
仕事のストレスでうつ病になり自殺した場合に労災保険を利用できるケース
家族が仕事のストレスでうつ病などの精神的な病気になり自殺によって死亡した場合、いわゆる過労死として、労災保険から遺族年金などの補償を受けられる可能性があります。 どのような場合に労災保険を利用できるのか、過労死と認められる基準を詳しく解説します。
目次
過労死とは
いわゆる過労死と言われるものには、次の2つがあります。
- 仕事による過重な負荷による脳血管疾患や心臓疾患を原因とする死亡
- 仕事による強いストレス(心理的負荷)による精神障害を原因とする自殺による死亡
この記事では、2.精神障害を原因とする自殺によって死亡した場合について解説します。
過労によって精神障害となったけれど死亡に至らなかった場合には、精神障害になったこと自体を労働災害として、労災保険の補償を受けられる可能性があります。この記事の下の関連記事で詳しく説明しています。
過労死の場合に労災保険から受けられる補償
労災保険を使うと、次のような補償を受けることができます。
補償の対象 | 仕事中(業務災害) | 通勤中(通勤災害) |
---|---|---|
葬式費用 | 葬祭料 | 葬祭給付 | 従業員が亡くなったこと | 遺族補償年金 | 遺族年金 | 遺族特別年金 | 遺族特別支給金 | 年金を受け取る遺族がいない場合など | 遺族補償一時金 | 遺族一時金 |
葬式の費用
葬式の費用として「葬祭料」が支払われます。
遺族年金など
遺族に対し年金などが支払われます。遺族補償年金といいます。 「遺族補償年金」は亡くなった方の給料をもとに計算されます。このほか、ボーナスをもとに計算した「遺族特別年金」、一時金として支払われる「遺族特別支給金」があります。
労災保険から遺族補償年金を受け取る場合でも、別途、国民年金(厚生年金)からも遺族年金を受け取ることができます。ただし、金額が調整されて全額を受け取れない場合があります。
どのような場合に過労死と認められるのか
仕事のストレスにより精神的な病気になったこと自体が労災として認められような場合には、その後に自殺を図って死亡したことについても、原則として、労災(過労死)と認められます。
精神的な病気になったこと自体が労災として認められるには、次の条件にあてはまることが必要です。
- 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
- 病気になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレスが認められること
- 仕事以外のストレスや本人側の原因により病気になったとは認められないこと
認定基準の対象となる精神障害を発病していること
認定基準の対象となる精神障害については、この記事の下の関連記事をご覧ください。
病気になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレスが認められること
病気になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレスあったかどうかを判断する方法については、この記事の下の関連記事をご覧ください。
仕事以外のストレスや本人側の原因により病気になったとは認められないこと
仕事による強いストレスがあったと認められる場合でも、仕事以外にも大きなストレスがあったといえるケースでは、労災だと認められない場合があります。 仕事以外にもストレスがあったかどうかの判断方法については、この記事の下の関連記事をご覧ください。 また、精神障害の既往歴やアルコール依存症など、本人の側にも病気となる原因があるケースでも、労災だと認められない場合があります。 このような場合に労災を利用できるかどうかは、労災認定を行なう労働基準監督署が判断しますが、どちらの場合も慎重に判断されることになっています。
過労死かもしれないと思ったら弁護士に相談する
もしかしたら過労死かもしれないと思った場合には、弁護士に相談することおすすめします。
労災保険を利用するためには、労災保険を申請するための手続きを行ないます。
その際、過労死であることを裏づけるための証拠を一緒に提出すると、過労死だと認めてもらえる可能性が高まります。
たとえば、病気を証明するための診断書や、長時間労働を証明するためのタイムカードの記録、業務内容を証明するためのメール、職場の同僚の証言などがあります。
どのような証拠を揃えればよいかは、個別の事情によって様々です。
弁護士に相談すると、どのような証拠が必要か、どのように手続きを進めればよいかについて、アドバイスをもらうことができます。
過労死の場合には、労災保険を利用することとは別に、会社に対して慰謝料の支払いなどを求めて訴えることができます。労災の手続きと併せて検討してみてもよいでしょう。