退職

弁護士監修記事 2019年03月14日

【弁護士Q&A】退職するとき引継ぎせず退職まで有給消化するこのとリスク

退職する際には、後任者に対する業務の引継ぎが必要になることがあります。退職日まで有給消化して過ごしたい場合、引継ぎをせずに退職することはできるのでしょうか。 また、引継ぎに時間がかかり、有給を消化しきれなかった場合、残った有給を買い取ってもらうことはできるのでしょうか。 みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と弁護士の回答を元に解説します。

目次

  1. 引継ぎせずに有給消化してもよいのか
  2. 有給休暇の買取りを請求できるのか
  3. まとめ

引継ぎせずに有給消化してもよいのか

alt 退職日まで有給消化をするにあたり、会社から引継ぎをするよう要請された場合、拒否できるのでしょうか。

退職届の提出時期及び有休消化と今後支給される給料について


相談者の疑問
退職届を提出しようと思っております。


有給休暇が残っているので、全部消化したいです。ただ、「引継ぎを行っていない」「業務を十分遂行していない」といった理由で、今後支払われる予定の給与が減額になるなどのリスクがあるのか、気になっています。


川面 武弁護士
退職時に、有給残日数全てを消化することは、旧労働省通達も認める労働者の権利ですが、一方で特段の事情がない限り、退職者も十分な引継ぎ期間を取って退職の意思表示をすべきものと考えます。

極めて特殊な事案ですが、従業員が十分な引継ぎ期間を取らずに辞めた件で会社側の退職日を超えた時季変更権の行使(事実上有給消化の一部を認めないことを意味する)を認めた高裁の裁判例も出ています。

有給残日数全てを消化して退職することを希望するのであれば、十分な引き継ぎ期間を確保すべく、退職の意思表示を前倒しにすべきと考えます。

その時期については、民法627条の趣旨に鑑み、社会人の常識としては最低2週間の引継ぎ期間を設けるべきと考えます。

退職するときに、残った有給を全て消化することは労働者の権利と考えられます。ただし、会社との無用なトラブルを避けるために、十分な引継ぎ期間を確保してから有給消化期間に入るよう配慮すべきでしょう。

有給休暇の買取りを請求できるのか

alt 退職前の引継ぎに時間がかかるような場合、退職日までに全ての有給消化できないこともあるでしょう。消化しきれなかった有給休暇を、会社に買い取ってもらうことはできるのでしょうか。

有給休暇、買取について


相談者の疑問
現在派遣社員で働いています。

有給休暇が7日あり、今月自己都合で退社するため、利用したいと思っていますが、使い切れそうにありません。

派遣会社に買取をお願いしたいのですが、法的には可能ですか?


鈴木 祥平弁護士
労働基準法115条により、有給はわずか2年で権利が消滅時効にかかってしまいます。

使わずに余らせて消滅しそうな有給がもったいないと考えた社員が、代わりに会社に対して金銭的給付(いわゆる「有給の買取り」)を求めることはできないのかという点がよく問題になります。

有給買取りに関する判例ではありませんが、昭和48年の最高裁判決は「有給休暇を『与える』とはいっても、その実際は、労働者自身が休暇をとること(すなわち、就労しないこと)によってはじめて、休暇の付与が実現されることになる」と述べています。

つまり、社員が仕事をせずに実際に心身を休めてリフレッシュする目的で使われるべきであって、「有給の買取り」が「お金は出すから、休まないで仕事してほしい」という会社側の要望で使われるなら、制度の趣旨に反してしまいます。

ですから、有給の買取りは認められないのが原則です。

ただし、有給制度の趣旨に反せず、濫用されるおそれがなければ、例外的に会社が買い取ることもできると思われます。

たとえば、すでに2年の時効で消滅した有休や、退職しようとする時点で余った有給を買い取ってもらうケースです。

とはいえ、社員が余らせた有給の買い取りに応じるかどうかは経営判断の問題であって、社員の側から有給買取りを求めた際に会社側に買取りの法的義務があるというわけではありません。

任意に会社側が買い取ってくれるというのであれば、買取りは法的には可能ですが、社員が要求した際に会社側が応じなければならない法的義務があるわけではないという点は注意が必要です。

会社が個別に応じてくれない限り、有給を買い取ってもらうことはできないようです。

まとめ

退職にあたって残った有給を消化することは労働者の権利ですが、よほどの事情がなければ、引継ぎ期間を設けてから有給消化に入ったほうが無難といえそうです。 引継ぎに必要な日数がどのくらいか、あらかじめ計算したうえで、退職を申し出るタイミングや退職日などを決めるとよいでしょう。 有給休暇の日数が残ってしまった場合でも、会社が有給休暇を買い取らなくてはならない法的義務はありません。会社に有給買取りの制度があるような場合は、有給休暇を買い取ってもらうことができるでしょう。

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