不当解雇

弁護士監修記事 2019年04月26日

不当解雇を争う手段 l 労働審判やあっせんの手続きの流れを詳しく解説

解雇に納得できず「不当解雇だ」と主張したいと考えても、復職を望む場合などは、いきなり裁判を起こして会社と対立することに抵抗がある人もいるでしょう。 不当解雇を主張する方法は、直接交渉や裁判だけではありません。労働審判や「あっせん」など、裁判よりもソフトで早い解決を期待できる手段もあります。 金銭解決を望むのか、それとも復職を望むのか、それぞれに適した手段と手続きの流れを詳しく解説します。

目次

  1. 不当解雇を主張する手段
  2. 「あっせん」手続きの流れと利用方法
    1. あっせんとは
    2. あっせんの流れ
  3. 「労働審判」の流れと利用方法
    1. 労働審判には3パターンの結末がある
    2. 労働審判の流れ
    3. 「不当解雇」を争うために労働審判を利用したいと考えたら
    4. 労働審判に弁護士は必要?
    5. 会社と話合いができない場合、労働審判は難しい
  4. 解雇された事実を証明する「証拠」が必要
    1. 解雇理由証明書以外に役立つ証拠
  5. どの手続を選ぶとしても、まず弁護士に相談を
  6. 生活費に不安を抱えている場合

不当解雇を主張する手段

解雇に納得ができず、「不当解雇だ」と会社に主張したくても、会社と直接交渉することは難しいということもあるでしょう。 そうしたとき、労働問題の紛争については、裁判だけでなく、労働審判やあっせんといった手段を活用することができます。 不当解雇のフロー図

「あっせん」手続きの流れと利用方法

復職を望む場合、会社との関係をいたずらに悪化させたくないと考える人も少なくないでしょう。そのため、会社との対立がはっきりする裁判などの公的な手段を選ぶのではなく、よりソフトな手段から利用することをお勧めします。 まずは、会社の相談窓口への相談、もしくは労働組合が団体交渉してくれないか検討してみましょう。 社内の手段で解決が難しい場合でも、都道府県の労働局・労働委員会などに「あっせん」などの手段を活用することも考えられます。

あっせんとは

あっせんは、労働者と会社の間に専門家が入り、労働紛争の円満な解決を目指す行政の制度です。 個別の労働紛争を解決する手段としてのあっせんは、労働局の紛争調整委員会が行うもの、労政主管部局が行うもの、労働委員会が行うものの3種類があります。 手続きの流れ・仕組みはおおむね共通しています。この記事では、手続きとしてもっとも多く利用されている労働局の紛争調整委員会のあっせんの手続きの流れを紹介します。 まずは制度の特徴をみてみましょう。

  • 時間と費用がかかる裁判とくらべて、手続きが迅速・簡単
  • 弁護士、大学教授など労働問題の専門家が担当する
  • 費用がかからない
  • 「あっせん」でとりきめた約束が簡単に破られることはない(労使が「あっせん案」に合意した場合、民法上の和解契約と同じ効力があるので、当事者は契約に従う義務が生じる)
  • 手続きが非公開なので、プライバシーを守ることができる
  • あっせんを利用したことを理由に、会社から不利益な取り扱いを受ける心配はない(法律で禁止されている)

ただし、注意する点もあります。会社側があっせんに応じなくても罰則はなく、手続きに参加しなくてもペナルティーがないということです。 会社側が手続きに参加しない場合、あっせんは不調となり終了します。会社側があっせんの手続きに参加してくれることが期待できないような場合には、あっせん以外の紛争解決手続を利用した方がよいでしょう。 たとえば、労働審判は、欠席するとペナルティ(過料の制裁)を受ける可能性があり、また、審判に参加しないと申立人(労働者側)の言い分がそのまま通る可能性があります。そのため、相手方が手続きに参加することを強く期待することができます。

あっせんの流れ

あっせんの流れ

申請〜あっせん日当日まで

都道府県労働局の総合労働相談コーナーに、申請書を提出します。申請書のひな形は厚生労働省のウェブページ(「個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)」|厚生労働省)で手に入れることができます。 あっせんを申請すると、労働局長が紛争調整委員会にあっせんを委任します。委任するかどうかを判断するために、事前に事情聴取がおこなわれる場合もあります。 その後、労働者と会社側の都合がよい日を選んであっせん日が決定します。あっせん日は申請からおおよそ1か月後に設定されることが多いです。 あっせん開始の通知を受けた会社側が、あっせんの手続きに参加する意思がないことを表明したときは、あっせんは実施されず、打ち切りになります。

あっせん日当日

あっせんのイラスト 当日は、労働者側・会社側それぞれ別の控室に通され、それぞれ個別に事情を聴取されます。顔を合わすことなく手続が進むので、「相手と顔をあわせたくない」という方も心配ありません。 双方に事情を聞いた後、あっせん員同士で協議を進めます。あっせん員は必要に応じて、さらにそれぞれの控室に出向いて、解決の方向性を探ります。 当事者双方が求めた場合、あっせん員は合議して、落とし所を示した「あっせん案」を示します。お互いがあっせん案に合意した場合、合意書を作成することによって手続きは終了します。 あっせん案が示されなくても、あっせんをきっかけにお互いが歩み寄り、自主的な解決が図られるケースもあります。

打切り、取下げ

あっせん案に合意せず双方の歩み寄りが見られない場合や、会社側があっせんに応じない場合などは、打切りによる終了となります。 また、あっせん日より前に当事者同士が自主的に解決できると判断したなどの理由で、申請者があっせんを取り下げた場合も手続きは終了します。

「労働審判」の流れと利用方法

労働審判は、労働問題について詳しい裁判官、労働審判委員、会社側の代表者、労働者などの関係者がひとつのテーブルに集まり、話合いでお互いに納得できる妥協点を探る解決手段です。 裁判よりも比較的短い期間で結論を出すことができます。以下のような特徴があります。

  • 話合いで柔軟な解決を期待できる
  • 最短1回の話合い、平均2〜3か月程度での迅速な解決を期待できる 早期に柔軟な解決を目指したい方に向いた手段であるといえるでしょう。実際、双方に弁護士をつけた場合の解決率は、8割を超えています。

労働審判には3パターンの結末がある

労働審判のフロー図 労働審判は、以下3パターンいずれかの結末にたどり着きます。

  1. 話合いによって解決(調停成立)
  2. 話合いでの解決が困難な場合は、労働審判委員会が解決案を示す(審判)
  3. 審判の結論に納得できない場合は、裁判へ

お互いに歩み寄って合意の上で結論を出すことが調停です。話合いがまとまらない場合に審判官が結論を出すのが審判です。 調停と審判は、裁判の判決と同じく法的な拘束力を持ちます。そのため、会社側に調停・審判で示された内容にしたがった対応をさせることが期待できます。 ただし、審判の内容に納得できない場合は、裁判所に異議を申し立て、裁判で争うことになります(審判はなかったことと扱われます)。

労働審判の流れ

労働審判のイメージ

第1回話合いですること

当日は裁判所に出廷し、丸テーブルで話合いをすることになります。 話合いでは、審判官が双方の主張を聞き、事実関係を明らかにしていきます。裁判のようにどちらかが一方的に尋問されるのではなく、審判官が気になった点をその場で両者に問いかけていくような形式です。 双方の主張を確認した後、一度関係者が退席し、審判官と審判員の3名のみで合議を行います。 第1回の話合いで、おおよその争点と事実関係が確認できた場合は、合議の後に審判官・審判員から調停案が提示されたり、調停による解決の見込みがあるか探られたりすることになります。 労働者側、会社側が片方ずつ別室に呼ばれ、審判官・審判員から調停案についての意向を聞かれます。双方が納得した場合は調停が成立します。 第1回で明らかにならなかった争点や事実関係があった場合や調停案について検討の時間が必要とされた場合には、第2回の話合いに続きます。

第2回話合い〜第3回話合いですること

第2回の話合いでは、第1回でまだ明らかになっていない争点や事実関係について、お互いに新たな証拠を提出するなどして、さらに話し合うことになります。 主張や証拠書類の提出は「やむを得ない事由がある場合を除き」第2回の話合いまでとされています。 そのため、第3回期日では、一般的には、それまでの審理の結果をもとに、調停成立による解決を試みることとなります。 全ての争点と事実関係が確認され、調停が可能と判断された場合は、審判官・審判員によって、最終的に示された調停案により調停が成立します。 一方または双方が調停案を受け入れなかった場合、労働審判委員会が審判の形で結論を出すことになります。

異議申立て

審判の内容に納得がいかない場合は、異議を申し立てることができます(審判から2週間以内)。手続きは、通常の裁判へ移ります。

「不当解雇」を争うために労働審判を利用したいと考えたら

争う会社の本社所在地を管轄する地方裁判所に、申立書、証拠書類、手数料分の印紙を提出します。申立書には、解雇が無効である理由と、会社側に請求する内容(賃金の支払いなど)について記載します。 労働審判の弁護士費用は、一概にはいえませんが、たとえば、経済的利益が300万円程度の場合、着手金は約15〜30万円、報酬金は約30万円が1つの目安です。 このほか、申立てなどにかかる実費として、収入印紙代(請求金額によって異なります。たとえば200万円を請求する場合、収入印紙代は7500円です)や郵便切手(管轄する裁判所によって金額は異なります)が必要です。

経済的利益とは、依頼することによって得られた(もしくは支払いを免れた)金額のことを指します。経済的利益が得られなかった場合、報酬金は発生しませんが、着手金は支払わなければなりません。これの他に、初回相談料などがかかる場合があります。

労働審判に弁護士は必要?

労働審判は迅速、適正かつ実効的に労働紛争を解決することを目的とする制度ですので、当事者は、早期に、的確な主張、立証を行うことが重要です。 そのため、事前にしっかりと準備しておかないと、望む結果は得られない可能性があります。また、当事者同士だけでは、どうしても感情的な議論になってしまう傾向があります。 事前に弁護士に相談し、話合い当日にどのような主張をするか、事前にしっかりと準備しておくことをおすすめします。

会社と話合いができない場合、労働審判は難しい

そもそも双方の対立が深刻で、歩み寄る余地が全くないようなケースは労働審判に向いていないと言えるでしょう。相談した弁護士に通常の裁判を提案されたり、裁判官に労働審判を中断されたりすることもあります。 ただし、裁判は手続きや審理が複雑で、決着まで1年以上の時間がかかることも少なくありません。弁護士費用もその分高額になるケースもあります。こうした負担に留意しておく必要があります。

解雇された事実を証明する「証拠」が必要

どの手続きを利用するとしても、「解雇された事実」を明らかにすることが出発点になります。まず「解雇された」事実を証明する証拠(解雇通知書や解雇理由証明書)を用意しましょう。 労働者は解雇された会社に対して、自身が解雇された事実を記載した書面を発行するよう求めることができます。それが「解雇理由証明書」です。解雇理由証明書は「合意退職ではなく、解雇を言い渡された」ということを示す証拠になります。 裁判では、「解雇に相当する理由が存在したかどうか」ということを証明する責任は会社側にあります。 つまり、会社側が「解雇に相当な理由があった」ということを証明できなければ、解雇する相当な理由がなかった=「不当解雇だった」と裁判所が判断してくれる可能性があるということです。 行政機関を利用する解決手続きや、労働審判といった手続きにおいても、まずは解雇理由を確認する必要があるので、解雇理由証明書が重要な証拠になることにかわりはありません。 労働者から解雇理由証明書の発行を求められた場合、会社側は原則としてこれを拒むことはできません。会社側には、解雇理由証明書を遅滞なく発行する義務があります。 もし会社側が発行しない場合は、内容証明郵便にて再度発行を求めた上で、その証拠を持って労働基準監督署に行き、「依頼したが発行を拒否された」という点を主張しましょう。 監督署からの是正勧告などにより、会社側が態度を改めることを期待できます。

解雇理由証明書以外に役立つ証拠

解雇理由証明書以外にも「不当解雇」と認めてもらうことに役立つ証拠はあります。これらの証拠の中には、会社側に提供を求めても応じてもらえないケースもあるでしょう。そうした場合でも、裁判所を介して開示を求めることが可能です。 【立証する内容と対応する証拠の一例】

立証する内容 対応する証拠
解雇を言い渡されたこと ・解雇に関する会話の録音、メールの内容
解雇が正当化されるほど成績不振ではなかったこと ・人事評価書
・業務報告書、日報
・評価に関するメール
解雇理由が正当化されるほど勤務態度が悪かったわけではないこと(遅刻、無断欠勤など) ・タイムカード
・勤務記録
・その他出勤時間、退勤時間の証明できるもの(メール、パソコンのログイン記録など)
リストラ(整理解雇)が不当解雇にあたること ・会社の業績を示す資料
・対象者の選定基準に関するメールや会話の録音
・新規採用を行っていることを示す資料
懲戒解雇であること ・就業規則(懲戒解雇に関する箇所)
・始末書
就業規則に定められた解雇理由にあたらないこと ・就業規則(解雇に関する箇所)
未払い賃金の金額 ・雇用契約書
・就業規則(賃金に関する箇所)
・給与明細

どの手続を選ぶとしても、まず弁護士に相談を

会社という組織と労働者個人では、交渉力・情報収集力などの面で圧倒的な差があります。自分で会社と交渉しようとしても、対等にことを進めることは容易ではありません。 「不当解雇」を争おうと考えた場合、どの手段を選択するとしても、弁護士に相談することをおすすめします。

不当解雇が問題となるケースでは、同時に残業代や退職金が未払いになっていることが少なくありません。あわせて相談すれば、解雇の無効と同時に、こうした割増賃金・退職金を会社側に請求する手続きをとることができます。

生活費に不安を抱えている場合

解雇の有効性を会社と争う間、生活費などに不安を感じる方のために「仮給付」という制度が用意されています。失業手当は本来、失業したことを前提に受ける制度ですが、仮給付は、解雇の有効性を争っていても受けることができます。 仮給付の仕組みについて詳しくは、この記事の下の関連記事で解説しています。

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