとよいでしょう。 基礎時給が最低賃金を下回っていた場合、最低賃金法で定められた最低賃金との差額も合わせて請求できます。詳しくは、厚生労働省の最低賃金に関する特設サイトで確認できます。

1か月の平均所定労働時間の出し方

1年間の所定労働時間を計算し、12(か月)で割ってください。うるう年の場合は「366」日で計算します。

  • (365日ー1年間の所定休日数)×1日の所定労働時間 ÷ 12

残業代を請求する

ここまでの説明で、本来受け取れるはずの残業代が計算できたと思います。 給与明細などで、実際に支払われている残業代が、受け取れるはずの残業代よりも少ない場合、未払いの残業代が発生していることになります。 未払いの残業代がある場合は、会社に対して、支払いを請求しましょう。 未払いの残業代を請求する方法については、この記事の下の関連記事で解説しています。

  • 参考リンク

厚生労働省 最低賃金の特設サイト

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