競業避止義務

弁護士監修記事 2019年03月08日

【弁護士Q&A】同業他社に転職しないという誓約書には従う必要あるのか

勤務先を退職する際に、「退職から●年間は同業他社への就職を禁止する」といった内容の誓約書の提出を求められることがあります。 このような誓約書を提出した場合、必ず従わなくてはならないのでしょうか。そもそも、誓約書の提出自体を拒否できないのでしょうか。 みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と弁護士の回答を元に解説します。

目次

  1. 誓約書が無効になることも
  2. 誓約書の提出自体を拒否できるのか
  3. まとめ

誓約書が無効になることも

alt 退職する際に、一定期間、同業他社に就職しないといった誓約書を会社に提出した場合、必ず従わなければならないのでしょうか。

次の仕事先の応募と前職の守秘義務契約


相談者の疑問
現在仕事を探している身で、とある企業様への応募を検討しております。

前職と同じ職務になるのですが、前職にて同業界もしくは同一製品・技術を用いた仕事に就く際は退職後から1年以上就かないことを書面で約束をしてしまったため、応募が可能なのかどうか悩んでおります。まだ離職をして1年経っておりません。


徳田 隆裕弁護士
労働者が会社と競合する別会社に就職したり、自ら競合する事業を経営しない義務のことを競業避止義務といいます。

労働者には、職業選択の自由が保障されていますので、競業避止義務を定めた誓約書などが、必要かつ合理的でない場合には、無効になることがあります。

具体的には、①競業行為を禁止する目的・必要性、②退職前の労働者の地位・業務、③競業が禁止される業務の範囲、期間、地域、④代償措置の有無が総合考慮されます。

まず、①会社に保護に値する正当な利益が存在し、その利益の保護が競業避止規定の目的になっていることが必要です。一般的な営業手法や人脈程度のノウハウでは正当な目的とはいえないと考えられます。

次に、②競業避止義務が課せられる労働者は、競業によって会社の正当な利益を害する可能性がある地位、業務についていた人に限られます。営業秘密に接する地位についていたかなどが検討されます。

③競業が禁止される業務の範囲ですが、会社の保有している特有の技術や営業上の情報を
用いることによって実施される業務に限定され、労働者が仕事中に得た、ごく一般的な仕事に関する知識・経験・技能を用いることによって実施される業務は、競業避止義務の対象になりません。

競業が禁止される期間ですが、期間が短いほど、競業禁止規定が有効になりやすいです。最近では、1年以内の期間については肯定的に捉え、2年の期間について否定的に捉えている裁判例があります。

競業が禁止される地域については、一定の地域内における同業他社への競業に限定されることになり、業界全体への転職を禁止することは無効となります。

競合他社への転職を禁止する誓約書が、必ずしも有効になるとは限りません。 労働者には職業選択の自由があります。誓約書の内容が、業務内容、職種、禁止の範囲からして、職業選択の自由を制限しすぎている場合は、無効になることがあります。 誓約書が無効な場合は、転職先の制限はなくなり、同業他社にも自由に転職することができます。

誓約書の提出自体を拒否できるのか

alt そもそも、誓約書をすることを拒否できないのでしょうか。

秘密保持及び競業避止義務に関する誓約書を拒否したい。


相談者の疑問
雇われ社長として2年勤務していましたが今回退職することになりました。社長オーナーの別会社の社員として給料をもらっていました。

退職するにあたり、オーナーから「秘密保持及び競業避止義務に関する誓約書」にサインをするように言われました。

仕事内容は秘密保持を必要とすることはなく、また前職も同様の仕事をしていたので、サインをしないつもりですが、それによって問題が起きることはありますか?今後はやはり同様の仕事をするつもりで、取引先も重なります。


寺尾 幸治弁護士
これは、強制できるものではなく、任意のものですから、署名する必要はありません。

署名しないからといって、会社は退職金や給与について不利益扱いすることもできません。ですので、拒否してもかまいません。

ただ、秘密保持に関しては、営業秘密(秘密として管理されている生産方法、販売方法、その他事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの)を、再就職先などに、むやみに開示すると、不正競争防止法違反になる可能性があるので、注意した方がいいでしょう。

誓約書の提出は任意なので、提出したくない場合は、その意思をはっきり会社に伝えましょう。 ただし、誓約書を提出しなかったとしても、仕事で知った様々な知識や情報で、一般的に知られていない営業秘密は、むやみに情報をもらすと、法令違反になる可能性もあるようなので注意しましょう。

まとめ

「退職後に同業他社に転職しない」という誓約書を提出しても、内容によっては、誓約書自体が無効になる可能性があります。 無効の場合、転職先は制限されません。同業他社にも転職することができます。 そもそも、会社が強制的に誓約書を提出させることはできません。提出したくない場合は、はっきり会社に伝えましょう。

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