労災

弁護士監修記事 2019年06月24日

仕事のストレスでうつ病などになった場合に労災が利用できる条件と具体例

長時間労働やセクハラ・パワハラなど、仕事のストレスでうつ病や適応障害などの精神的な病気になった場合、労災保険によって治療費や仕事を休んだことによる収入減を補償してもらうことができるケースがあります。 この記事では、労災を利用できる条件と具体例について、この記事で詳しく解説します。

目次

  1. 労災とは
  2. 労災保険で受けられる補償の内容
    1. 治療費が全額、国から支払われる
    2. 病気で仕事を休んだために減った分の収入が支払われる
    3. 後遺障害が残った場合
  3. 精神的な病気の場合に労災を利用できる条件
    1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
    2. 病気になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレスが認められること
    3. 仕事以外のストレスや本人側の原因により病気になったとは認められないこと
  4. 労災が利用できた具体例
  5. プロジェクトリーダーに昇格し新規業務の担当となったが長時間労働も相まって適応障害になった事例
    1. 1. 認定基準の対象となる精神障害を発病している
    2. 2. 病気になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレスが認められる
    3. 3. 仕事以外のストレスや本人側の原因により病気になったとは認められない
  6. 異動先の上司に「辞めてしまえ」「死ね」などと言われ書類を投げつけられてうつ病になった事例
    1. 1. 認定基準の対象となる精神障害を発病している
    2. 2. 病気になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレスが認められる
    3. 3. 仕事以外のストレスや本人側の原因により病気になったとは認められない
  7. 労災を利用したい場合には弁護士に相談する

労災とは

労災保険は、従業員が仕事のうえでケガや病気になった場合に、会社に代わって医療費や休業補償を行なうための保険です。 労災保険に加入しているかどうかは、厚生労働省のサイトで確認できます。 会社が労災保険の届出や保険料の支払いをしていないこともありますが、そのような場合でも、被害者は労災保険から治療費などの支払いを受けることができます。

労災保険で受けられる補償の内容

労災保険を使うと、次のような補償を受けることができます。

補償の対象 補償の名前
治療費 療養補償給付
仕事を休んで減った収入 休業補償給付
休業特別支給金

治療費が全額、国から支払われる

労災保険を使うと、病気の治療費が全額、国から支払われます。「療養補償給付」といいます。 「労災指定病院」を受診すれば無料で治療を受けることができ、自分で費用を立て替える必要もありません。 労災指定病院は、厚生労働省のホームページから探すことができます。 労災指定病院ではない病院を受診した場合は、いったん治療費を自分で立て替えなければなりませんが、後から労働基準監督署に請求することで、立て替えた分が全額支払われます。 気をつけたいのは、通常病院で治療を受ける場合は健康保険により3割負担となりますが、労災保険を使う場合には健康保険を使えないため、治療費が全額(10割)負担になることです。 後から労基署に全額請求できるとはいえ、立て替える金額が大きくなるため、経済的余裕がない場合は、労災指定病院を受診するとよいでしょう。

病気で仕事を休んだために減った分の収入が支払われる

労災保険を使うと、病気で仕事を休んだ分の損害もカバーしてもらえます。 仕事を4日以上休んだ場合に、4日目以降の休業日について、「仕事を休まなければ得ることができたはずの収入」が支払われます。「休業補償給付」といいます。 これらの給付は通常、給料の6割が支払われます。

仕事を休んだ1日目から3日目までの分は、仕事中の事故の場合には事業主(会社)に支払ってもらえます。

さらに、休業補償給付とは別に、給料の2割にあたる金額が「休業特別支給金」として支払われます。

後遺障害が残った場合

治療をしたけれど完治せずに症状が残った場合、後遺障害と認められれば後遺障害が残ったことに対するお金や介護が必要になった場合の費用が支払われます。 後遺障害が残った場合の補償の内容や手続きについて、詳しくはこの記事の下の関連記事で解説しています。

精神的な病気の場合に労災を利用できる条件

労災を利用するには、仕事によって病気になったことが「労働災害」にあたると認定されなければなりません。 精神的な病気の場合には、次の条件を満たす場合に、労働災害にあたると認定されます。

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  2. 病気になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレスが認められること
  3. 仕事以外のストレスや本人側の原因により病気になったとは認められないこと

認定基準の対象となる精神障害を発病していること

労災を利用するためには、認定基準の対象となる精神障害に当てはまることが必要です。 認定基準の対象となる精神障害については、この記事の下の関連記事をご覧ください。

病気になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレスが認められること

労災を利用するためには、病気になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレス(心理的負荷)が認められることが必要です。 具体的には、強いストレスの原因となる出来事が6か月の間にあったかどうかを判断します。 詳しくはこの記事の下の関連記事をご覧ください。

仕事以外のストレスや本人側の原因により病気になったとは認められないこと

仕事による強いストレスがあったと認められる場合でも、仕事以外にも大きなストレスがあったといえるケースでは、労災を利用できない場合があります。 仕事以外にもストレスがあったかどうかの判断方法については、この記事の下の関連記事をご覧ください。 また、精神障害の既往歴やアルコール依存症など、本人の側にも病気となる原因があるケースでも、労災を利用できない場合があります。 このような場合に労災を利用できるかどうかは、労災認定を行なう労働基準監督署が判断しますが、どちらの場合も慎重に判断されることになっています。

労災が利用できた具体例

仕事で精神的な病気になった場合に労災が利用できた事例が、厚生労働省のパンフレットに掲載されているので、紹介します。

プロジェクトリーダーに昇格し新規業務の担当となったが長時間労働も相まって適応障害になった事例

AさんのケースAさんは、大学卒業後、デジタル通信関連会社に設計技師として勤務していました。3年目にプロジェクトリーダーに昇格し、新たな分野の商品開発に従事することとなりました。

しかし、その商品開発では、その会社にとって初めての技術が多く、設計は難航しました。
Aさんの帰宅は翌日の午前2時頃に及ぶこともありましたが、会社から特段の支援はありませんでした。Aさんの1か月当たりの時間外労働時間数は90〜120時間でした。

新プロジェクトに従事してから約4か月後、Aさんは、抑うつ気分、食欲低下といった症状が生じ、心療内科を受診したところ「適応障害」と診断されました。

このようなケースでは、次のような判断により、Aさんは労災認定されました。

1. 認定基準の対象となる精神障害を発病している

適応障害は、労災の認定基準の対象となっています。

2. 病気になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレスが認められる

関連記事でも詳しく説明していますが、仕事による強いストレスが認められるためには、病気になる前のおおむね6か月の間に起きたストレスの原因となる出来事が、労災認定基準の「特別な出来事」または「具体的な出来事」にあたり、ストレスの度合いが「強」と評価される必要があります。 Aさんのケースでは、新たな分野の商品開発のプロジェクトリーダーとなったことは、「特別な出来事」にはあたりませんが、「具体的な出来事」の「10. 新規業務の担当になった、会社の建て直しの担当になった」に該当します。 Aさんの場合、失敗した場合に大幅な業績悪化につながるわけではなかったので、ストレスの度合いが「中」である例の「新規事業等の担当になった」に合致します。 さらに、この出来事に恒常的な長時間労働(月100時間程度となる時間外労働)も認められることから、総合評価は「強」となりました。

3. 仕事以外のストレスや本人側の原因により病気になったとは認められない

Aさんのケースでは、病気になる直前に妻が交通事故で軽傷を負う出来事がありましたが、そのほかに仕事以外のストレスや、本人側の原因は顕著なものはありませんでした。 これらの理由から、Aさんは労災認定されました。

異動先の上司に「辞めてしまえ」「死ね」などと言われ書類を投げつけられてうつ病になった事例

BさんのケースBさんは、総合衣料販売店に営業職として勤務していました。異動して係長に昇格し、主に新規顧客の開拓などに従事することになりました。

新部署の上司はBさんに対して連日のように叱責を繰り返しました。その際には「辞めてしまえ」「死ね」といった発言や、書類を投げつけるなどの行為を伴うことも度々ありました。

Bさんは係長に昇格してから3か月後、抑うつ気分、睡眠障害などの症状が生じ、精神科を受診したところ「うつ病」と診断されました。

このようなケースでは、次のような判断により、Bさんは労災認定されました。

1. 認定基準の対象となる精神障害を発病している

うつ病は、労災の認定基準の対象となっています。

2. 病気になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレスが認められる

うつ病になる前のおおむね6か月の間に、仕事による強いストレスが認められました。 具体的には、Bさんに対する上司の「辞めてしまえ」「死ね」といった発言や、書類を投げつけるといった行為は、「特別な出来事」にはあたりませんが、業務指導の範囲を超えているので、「具体的な出来事」の「29. (ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」に該当します。 Bさんの上司のこれらの言動には、人格や人間性を否定するような発言が含まれており、それが執拗に行なわれている状況も認められることから、ストレスの度合いが「強」である例の「部下に対する上司の言動が、業務範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行なわれた」に当てはまるので、ストレスの度合いは「強」と評価されます。

3. 仕事以外のストレスや本人側の原因により病気になったとは認められない

Bさんのケースでは、仕事以外のストレスや、本人側の原因は、顕著なものはありませんでした。 これらの理由から、Bさんは労災認定されました。

労災を利用したい場合には弁護士に相談する

仕事で精神的な病気になった場合に労災を利用したい場合には、弁護士に相談することおすすめします。 労災を利用するためには、労災を申請するための手続きを行ないます。 その際、労災を利用できる条件を満たすことを裏づけるための証拠を一緒に提出すると、労災を利用できる可能性が高まります。 たとえば、病気を証明するための診断書や、長時間労働を証明するためのタイムカードの記録、セクハラを証明するためのメールの記録や録音などがあります。 どのような証拠を揃えればよいかは、個別の事情によって様々です。 弁護士に相談すると、どのような証拠が必要か、どのように手続きを進めればよいかについて、アドバイスをもらうことができます。

セクハラやパワハラを受けた場合などには、労災を利用することとは別に、会社に対して慰謝料の支払いなどを求めて訴えることができます。長時間労働など過労による場合には、会社の安全配慮義務違反による損害賠償を求めることができます。労災の手続きと併せて検討してもよいでしょう。

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